インタビュー 衣川和秀 日本郵便社長

2023.04.29

 日本郵便の衣川和秀社長は「郵便局窓口は金融業務などで培った丁寧な接客力、さまざまな理由で来局されるお客さまへの対応力を持つ。競合他社には見られない当社最大の強みだ」と話す。金融営業について「お声掛けやご連絡などの活動を活発化し、ニーズを丁寧に把握しながら〝お客さま本位〟の金融商品を提案していきたい」と強調。また、「局窓口の強みを成長分野である荷物関係の情報収集を中心に、営業活動に力を入れたい」と語る。

局窓口の接客力こそ最大の強み

 ――ゆうパック増の営業戦略の一つとして郵便局窓口、エリマネ局の力をどう生かされたいですか。佐川急便との冷凍配送の進展も教えてください。
 衣川社長 郵便局窓口は金融業務などで培った丁寧な接客力、さまざまな理由で来局されるお客さまへの対応力などを持っている。その競合他社にはない当社最大の強みを生かし、成長分野である荷物関係の情報収集中心に営業活動に力を入れたい。
 そのためには単マネ局とエリマネ局が一体となって運営できる体制を整えることが重要だ。各種会議を活用し、郵便局間で積極的な情報連携を行うとともに、本社、支社から成功・好取り組み事例などの有益な情報を各局に伝達し、横展開して「単マネとエリマネ一体の荷物営業活性化」に取り組みたい。
 佐川急便との協業については、クール便での冷凍配送を2021(令和3)年度のカタログ(母の日・3月上旬)から開始した。その他、幹線共同輸送では、東京-福島間、東京-浜松間で、さらには、フェリーを利用して東京-九州間で実施した。
 今年3月15日からは宮城県の遠刈田温泉地域と山形県西村山郡西川町の一部地域で、佐川急便が全国で集荷した荷物を日本郵便が配達する「共同配送トライアル」を開始した。将来的に持続可能な宅配サービスを目指すべく、人口減少地域での安定した配送網確保に向けて、両社の限られた人的資源や施設の有効活用に力を入れる。

 ――ゆうパケット増への反転攻勢も頑張っていらっしゃいますが、今後のCtoCビジネスをどうされますか。楽天との共創は。
 衣川社長 ゆうパック、ゆうパケットなどの荷物が郵便・物流事業の利益の大半を占めているものの、現在の日本郵便の取扱量は競合他社に比べると伸び率が鈍化し、厳しい状況にある。これを打開するため、今年度は取扱量増加を目指した施策を重点的に実施する。
 提携企業や大口のお客さま、子会社等との連携を強化し、商流から物流に至るまで、きめ細かく分析した「提案型営業の推進」、子会社やロジスティクス部門と協力して「お客さまの物流全体サポート」など、ニーズを的確に捉えた営業活動を実践する。クリックポストといった「ポスト投函商品のさらなる利便性向上」や「他社リソースを活用した受取拠点数の拡大」で競争力を高めていきたい。
 楽天グループとは「共同の物流拠点の構築」「共同の配送システム」「受取サービスの構築」「RFC(楽天フルフィルメントセンター)の利用拡大」「ゆうパックなどの利用拡大」に向けて取り組みを進めている。
 その実現のために21年7月に設立した合弁会社のJP楽天ロジスティクスの荷物の一部を22年4月から配達局に直接持ち込むオペレーションを開始した。通常は倉庫から出る荷物は複数の郵便局を経由し、配達局に持ち込むが、工程カットによるオペレーション負荷軽減や商品発注から配達までの時間を短縮できる。
 受注データの分析、倉庫での柔軟な区分、配達局での荷物の受け入れなどはトータルの取り組みが必要になるが、日本郵便と楽天の合弁会社のJP楽天ロジスティクスだからこそ実現できる。
 22年4月に関東の一部倉庫で開始した後、関西圏にも広げて対象荷物を増加し、23年度も取り組みを拡大する。楽天グループからの荷物は前年度より増え、今後もさらなる増加を見込んでいる。

お声掛け活発化、荷物営業も

 ――金融の営業体制は今年度、少し変えていく方向性にありますか。局窓口の力をもっと生かすお考えは。
 衣川社長 22年度に始まった「新しいかんぽ営業体制」において日本郵便は引き続き、地域の身近な存在である郵便局の強みを生かし、局窓口でお客さまニーズを丁寧に把握しながら〝お客さま本位〟の金融商品を提案する。
 今年度の重点的な取り組みは①お客さま本位の営業活動の活発化②お客さま接点強化・拡充のための営業戦略③効果的・効率的な営業活動のための環境整備――の3点だ。
 まずは、お声掛けやご連絡等の活動を活発化させ、〝お客さま本位のコンサルティング営業〟を実践し、かんぽやがん保障の提案、つみたてNISA口座の開設等を通じて、商品・サービスの利用拡大を図る。また、金融商品未利用のお客さまや青壮年層のお客さまとの接点を強化・拡充するために「法人・職域営業」を積極的に展開する他、WebやSNSを活用した新たなアプローチに取り組む。
 22年度は、専門オペレーターがオンラインで、つみたてNISAや損害保険商品の商品説明や申込事務などを実施する「金融コンタクトセンター」の運用を開始した。今後も、デジタル技術の活用を軸に、郵便局の負担軽減を図りつつ、オンラインでのさまざまな商品・サービスの受け付けとトスアップ等を可能とする環境を整備し、顧客ニーズの多様化といった環境変化に対応する。
 営業活動を支える基盤整備もお客さまの利便性の向上の重要な要因と位置付け、現在の業務フローの見直しや〝タブレット〟による事務処理の拡大で「窓口業務のデジタル化」に取り組み、業務負荷軽減を図る。郵便局の課題や意見を踏まえながら実効性のある改善、改革にしていきたい。

 ――マイナンバーカードが法改正によって郵便局で交付もできるようになることへの期待と受託事務拡大の思いをお聞かせください。
 衣川社長 現在も一部郵便局ではマイナンバーカード申請支援事務や電子証明書関連事務を受託している。今年1月~3月末まで、総務省から「携帯電話ショップがない市町村におけるマイナンバーカード申請サポート事業」の委託を受けた取り扱いも行った。法改正によって郵便局でカード交付に必要な本人確認事務が実施できるようになれば、さらに普及に貢献できる。
 急激な高齢化や過疎化が進み、自治体支所なども縮小傾向にある中、事務受託は地域の方々の利便性向上に資するとともに、地域における郵便局の存在価値を高められる。公的証明書の交付や国民年金関係等の申請受け付け、プレミアム付商品券販売などの自治体事務は22年度末で、約400自治体から約6000局が受託している。

 ――農協や漁協、公共交通機関などと連携する将来展望は。
 衣川社長 日本郵便は中期経営計画でも郵便局を「お客さまと地域を支える共創プラットフォーム」と位置付け、自治体事務受託、地域金融機関との連携強化、駅窓口業務の受託など、地域に信頼される郵便局ならではのサービス展開を掲げている。農協や漁協との連携案件はまだないが、地銀とは3月末時点で全国7銀行のATM設置や各種銀行手続の受け付けと取り次ぎ事務を30局で実施中だ。地域金融との連携は今後も前向きに検討したい。
 鉄道事業者との連携はJRと連携する千葉県の江見駅局、長野県のしなの鉄道との連携で大屋駅局(仮称、23年度下期以降オープン)の2件があるが、事業者の方々と日本郵便双方にメリットがあって地域のお客さまに利便性向上を感じていただけるよう、積極的に推進していきたい。