郵政政策部会  地域貢献はアイデンティティー

2023.12.03

 「デジタル社会における郵便局の地域貢献の在り方」を議論する総務省情報通信審議会郵政政策部会(米山高生部会長)は10月23日、10月から11月にかけて全国の自治体に「郵便局への委託業務が広がらない要因」を探る調査を実施していることを明らかにした。米山部会長は「日本郵便は民間企業のため、できることとできないことがあるが、もともと地域貢献のニーズに応えてきたことは、ある意味でのコーポレートアイデンティティー(企業文化を構築し特性や独自性を統一されたイメージ)。ぜひ前向きにさまざまな工夫をしつつ、受け止めていただきたい」と呼び掛けた。

なぜ、広がらない? 自治体事務の委託業務

 10月20日~11月6日まで行われた自治体調査は、郵便局への公的証明書発行等の事務委託について、①過去に検討した自治体に「断念した理由」②過去に検討していない自治体に「検討しない理由」③今後委託を検討している自治体に「検討の理由」④郵便局への公的証明書発行等の事務等の実績⑤過去に実績のある自治体に「委託を終了した理由」――の5点。
 調査結果を踏まえ、郵便局の地域貢献を進めるための施策を検討する。

 10月23日の郵政政策部会では、総務省郵政行政部企画課の三島由佳課長が昨年10月~12月にかけて実施した「郵便局の地域貢献の自治体ニーズ」アンケートに回答した1248自治体のうち、「地域の安全・防犯・見守り」は449自治体、「防災・災害対応」も330自治体が「ニーズがある」と答えたほか、「高齢者福祉」は自治体の規模に限らず期待が高かったことから、「郵便局の地域貢献に対するニーズは根強く存在している」と報告した。

 また、2023(令和5)年度の「郵便局等の公的地域基盤連携推進事業」は「道路等インフラ管理・メンテナンス」「医療・介護・健康」の2分野のほか、「地域の安全・防犯・見守り」として「ICT端末を活用した郵便局みまもりサービスの防災活用」、「防災・災害対応」として「災害時における郵便局が有する被災者に関する情報提供」の計四つの実証を行うと発表した。
 一方、郵便課の折笠史典課長も「郵便ポストの活用」に対する自治体アンケート結果について、「『地域課題の解決や地域活性化に郵便ポスト活用を推進した』と回答した85自治体のうち、地域に根差したデザインのポスト設置が最も多く約57%、QRコードを活用した各種情報提供を行っている団体は約27%。今後取り組みたい活用方策として、災害時の緊急電源、チャージスポットが共に約13%」と説明した。

 郵便ポストに関わる郵便・物流分野について、日本郵便の五味儀裕執行役員は「生産年齢人口が大きく減少し、今後さらに減少することを見込み、集配ネットワークを維持できるよう宅配便市場で付加価値を提供できるモデルに日本郵便の業務を転換しなければならない。〝選ばれる企業〟になれる付加価値を生み出したい。郵便局アプリは将来的には拡張し、ワンストップで、アプリで分かるように進化させたい」などと強調。
 また、「位置情報等を取得するアプリを活用したDcat(配達コミュニケーション支援ツール)」を主に二輪の集配業務に23年4月時点で約7万5000台導入しているが、機器の2台持ちを解消するために、来年2月から全面的にスマホに一元化する。Dcatが取得できるデータを基にした新たな価値を創出したい」とも語った。

 甲田恵子委員(㈱AsMama社長)は「郵便局の社会課題解決と経済性の両立は非常に重要。難しい観点だが、自治体の方々の約75%が費用負担は難しいと言っている以上、お金を出しても構わないと思っていただけるまで〝周知〟や〝魅力発信〟を行う必要がある。郵便局だけ費用負担をしていくことは、事業としてサステナブルではない」と指摘した。