続・続 郵便局ネットワークの将来像㉙
より地域を彷彿させる交通機関のバスは今、地方中心に〝個〟に寄り添う形を創出している。郵便局前にバス停があると理想的だが、今の制度は郊外でなければ難しいらしい。しかし、ICカードとマイナンバーカードをひも付け、郵便局でチャージもできれば、公共交通と地域住民の方々を結ぶ郵便局のミニ〝ホッとステーション〟が各地に生まれそうだ。(写真は網走バスの「どこバス」)
地域交通+郵便局 マイナカード×ICカードで
ワクワク〝ホッとステーション〟に
北海道支社(淨土英二支社長)と網走バスが連携し、網走市内の8局で定期券や回数券の販売を開始したのは9月1日。郵便局が民間バス会社と連携するのは全国でも初めて。
網走バスの明神健太専務取締役は「人口減少に伴って路線バスは縮小・減便せざるを得なくなった。予約制バスであれば通常は10分ほどで迎えに行ける。支社さまに提案する際には市にも協力いただきながら民間同士で契約を結んだ。郵便局は地域に根差す。アプリ含めた乗車券を自宅近くで買えるようになったのは、市民の方々にとって非常にありがたい」とうれしそうだ。
同社のバス停は市内に約300カ所。約200カ所は既存大型路線バスのバス停をそのまま使い、約100カ所に予約制ワゴン車「どこバス」のバス停を小さい路地にも設置し、市民に寄り添う交通網を創り上げた。7~8㌔離れた場所でも同一エリア内の料金は一律500円(観光エリアは700円)。
公益社団法人日本バス協会(清水一郎会長)も「人口減少や少子高齢化等により、地域のバスは大変厳しい状況にある。網走バスと郵便局の取り組みによって、バスを利用しやすい環境になることで、今後も地域路線が維持されることを期待したい」と語る。
交通系ICカードとマイナカードの紐づけを来客者に説明する社員とみまもる山本龍前橋市長
群馬県前橋市の細谷精一未来創造部長(写真下)は「市は人に優しい都市環境を目指すため、公共交通を充実させようとさまざま検討している。市内にはバス事業者6社、タクシー事業者は9社あり、利用者に分かりづらい。市が中心となって情報を一括検索と案内サービスができる仕組みを、と動き始めた頃にMaaSの概念ができたため、国土交通省の指定を受けてMaeMaaS(まえまーす=前橋版次世代型移動サービス)を構築してきた」と話す。
細谷部長は「地域に身近な郵便局を公共交通の利用拠点にしていけるとよいが、バス路線沿いに局が立地しているとは限らない。デマンドバス(予約制バス)は主に郊外部のエリア限定サービスのため、市内の郵便局まではアクセスしづらい。その辺りに郵便局とバス路線を結び付ける難しさもある。では、公共交通網と郵便局は連携できないかといえば、そうではない。MaeMaaSの場合、GunMaaS(ぐんまーす=群馬県版次世代型移動サービス)へと県レベルに発展したが、ポイントは交通系ICカードとマイナンバーカードをひも付けた認証サービスにある」と指摘する。
「お年寄りがGunMaaSの登録時のサポートを身近な郵便局でやってもらえ、ICカードの残高がなくなった時に郵便局で〝チャージ〟ができることを提案したい。マイナカードとICカードをスマホ上でひも付けておくと、路線バスもデマンドバスも乗車時にICカード1枚で各種割引サービスが受けられる。『公共交通利用促進を案内』する〝身近な拠点〟を郵便局にお願いできたらよい」と強調する。
沖縄支社(金城努支社長)と沖縄ICカード㈱(仲吉良次社長)が8月7日から開南局(玉城昌子局長、写真上)に沖縄限定のICカード「OKICA」チャージ機を設置し、取り扱いを開始した。民間のカード会社と郵便局が直接連携し、設置した局は全国初。銀行への設置も数店舗らしい。
沖縄では県内でお金が循環し、県内経済が潤うよう県独自の交通系ICカードとしての「OKICA」が日常的に流通している。サービス開始のセレモニーで金城支社長は「郵便局のネットワークを活用し、OKICAの利用促進とお客さまの利便性向上に努めたい」と意欲を示した。
バス通りの中心的な位置にある開南局(写真上)。スタートから約2カ月が経過し、今後もさらなる利用者増を見込んでいる。
玉城局長は「これまで郵便局のご利用が無かったお客さまが来局するためのアイデアが膨らむ。せっかく置いていただいているので新しいことにチャレンジしたい。あるお客さまは『バスの中だと他人にせかされているような感じがして落ち着いてチャージできなかったので、これからは気兼ねなくチャージできるのでうれしい』『免許を返納しているお友だちの誕生日にプレゼントすれば、バスに乗って遊びに来てくれるかな?』など、新しいことが始まって、お客さまもさまざまワクワクされているのを聞くだけで私も楽しい。お声をヒントに何かできれば、と思う」と模索中だ。