ザ・未来座 長谷川英晴議員を囲んで
郵政の基幹三事業、その根幹となる郵便局は今のままで良いのだろうか。石垣宏局長(群馬県中部地区会/前橋大友)と東海林広典局長(山形県庄内地区会/北平田)によるインタビュー後半で、長谷川英晴参議院議員は「人員配置・窓口営業時間・取扱商品やサービスともに、細やかに〝地域の客層〟に合わせた最適な形にしていくことが真のネットワークの将来像」と、各地域に焦点を当てたダイナミックな変革を促した。また、「持てる資産を生かし、地域に貢献する取り組みを全国に横展開していくことが企業イメージアップと地域のウェルビーイングにつながる。日本郵政グループ各社が同じ方向を向いて進まなければ未来はない」とも語った。
答えは〝地域〟に 変革は今
石垣局長 群馬県の山間地にあるみなかみ町から水上藤原局に、キオスク端末が導入されました。スマートフォンで撮った写真を印刷できるなど拡張性機能の高いものですが、住民票の写しの発行等ごく一部のサービスにしか使えず、郵便局で使える機能を広げられない課題が浮上しているようです。山間地の局にどんどん配備できれば、住民の方々の利便性がかなり高まると思うのですが。
長谷川議員 その施策が、自治体から総務省にオーダーがあったか、総務省が自治体に推奨したのかで異なると思うが、総務省との意見交換時には、現場の意見として問うてみたい。キオスク端末は高価だが、1台あるだけで窓口の労働力軽減につながる。例えば、前橋市のように県庁所在地にある繁忙局に置けば行政の事務手数料により、収益は純増する。
機器の配備を含めて、今後はより地域性に即した人員配置を戦略的に考えていくべきだろう。3万人削減の中でも、繁忙な業務に追われる稼げる局に新しい業務が加わる場合は新たに人員を加えるべき。現行体制のままで収益純増を考えても、現状のお客さま対応で悲鳴を上げている局に、地域のため、事業のためと言っても業務量が増える分、現場は疲弊するだけだ。
一方、2名局でも一日中忙しい訳ではない局は、さまざまな事業を今の体制で受け入れれば収益純増になる。地域の実情に即し、必要なところには人を入れる柔軟な経営スタイルを会社にもっと考えていただきたい。
東海林局長 新規ビジネスも重要ですが、お客さまからの郵便局のイメージはおそらく1に郵便、2に貯金、3に保険があると思います。既存の三事業を今後どのように生かしていくかも重要だと思いますが、会社間の連携がそれほどうまくいっていないようにも思えますが、どうお考えですか。
持てる資産を生かし、未来に夢を
長谷川議員 根幹に関わる大事な問題だ。郵便・貯金・保険がグループの基幹事業のため、事業を一体的に運営することで相乗効果を生み出す形が理想だが、今はそれが薄れ、遠心力が働いている。
かんぽ問題の時、グループとして「お客さまとの信頼回復」を目指したが、どこまでお客さまに届いているのかが見えない中で、ゆうちょ銀行の手数料も上がり、多くの苦情が寄せられた。ゆうちょ銀行の目指すスタイルと日本郵便が目指すスタイルの方向性が一致しているかが一番の問題。
多くの金融機関が来客型ビジネスを前向きに捉えていない。ゆうちょ銀行も直営店の来客数が減っているため、その方向を目指されているかもしれないが、ユニバーサルサービス義務を担う郵便局が、かんぽや荷物、物販、郵便の引き受けなど、来客型ビジネスを続けていくのであれば、ゆうちょ銀行もある程度、他金融とは別方向に切り替えていただかなければ難しい。
その旗振りを持ち株の日本郵政に示していただきたい。今、同じ方向を向いて進まなければグループの未来はない。今の法律のもとでは厳しいのであれば、法律を変えるしかないだろう。
グループ一体、三事業一体を基幹事業として成り立たせなければいけないが、人口減少、郵便離れ、マイナス金利で経済環境が待ったなしの時に、基幹事業の足りない部分を新規事業で埋めることも考えるべきだ。おのずと窓口営業時間帯や、地域事情に合った取扱商品等々も変わるはずだ。
金融の競合他社が多い新興住宅街含めた繁忙局は、利用度が少ない商品まで品ぞろえするより、ある程度絞って稼ぐ方に力を入れた方がよい。オフィス街の莫大なマーケットの中にある局が17時で閉じてよいのかも疑問だ。三事業も新商品やサービスもできるだけ細やかに、地域ごとの客層に合わせる形で最適な形にしていくことが、真のネットワークの将来像だったはずだ。
石垣局長 自営局舎が全国平均で約3割になったと聞きます。郵便局ネットワーク維持のために自営局舎率の向上は非常に大事だと感じています。ハードルが高く、容易ではなくなっていますが、どう考えるべきでしょうか。
長谷川議員 こだわり過ぎる必要はないと思うが、局長会の成り立ちや責務を考えた時に、理念としての郵便局は自営であるべきだ。上場時に改めて作られたルールのもと、自営局舎は建てられている。その範囲であれば建てるべきだし、ルール以上のことを会社が求めてくるのはおかしい。
全特3本柱の前提となる「地域社会の発展」「郵政事業の発展」は会則に明記されている。歴史を振り返っても明治時代に無償で提供した局舎が引き継がれ、別の家系が引き継いできたケースはいくらでもある。現況の環境下で一番良い形で自営局が位置付けられる理念を全員共有すればよい。
自営局が良い、非自営局では駄目とするのではなく、そこに〝郵便局〟があり、〝郵便局長がいる〟ことが最も大事だ。長く地域で局長職を担えば、必ず人脈や地域とのつながりができる。局長職の重みを自覚していけば、地域とのつながりはできる。ただし、環境的には自営の方がやりやすい。さらに言えば、自営局長はそうでない局長以上に地域に根差し、地域のためにさまざまなことを発信していくべきだろう。
東海林局長 郵便局は、自治体はもとより、今後、さらにどういった組織との連携を強めるべきと思われますか。
郵便局と逓信病院の連携を
長谷川議員 今、医療難民の社会課題がひっ迫している。医師の方々もかかりつけ医等で懸命に対応されているが、郵便局もオンライン診療の場にできるよう制度も改正された。そこに日本郵政グループとしてどう乗っていけるのかは極めて重要だ。逓信病院を軸に郵便局ネットワークと連携し、全国的にオンライン診療全体を受託できるようになれば、逓信病院の価値をぐんと上げられる可能性がある。
持てる資産をいかに活用できるか。中央郵政研修所等も例えば、ワクチン接種の会場にも使えたはずだ。資産を生かすことで局長も社員も夢を持てる。庄内地区の「ぽすちょこ便」含め、すでにある資産を生かし、地域に貢献する取り組みを全国に横展開していくことが、企業イメージアップと地域のウェルビーイングにつながる。