グループ共通の〝郵便局アプリ〟開始

2023.10.22

 日本郵政の増田寬也社長は9月29日の記者会見で、日本郵政グループ各社共通のIDをプラットフォームとする「郵便局アプリ」を10月中旬に郵便・物流分野から開始すると発表した。また、丸16年を迎えた郵政民営化の状況を「我々は上乗せ規制を外していただきたい。今の法律では株式を100%売却した結果として上乗せ規制が外れる。立法に携わる方々がどう考えるかが一番大事」などと語った。

のしかかる上乗せ規制の法的な条件

 地域医療との関わりについて「地方の医療を支えるためにオンライン診療が広がると思うが、東京逓信病院の機能を実はさまざま検討している。広範囲な地域のお役に立つ機能も入れようと思う」と明かした。

資本をシフト、物流や不動産に
ゆうパケットポストminiにメルカリ便も

 増田社長は冒頭、「〝郵便局アプリ〟のサービス提供を10月中旬から開始する。いつでも、どこでも、郵便局サービスを利用できるよう開発。『送る、受け取る』郵便・物流サービスから開始し、順次機能を拡充する。送り状作成、郵便局・ATM・郵便ポストの場所や窓口営業時間、ゆうパックスマホ割アプリの各種機能等、さまざま検索機能を初めて搭載する。アプリで窓口混雑状況、順番待ち整理券発行を全国34局からスタート。グループ各社の主要サービスを一つのアプリで利用できるよう、ゆうちょ銀行、かんぽ生命のアプリとの連携も検討する」と述べた。
 また「小型商品を簡単・便利に郵便ポストから投函・発送でき、好評な『ゆうパケットポストmini』に『ゆうゆうメルカリ便』も加わった。個人間EC市場が盛り上がることを期待したい」と語った。(以下、記者団の質問)

 ――クロネコゆうパケットへの切り替えのスケジュールは。楽天グループの保有株を引き戻される受け止めも。
 増田社長 10月から引き受けを開始する準備は順調。クロネコゆうパケット引き受けは5段階。第1段階が10月から、第2段階は来年4月、第3、第4段階を経て100%日本郵便に移るのは2025(令和7)年2月。10月からは主に東日本エリア16道県で全体の13%を移す。第2段階時点では、クロネコゆうメールの方を一度に全量を引き受ける。
 第1四半期に計上した評価損は、楽天グループの株価回復により、減損処理を行わず、第2四半期決算で850億円を戻し入れることとした。楽天グループはEC関係が非常に好調で推移。業務提携で期待するのは「荷物」とグループ統一の「アプリ」だ。4社の1(ワン)IDによるさまざまなサービス開発で相当協力いただいた。早期に成果を得るために頻繁にコミュニケーションを取っている。

 ――人件費や燃料価格高騰の中でのユニバーサルサービス維持と郵便事業の収益増は。総務省でポスト活用も検討されていますが。
 増田社長 新しい取り組みの成功が必要。不動産を収益の柱にする投資をしなければいけない。グループ不動産資産を統括し、グループ外の土地も入れて不動産収益を強化したい。今後、特に大事なことは日本郵便の競争力と収益力固めだ。資源のシフトを減っていく郵便物から物流に替えたい。ポストの活用、二輪で運べる小さな商品開発等で物流の収益を上げる。
 協業しているヤマト運輸や佐川急便とも、ゆうパック等では競合する。日本郵便に流してもらう楽天の荷物は提携前は7.5%だったが、今12%。もっと増やしたい。ゆうパック、ゆうパケットを収益の柱にしたい。株式売却はゆうちょ銀行が今、60%ほどの保有。円安の面でゆうちょ、かんぽも、収益を上げるようにしていきたい。
 公共広域的分野、特にマイナンバーカードの郵便局取り扱いは、法改正され特別交付税が措置される。収益は大きくはならないが、地域貢献として手掛けたい。公共ニーズに応えると同時に民間としての収益を上げるために、物流シフトと金融2社の収益を上げていきたい。
 郵便ポストは効率化も要するが、減らすことで郵便局の持ち味、良さを殺してしまうこともある。他事業者の方は持たないツール。再配達にもつながるポストイン商品を強化したい

 ――ぽすちょこ便の今後の展開について。オンライン診療と逓信病院の連携構想は。民営化は株式全売却が着地点とお考えですか(郵湧新報)。
 増田社長 ぽすちょこ便は他地域にも広げられるとよい。(日本郵便から補足:5年後に全国約160地域での展開を目指す)。地方の医療を支えるためにオンライン診療が広がると思うが、東京だけとなった逓信病院の機能を実はさまざま検討している。広範囲な地域のお役に立つ機能も入れようと思う。機能の高度な基幹病院が地域の診療所との連携は必要だ。
 民営化の着地点は、立法に携わる方々がどう考えるかが一番大事。我々は上乗せ規制を外していただきたい。どういうことを成し遂げれば上乗せ規制が外れるかは政府の考え方。競争環境が出来上がって、互いが切磋琢磨し、利用者の方々にサービスを提供すること。今の法律では株式売却を100%の結果として上乗せ規制が外れる。まだまだ、道半ば。