インタビュー 全国郵便局長会 西條英夫副会長

2022.10.22

 全国郵便局長会(末武晃会長)の西條英夫副会長(信越地方会会長/新潟県:稲田)は「〝縁の下の力持ち〟の精神を体現し、郵政創業200年への道を開く局長会になるために、本音で語り合って本物の人材を生み出していかなければならない」と強調する。「2万4000の郵便局は一人一人素晴らしい個性を持つ人材の宝庫だ。『もっとこうした方がよい』などと率直な声を上げていただきたい。〝眠れる獅子〟を揺り起こし、良き変革へと、熱い思いを皆で共有していきたい」と語る。

目覚めよ!眠れる獅子

 ――民営化から15年。改正郵政民営化法が施行され10年が経過しました。
 西條副会長 2007(平成19)年10月の民営化当初は、「過疎地の局は統廃合され、郵便局ネットワークを守れなくなるかもしれない」と漠然とした不安が強かった。
 2012(平成24)年10月に改正郵政民営化法が施行され、郵便局会社と郵便事業会社の統合が実現したが、日本郵政の下に日本郵便、ゆうちょ銀行、かんぽ生命の3社が並列する形は、日本郵便が何かを提案しても通りにくく、郵便局としてベストな形とは言えない状況が続いている。グループの一体経営という点では、日本郵政と日本郵便が一緒になり、その下にゆうちょ銀行、かんぽ生命が連なる形が理想的だ。
 地域のお客さまは、ゆうちょ銀行の商品だからとか、かんぽ生命の保険だから利用している訳ではなく、通い慣れた郵便局の商品だから選んでくれているということを忘れてはいけない。郵政グループを一つの企業体として考えなければ、間違った方向に進んでしまうと思う。
 日本郵政グループは、デジタルの力を最大限に活用し、お客さまにより良い体験をしていただくための取り組みである「みらいの郵便局」を進めようとしているが、時代を先導する日本郵政グループの姿を示すだけでなく、何をどう変えれば改善につながるのかという根幹の部分を皆で考えなければいけない時が来ていると思う。
 ユニバーサルサービスコストの問題も解決すべき課題として取り上げられているが、NTTのように利用料金に組み込むとか、国が一定の形で負担する形になれば、社員も安心して仕事に励むことができる。

 ――人口減少やデジタル化が進む中、どうすれば郵便局が生き残れると思われますか。
 西條副会長 難しい経営状況が続く中、今、会社は人件費のコスト削減に躍起になっているように見える。郵便事業に至っては、人員を減らし続けると肝心のユニバーサルサービスも維持できなくなる。
郵政事業を存続させるためには、人員削減で利益を生み出すのではなく、郵政グループが有する人材を生かす戦略を取っていただきたい。少子化に加え高齢化が世界で最も早く進む日本にとって、全国に配置された郵便局は政府が取り組む「デジタル田園都市国家構想」の要の役割を果たせる存在になれるとも聞く。
 地方創生といっても大きなことをやる必要はなく、各局長がそれぞれできうることに取り組めば、地域にとって何が必要かおのずと見えてくるはずだ。地域の課題に向かって努力する局長の姿は、地域にお住まいの皆さまにとって頼もしい存在だと思う。

本音で語り、本物の人材生み出そう

 新潟県の南部「越後妻有」と呼ばれる地域では、4年に1度「大地の芸術祭」(11月13日まで開催中)と題する壮大なイベントが開かれる。全国のアーティストがこの地域の風景を題材にオブジェや写真など200点に及ぶさまざまな芸術作品を展示する展覧会だが、地元の人間が気付かなかった風景がアーティストの眼を通し作品の一部として息を吹き込まれていて、これまで誰も来なかった土地が何万人もの観光客が訪れる人気スポットに変わった。
 地元の局長もフレーム切手を作ったりして、このイベントを盛り上げている。同じような地域活性化の取り組みは、全国でできるはず。地域に根差している局長であれば、足元に埋まっている宝を見つけ、情報発信に長けた外部の方につなげることは適役だと思う。
 今、本社では支社への権限委譲を進めようとしているが、地域の「お宝発掘ビジネス」も支社権限で進められるようにしていただきたい。支社が局長や社員を集めて「お宝発掘ビジネス」のプロジェクトを立ち上げ、試行できるようになれば伸びていくと思う。

 ――郵便局ならではの強みをどう見ていますか。

 西條副会長 ずばり、ネットワークだ。他の金融機関や企業と比べてみても、郵便局ほどきめ細やかに配置されているネットワークはない。年を取って運転ができなくなると公共交通機関がぜい弱な地域は住みにくくなる。
 そうしたときに身近にある郵便局が自治体等に代わり、警察署や病院とも連携することで、困ったことが起きたとき、郵便局に連絡すれば全て応急対応できれば、人々は安心して暮らせる。そのために今はできないことであっても、一つ一つできるようにしていくことが課題解決の道だ。
 郵便局で生鮮食料品等を扱うことは、関係法令等の縛りがありなかなか難しいようだが、既にファミリーマート等と連携し、局の空きスペースを有効活用し始まっている。山間地等でも郵便局で食品や日用品が買えるようになれば、地域の方たちから「郵便局は便利になったね」と喜ばれるだろう。
 最近は何でも電話で問い合わせるように誘導されるが、電話しても「ただ今の時間は混み合っております」などのメッセージが流れ、結局なかなかつながらず「もういいや」となってしまう。果たして、それがサービスといえるのか甚だ疑問だ。
 郵便局の無人化は反対だ。スマホやSNSの時代だからこそ、最終的に求められるのは〝人〟だと思う。局長が地域への貢献を続ける中で局周を活性化させ、埋まっている宝を見つけ、外部の方とも連携した上でビジネス化していかなければ未来など開けない。

 ――全特が目指すべき組織の姿とは。
 西條副会長 末武会長が目指す「風通しの良い組織」の精神と取り組みを全面的に支持している。全特役員として全国各地の地区会に伺い、直接対話できる機会に恵まれたことに感謝している。
 会員の皆さんには、「もっとこうした方がよい」などと率直な声を上げていただきたい。「眠れる獅子」を揺り起こし、良き変革へと、熱い思いを皆で共有していきたい。2万4000の郵便局は一人一人素晴らしい個性を持つ人材の宝庫だ。特に中堅・若手の皆さんに期待している。
 今は健全な金融営業に力を入れなければいけない時。経営陣の方々には「心配するな、とにかくやりたいようにやってみなさい。責任は本社がとるから」との姿勢で現場に臨んでいただきたい。オブラートに包んだ形式的な対話や、膨大な資料で示すだけでは営業の勢いは取り戻せないと思う。
 「やはり、最後の砦は郵便局だね」と地域にお住まいの方々に心の底から頼りにされ、〝縁の下の力持ち〟の精神を体現し、郵政創業200年への道を開く局長会になるために、本音で語り合って本物の人材を生み出していかなければならない。