改正郵政民営化法,見直し法案骨格定まる

2023.08.27

 改正郵政民営化法の見直し法案の骨格が定まってきた。少子化による急速な人口減少と高齢者人口がピークに達することで、日本がさまざまな課題に直面する「2040年問題」に向けて、郵便局の公共的な特質に鑑み、郵便局ネットワークを社会全体で生かす仕組みづくりを柱とする。国が自治行政を支え、自治体が郵便局に仕事を委託しやすくする財政的な支援措置や、ユニバーサルサービスを支える基金等も盛り込む。選挙の有無や時期も影響するが、通常国会で議員立法としての成立を目指す。

郵便局の公共性を社会に還元

 見直し法案の骨組みは「郵便局の新たな利活用を推進する議員連盟」(山口俊一会長)が水面下で進めている。自治行政の観点から、議連事務局次長の国定勇人衆議院議員や、元総務省官僚の瀬戸隆一衆議院議員が主として携わっているもようだ。
 見直し法案の筆頭に掲げられるのは、郵政事業の課題解決よりも、日本社会全体を襲ってくる2040年頃の強烈な人口減少社会の自治行政への対応。暮らしや地域経済を守るために医療、介護、インフラ整備などの住民サービスを持続可能な形で提供し続けられるよう、郵便局が受託する公共サービスの守備範囲を拡大することで社会を守り、郵便局ネットワークの存在価値を高める環境整備を主眼に置いている。
 そのための大筋は、国が自治体に対して、郵便局への委託にかかる予算を交付金として計上するよう法的に定め、自治体はそれを活用し、郵便局に業務を委託し、手数料を支払う形を想定している。
郵政三事業のユニバーサルサービスを堅持するために不可欠となる郵便局ネットワークを、今の形で維持できる仕組みを、社会環境の変化に沿う形で修正を施している。

人口減2040年問題に対応
業務受託の守備範囲、拡大へ

 2040年問題は2017(平成29)年、当時総務大臣だった野田聖子衆議院議員が「自治体戦略2040構想研究会」を立ち上げ、自治行政を2040年から逆算する形で対応策を練り始めたのが始まりだった。
 しかし、想定以上のスピードで人口減少が進んでいる。7月26日に総務省が発表した住民基本台帳に基づく人口動態調査によると、今年1月1日時点の日本の総人口は、1億2541万6877人で前年比約51万人が減少。日本人は約80万人減少と1968(昭和43)年の調査開始以来、最大の減少幅となった。
2040年まで、あと17年ある現段階でも事態は深刻。地域社会を守る公共サービス維持の仕組みが急務となっている。
 見直し法案の骨格は、このほか、3月に議連会長の山口衆議院議員が提示したNTTと同様に持ち株会社が一定程度の金融2社の株式を保有し続けることや、グループガバナンスの強固な体制に向けた4社体制から3社体制への移行、以前に長谷川英晴参議院議員も売却益をユニバーサルサービスに活用すべきと言及していたが、それに関わるユニバーサルサービス基金創設も盛り込む方針。
 郵活連は8月1日、幹部会を開催。改正法見直しではなく、楽天グループやヤマト運輸との協業状況について、日本郵政の増田寬也社長と日本郵便の千田哲也社長からヒアリングを行っている。