「共創の未来へ」 進化するスマートスピーカー
日本郵便が独自に開発した「ぽすくまアプリ」を搭載し、高齢者とオンラインでつながり会話もできる「スマートスピーカーを活用したみまもりサービス」の試行・実装が各地で広がりを見せている。(写真は長野県上松町)
防災やオンライン診療への活用も
同サービスは2019(令和元)年、総務省の実証事業として岩手県遠野市から始まり、21年7月からは信越支社(大曽根和之支社長)が長野県上松町と試行実施。町内在住の高齢者宅、町役場、地域包括支援センター、郵便局にスマートスピーカーを設置し、オンラインで高齢者の生活や健康状態を見守った。
大屋誠前町長は当時、「この仕組みのすごいところは双方が顔を見ながら高齢者も受け身でなく言葉を発信できる。外に出づらい山間地の高齢者が会話を楽しめること自体、その地域で暮らし続けるために一番必要なことかもしれない」と強調した。
同町に隣接する大桑村でも、昨年の試行でその効果が高く評価され、実装に向けた準備が進められている。大桑局の前原弘志局長は「高齢者を見守る民生委員の方も高齢化し、村役場の職員も人員が減っている。スマートスピーカーはさまざまな課題解決へ期待が大きい」と力説する。
高知県梼原町では、昨年1月から防災に特化した総務省の実証事業が行われ、高齢者24世帯と4局も参加(写真上)。スマートスピーカーを活用した防災訓練が行われ、郵便局や町から防災情報も発信された。
梼原局の山﨑隆信局長は「遠隔で防災情報を発信する今までになかった取り組み。特に中山間地域には必要なものだと思う。防災訓練では、防災アラートを流して被害状況の発信や安否確認なども行った。利用者の方からは、ぜひ続けてほしいとの要望もいただいている」と願いを込める。
東海支社(大角聡支社長)は昨年4月から、岐阜県恵那市と連携し、防災機能を新たに搭載したスマートスピーカーを飯地町内で希望する全175世帯に設置した(写真上)。サービス開始後最大規模。アマゾン社が追加した「行政情報のデジタル配信」「生活みまもり」「災害発生危機通知」の新サービスが全国で初めて実装となった。
今後は災害時の避難誘導やオンライン診療への活用も目指しており、飯地局の樋田弘明局長は「市と町との協議は本社・支社も交えて隔週で行われている。大雨情報などが随時届くので、住民の皆さまからも安心の声が上がっている」と語る。
愛媛県宇和島市では、22年12月から、スマートスピーカーと「タブレット端末を活用したオンライン診療支援」の合わせ技で、全国初の取り組みを開始した。
愛媛県南予地区連絡会の清家裕二統括局長(宇和海)らが、オンライン診療とみまもりを組み合わせる形で高齢者を守るまちづくりをしようと協議を進め、実現に至った。この取り組みは「Digi田甲子園2023」で、内閣総理大臣賞(優勝)を受賞した。
従来のみまもりに加え、防災やオンライン診療、買い物支援、健康増進への活用など、さまざまに進化を遂げる〝AIスピーカー〟への期待はさらに高まっている。