社説

2025.09.09

 総務省は8月8日、2025(令和7)年1月1日時点の前年比で55万4485人減少する一方で、在留外国人は同35万4089人増えている人口動態を発表した。国外からの転入者数は66万1809人と調査開始の2012(平成24)年以来最大数だ。

見えない努力と価値に眼を

 そうした中で、日本に6カ月在留せずとも金融決済口座が作れる郵便局は、外国人の方からありがたい存在に違いない。しかし、言語も通じない中でタブレットの翻訳機能を使っても日本人の名前は平均5文字だが、外国籍の方は英文字で時として40文字もある。外国籍が多い地域では秋や春には留学生も多く訪れる局窓口の対応も一筋縄ではいかず、大変だ。
 大阪府南部地区連絡会の久保博史統括局長(和泉池上)は「大阪市内には在留外国人のお客さまが8割の局もある。1人に時間を割かざるを得ない対応だが、しかし、近年は問い合わせてもほとんどの電話はテープ音。社会の弱者的な立場の方々を包摂する仕事が郵便局はどんどん増えている。収益にはつながらないが、そうした価値こそかけがえのないもので、本来の郵便局と誇りを持つべきだと思う。郵便局がなければ一体誰が受け入れてくれるのだろうか」と訴える。
 外国人の方のみならず、高齢者の方、単身世帯等々がその地で生きるために相談できる場。地域性により悩みの傾向は全く異なるが、一方で共通し、できることもある。例えば、ゆうちょ普通口座の通帳には通常貯金と定額貯金の欄があるが、定額貯金を契約すると担保定額扱い(担定)となって、通常貯金残高が足りなくなった場合に担定残高から自動的に貸し付けもできる。
 ある支社長経験者は「例えば『担保定額を付けていただくと、万が一残額が足りなくなった時に便利ですよ』などとお声がけしながらお客さまと仲良くなることが大事だ。近年はデータ営業が主流となって、局長や社員の皆さんが通帳を確認する機会が減ったが、通帳で担定満期時期を意識し、好機までに人間関係を構築していただきたい」と語っている。
 何か相談したくなるようなあいさつや、さりげないお声がけ、人がいる郵便局ならではの持ち味をさらに生かす姿が待ち望まれているようだ。