行政相談に郵便局長の声を 総務省第3弾 八代市で

2024.02.29

 地域の埋もれたお困りごとの解決を目指し、総務省が自治体や行政相談委員と郵便局長が接触する意見交換の場を全国に広げている。1月24日には熊本県で「八代市・郵便局等との懇談会」を同市内で開催。愛媛県宇和島市、新潟県三条市に続く第3弾だ。

子ども見守りニーズ高まる
阿向泰二郎大臣官房審議官


 「地域のお困りごと解決に向けた八代市・郵便局等との懇談会」には、中村博生市長も出席。企画側の総務省からは馬場成志総務副大臣、磯寿生九州管区行政評価局長、阿向泰二郎大臣官房審議官、郵便局から八代局の岡聖久局長、鏡局の樹本有市局長、八代八幡町局の山中正三郎局長、八代横手局の辻本英一局長が行政相談委員と活発な意見を交わし、地域のお困りごとを探った。阿向審議官は「共働き世帯が増える中で子どもや高齢者の見守りのニーズなどは高く、地域における郵便局への期待は大きい」と強調する。

 ――行政相談懇談会で郵便局長の意見を聞きたい理由を教えてください。
 阿向審議官 地域にどのような課題や悩みが潜んでいるかを捉えるために、総務省も外に出向く必要があるが、自治体も総務省と同様に役場の中での仕事が多い。郵便局は住民の方々と直接会話もされる機会も多く、気付きは多いに違いない。行政と郵便局が連携することで課題解決に向けた推進力が増すことを期待している。

 ――見えてきた地域課題とは。
 阿向審議官 八代市は若い世代が住みたくなる魅力あるまちづくりを目指す中、市民からは子育ての悩みがまず1点。2点目は他市町村と同様に人口減少に伴う過疎化や高齢化。子育ては産後ケアサポートや不登校、共働きが増える中での子どもの見守り、一人住まいの親御さんの見守り等々、現役世代が安心して働けるためにも〝見守り〟は共通課題として浮上した。
 市民の方から「自分たちの幼い頃は郵便局に冷水器があり、下校時は皆で郵便局に寄って水を飲みながら会話した」との話もあった。子どもや高齢者の見守りに、地域の方々の郵便局への期待は大きいと感じた。本来業務がある中でできることに限りはあるだろうが、郵便局長の皆さんから取り組みの紹介や課題解決に向けた提案もいただけた。

 ――直接、顔が見える距離感は大切ですね。
 阿向審議官 郵便物がたまっているなど異変を感じた時、地域の役員の方に情報提供するといった協力ができるのではと局長の方から提案があった。地方は年金を郵便局で受け取る方も多い。支給日にお客さまの顔を見て、健康状況などに気付くこともあるかもしれない。
 心配な時に見守りに関わるさまざまな窓口が連絡を取り合える仕組みがあれば郵便局も協力したいと、前向きなご意見をいただいた。
 総務省から、新潟県内の郵便局では「行政相談ボックス」を置いて地域課題解決の橋渡し役として関係機関につないでいると紹介し、行政相談委員の賛同があった。八代市の郵便局側からは、タブレットを活用したオンラインでの行政相談が広がると良いのではないかとの意見もあり、複数の違う立場が一堂に会すことで、課題解決の糸口が見えてくる印象を受けた。

郵便局の防災食備蓄検討中
高田賀夫行政相談企画官


 高田企画官
 一昨年、「郵便局を活用した地方活性化方策PT」(キャップ=竹村晃一官房長<当時は今川拓郎官房長>)が立ち上がった際、省内全体で郵便局と何か連携できないかとの話になった。
 役所に行っても苦情を伝えにくいが、郵便局であれば世間話的にも話ができる。宇和島市での懇談会では、災害時の食料備蓄に郵便局の空きスペースを活用する提案があり、実現に向けて検討中だ。