お客さまと社員守るシステム整備へ グループ挙げて 千田日本郵便社長

2024.11.24

 日本郵便の千田哲也社長は10月11日、日本郵政グループの非公開金融情報の適切な取り扱い確保に向けた記者会見を行った。「主因は経営側。郵便局の今のシステムは、クロスセル(異なる会社の商品のご案内等)の同意を得ているお客さまか否かの判別ができない。お客さまにクロスセル同意をご理解いただけるようなシステムをグループ挙げて総合的に早期に整備することが重要。法令違反からお客さまを守り、社員を守る仕組みをつくらなければならない」と真摯に語った。

総合サービスの長期提供を可能に

 千田社長は冒頭、「非公開金融情報の不適切な取り扱いは、会社が郵便局の社員への指示を誤ったことで正しいクロスセルの取り扱いルールを実行する体制を構築できていなかった。責任を重く受け止めている。安心して利用いただける仕組み構築に向けた検討を進める。問題の主因は経営側と確認できた。お客さまからの声、社内からの声に基づく個別調査に注力する」と述べた。
 記者団から「窓口営業がいったん立ち止まる中で、サービス品質への影響と金融2社への影響は。今後の収入確保策は」との質問に対し、「郵便局の来客案内はいったん停止するが、お客さまに同意いただく体制を整備し、来局の案内を差し上げられる体制を早期に実現したい。それにより影響を最小限に食い止め、逆にこれを機に、発展できる仕組みをつくり上げていきたい」と意欲を示した。
 「1億2000万口座の既存顧客とどう接点を持ち、クロスセル同意を得ていきますか」には「郵便局は三事業以外にも物販や自治体業務受託等々さまざまなサービスを提供。一連をつないで郵便局のお客さまとしてのID、アプリをお持ちいただき、総合的なサービスを末永く使っていただけるように、と中計でも打ち出している。お客さまにクロスセル同意をご理解いただけるようなシステムをグループ挙げて総合的に早期に整備することが重要。高齢のお客さまも多い。きめ細かなクロスセル同意の促進策を取る必要がある」と強調した。

これを機に抜本システム改革も 千田社長

 「システム改修中は、局窓口での金融サービス提供に必要な情報は取得できますか」には「郵便局の仕事が非公開金融情報だけで動いているわけではない。来客時対応できる体制を確保している」と説明。
 「今のシステムはクロスセルの同意を得ているかを判別できますか」には「クロスセル同意を得ているお客さまか否かの判別は今の郵便局のシステムではできない。早期に整備し、郵便局でクロスセル同意を得ているお客さまにサービスを提供できるようにしなければならない。法令違反からお客さまを守り、社員を守る仕組みをつくらなければいけない」と展望した。
 「同意を得ずに非公開金融情報を使わざるを得ない背景があったのですか」には「郵便局はお一人お一人に向き合ってさまざまなサービスを提供する中、お客さまに一番合うサービスを提供したい思いが社員にあったと思う」と指摘。
 「① クロスセル問題は、保険業法に基づく体制を会社として整えていなかった経営側に起因し、過去の募集問題は現場に主因したのですか②システム整備の資金はどこが支払われますか」(郵湧新報)には「不適正募集全てが現場に起因したとは考えていない。あの時、フロントと経営でタッグを組める会社になりたいと組織風土改革やフロントとのコミュニケーションを重視してきたが、まだまだだったと反省している。システム整備等は日本郵政の増田寬也社長トップのグループ横断的なプロジェクト体制をつくり、資金面もグループを挙げて対応する」と語った。
 再発防止策は、①郵便局の不適切な非公開情報等の利用禁止の徹底②システム改修③郵便局の来局誘致方法の見直し。アフターフォロー等を、ゆうちょ銀行やかんぽ生命、各委託元会社から案内④非公開金融情報等の取り扱いルールを明確化し、研修を実施⑤モニタリング強化に向けた調査の実施⑥システム環境の抜本的な整備に向け、日本郵政社長をトップとしたグループ横断プロジェクトを設置し、推進⑦本社役員の責任を明確化――の7項目を基に進められる。