続・続 郵便局ネットワークの将来像㊲
災害はなければ越したことはないが、誰もが他人事にはできない。能登半島地震で改めて〝生活拠点〟としての郵便局ネットワークの重要性が浮き彫りになった。郵便局は平常時だけでなく、災害時も体と心の両面で〝縁の下の力持ち〟になっていた。(写真上は被災地を走る郵便車両)
求められる〝縁の下の力持ち〟
能登地区会の坂口高雅会長(写真上、町野)は「すでに地震前、奥能登2市2町(珠洲市、輪島市、穴水町、能登町)の首長団が石川県に、奥能登で総合病院を新たに整備し、地方医療を変えたいとの要望を出されていた。人口が今後急速に減ることが予測されるためだ。地震が起き、四つの病院はすでに経営が大変とも耳にする。拠点の総合病院が整備されれば、オンライン診療の必要性も出てくる。薬やコンタクトレンズ等々を、将来は郵便局を拠点にドローンで配送できると理想的だと思う」と話す。
「郵便局はメンタル面でも貢献できたと思う。奥能登の郵便局では、1月24日から郵便物の窓口での交付をスタートし、私の町野局では、29日に開局し、郵便物を交付できた訳だが、訪れた多くのお客さまが『地震があって家を失ったけれど、ちゃんと年賀状を受け取れた』と皆さん本当に喜ばれ、郵便局としての使命を痛感した。能登地区会の橋爪聰司防災担当理事(西保)が受け持つマイナンバーカード関連事業等も含めた自治体受託業務や南大呑局で実証実験が行われたオンライン診療は、災害時は特に有効だと感じている。こんな時だからこそ、さらに郵便局がお手伝いできるとよい」とも展望する。
橋も崩れて通行禁止になっていた
珠洲市健康増進センター担当者の方は「5月頃までは避難所を回っていたが、今は仮設住宅で見守り相談支援事業として血圧を測り、健康アドバイスをしている。ご家族を亡くされた方もいる。お茶会を設け、おしゃべりしてメンタルを支える。郵便局の皆さんも被災者の見守りのようなことや、家に人が住んでいるのかチェックされるなど忙しそうにされていた」と振り返る。
浮き彫りになった郵便局の必要性
1階部分が潰れている家屋が多かった
輪島市は今、孤立集落を今後もインフラとして継続させるための復興計画を作っている。市総務課の坂本修課長は「一部の集落は集団で町に近い地域に移転したいとの要望を上げている。地元として意向を固めたところは市も全面的に協力し、災害公営住宅を整備して住む場所の確保を支援する。確かに過疎地の郵便局に日用品を販売してもらえるとよいかもしれない」と言う。
プレハブ型(左)とアパート型(右)の仮設住宅
橋爪理事(西保)は「石川県がアパートと契約を結ぶ〝みなし仮設制度〟を利用して金沢市内のアパートに入った方も多く、数カ月間は住めたが、6月終わり頃に県から『ライフラインの復旧した地域は退去し、自宅に戻ってください』と書面で案内された。個々の状況や高齢者が住める地域かが考慮されていなかった。孤立集落は電気や水道が通っても店は近くになく、80代の被災者の方が多い中、危険な道を1時間以上かけて買い物や病院に行かなければならない。バスも動いていない。困り果てた地区の方々を代表して輪島市に相談したところ、本来、半壊以上でないと仮設住宅には入れないルールを地域の状況を考慮した上で柔軟に対応すると示してくれた。復旧を急ぎ過ぎることで制度と現状にかいりが生じ、取り残される被災者が発生してきている」と語る。
北陸地方会の石田尚史顧問(前大谷局長)は、水がなかったために髪を洗えず丸刈りにされたそうだ。「地域内に備えられたタンクに生活水を汲みに行く毎日で、自宅で水が飲めるようになったのは8月。今も断水している地域がある。息子が局長を務める大谷局は5カ月間休止していたが、地元の方々からは『早く郵便局を開けてほしい』との要望が元局長や現局長にたくさん届いた。郵便局に対する期待は非常に大きかった」と強調する。