新春インタビュー 都城市 池田宜永市長
マイナンバーカードに搭載される「電子証明書の発行・更新手続き」が昨年5月、全国で初めて宮崎県の「イオンモール都城駅前内局」で始まった。マイナカードを持つと5年に一度は必須になるもので、昨年末までに比較的普及率の高い6自治体が6局に委託した。都城市の池田宜永市長は「郵便局は地域に根差した地域密着型の組織で、地元の郵便局は市民の方からの信頼が非常に厚い。全国に細やかにあるため、あらゆる業務を市窓口だけではなく、郵便局でできるようになると、市民にとって大きなプラスになると思う」と期待を寄せる。
あらゆる業務を郵便局でできるように
――都城市はマイナカード交付率87.5%。どのような施策で普及を推進してこられたのですか。
池田市長 マイナンバー制度スタート時から、マイナカードがデジタル時代の重要なインフラになると思い、普及促進の取り組みを継続しながら強化してきた。最初の段階で、市民の方々から「カード作りは面倒」との声があったため、まずは、①申請しやすい環境づくり②カードを作ることによる利便性向上――の2本を柱に地道に取り組んだ。
第1の申請しやすい環境は総務省から〝都城方式〟と呼ばれて推奨いただいている「タブレットを使った申請補助」を全国で初めてスタートした。持ち運びができるタブレットを市の職員が各企業、公民館、団体等に持って行き、市民の顔写真を職員が撮って差し上げた後、オンライン申請のサポートを職員が行う。今はこの方式で普及に取り組まれている自治体も多いようだ。
さらに、小さいバンの軽自動車を改造して写真撮影ブースを車内に作った申請補助専用車に職員が乗って、タブレットを持ってお宅まで伺うやり方にも取り組んでいる。自動車の後部座席で写真を撮って、オンライン申請のサポートを行っており、高齢者の方に多く利用いただいている。
また、マイナカードは赤ちゃんから作れるため、生まれたばかりのお子さまを抱えた市民をターゲットにご自宅に伺い、赤ちゃんの写真を撮ってカードを作っていただく取り組みも進めている。
ただ、都城市は交付率がかなり高くなってきたがゆえに申請していない方のターゲットを絞りやすくなったが、交付率が低い時点では、きめ細かくターゲットを絞るのは難しく、できなかった。
――2点目の「カードを作ることによる利便性向上」は、どのようなことをされたのですか。
池田市長 マイナカードを持てば、キオスク端末で住民票の写しや印鑑証明書が取れるが、市の窓口で住民票を取る場合に300円かかるものを、キオスク端末で取る場合は半額の150円にしている。
また、電子母子手帳サービスや災害時の避難所入所時管理等での活用のほか、もカードを使ってオンライン申請できる手続きを広げ、さまざまな市民サービスをマイナカードの活用でできるようにしてきている。市の職員の出勤・退勤の管理は全てマイナカードだ。
――マイナカードに搭載される「電子証明書の発行・更新手続き」の事務を自治体として全国で初めて郵便局に委託されましたが、意義を教えてください。
池田市長 電子証明書はマイナカード保有者が納税や行政手続きをオンライン申請する際に、5年に一度更新が必須になる。
その際の電子証明書の更新や暗証番号の初期化、再設定等、市役所でしかできなかった業務を「イオンモール都城駅前内局」に委託したことで、市民の方々は買い物ついでに更新しやすくなった。
この業務に関しては、自治体は郵便局にしか委託できない。市民サービス向上とともに自治行政の効率化に大きく寄与している。
――今、自治体からマイナカード申請支援の業務を受託する郵便局が増えていますが、郵便局で交付までできた方がよいとお考えですか。
池田市長 今後、10年に一度、マイナカードそのものの更新が必要になることが自治体の大仕事として残っている。郵便局で交付までやっていただけるようになると、郵便局で申請・交付が完結できて自治体負担は相当軽くなるし、市民も便利だ。
郵便局は地域に根差した地域密着型の組織で、地元の郵便局は市民の方からの信頼が非常に厚い。全国に細やかにあるため、あらゆることを市窓口だけではなく、郵便局でできるようになると、市民にとって大きなプラスになると思う。
市内には中山間地域もあるが、高齢の方の割合も多く、デジタルになかなかついていけないため、郵便局の方々に〝誰も取り残されない〟行政サービスの手伝いをしていただけることを期待している。
加えて、銀行等の金融機関は支店も町なかにあり、数も少ない中で、郵便局は中山間地含めてきめ細かいネットワークがある。引き続き、郵便局に地方を支えていただけると大変にありがたい。