インタビュー 中井克紀 東海支社長(執行役員)
〝日本の真ん中〟に位置する東海地域は、戦国武将が群雄割拠した魅力あふれる天地。東海支社(中井克紀支社長・執行役員)は地域の自治体や企業等とさまざまに連携し、約4万人の社員たちが個性豊かに躍動している。本社のIT企画部長などを歴任した中井支社長は「失敗は、将来への投資だ。失敗を恐れずにまずはやってみて、うまくいったらそれで良し。失敗したら、それは学習のステップだったと次の手を考え、最善の方向性を探りたい」と未来を志向する。
挑戦を! 失敗は将来への投資
――本社のIT企画部長を6年間務められたそうですね。
中井支社長 支社に来る直前まで、DX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組んできた。DXやスタートアップの世界では〝失敗することが価値〟という考えがある。もちろん成功を目指すのだが、トライアルでどれだけ失敗しても、全て将来に向けた過程という発想だ。
実は失敗は、それほどネガティブなことではなくて、その経験は自分たちの実になる。失敗は、将来への投資だ。社員の皆さんにも言っていることだが、失敗を恐れずにまずはやってみて、うまくいったらそれで良し。失敗したら、それは学習のステップだったと考え、次の手を打とうと。「PDCA(Plan=計画、Do=実行、Check=評価、Action=改善)」を繰り返す中で、最善の方向性を探りたい。
――東海地域にはどのような印象を持たれていますか。
中井支社長 支社管内には「1割東海」という言葉がある。例えば、営業目標や人件費も全国の1割ほど。日本銀行の名古屋支店長も〝東海地域は10%経済〟と話されていたが、東海を10倍したら全国のイメージになる。地理的には都心部もあり、ローカルなエリアもあり、日本の縮図ともいえる。
歴史的にも、戦国時代からさまざまな国が並び立ち、それぞれに個性的。その個性が集まって一つの〝東海カラー〟となっている。
例えば、何かやろうとなれば、皆さんそれぞれに工夫して真面目に責任を持って取り組んでくださる。実直な方が多く、目標をやると決めたら一生懸命それに向かって取り組んでいただけるので、支社としては本当にありがたい。それぞれの力を生かせるような新しい企画を立案していくことが重要だ。
――地域創生・地方創生の諸施策について教えてください。
中井支社長 支社管内160の自治体のうち、約半数と包括連携協定を締結した。今後はそれをどう実のあるものとし、事業に結び付けていけるかだ。
静岡県藤枝市内3局では「デジタル支援」を試行している。高齢者などに社員がスマホ等の使い方を教えるもので、「安心して相談できる」と大変好評をいただき、他地域への拡大も検討している。
静岡県公式チャンネル(ユーチューブ)では1月から、新型コロナウイルス感染者や医療従事者への差別を防ぐメッセージ動画を公開した。社員と県職員の方々がリレー形式で出演し「医療従事者の皆さん、ありがとう。お体を大切に」と呼び掛けている。今後はSNS等を活用した啓発活動も予定している。
また、岐阜県警と連携し、ニセ電話詐欺の被害防止啓発DVDの放映等を実施したほか、愛知県の蒲郡・豊橋・豊川警察署と包括連携協定を結び、防犯活動に取り組んでいる。三重県伊勢市内局では市社会福祉協議会との連携で「ふくしなんでも相談室」を開設。身近な局長・社員が悩みを聞いてくれ、課題解決につながると評判だ。
――新しい営業体制に向けた準備はいかがでしょうか。
中井支社長 特に、窓口での営業に力を入れていきたい。窓口でお客さまのニーズをどのようにくんで、ご提案できるかが勝負になってくると思う。
社員個々の力を伸ばすとともに、それを後ろから支える力も必要だ。そういった「マネジメントの変革」に今、支社で一番力点を置いている。良い取り組みができた社員さんを褒めてあげ、逆にうまくいかなかったら「次にどうやったらいいか、一緒に考えよう」と支える体制を作りたい。
投信も一つの大きな商品になるが、あまり取り扱ってこなかった人も多い。1人で不安なら、2人でご提案する方法も一つ。タブレット端末を使って取扱局とつながり、紹介局の社員さんがお客さまの横でサポートする取り組みも、本社の協力のもと進めようとしている。「リアル×デジタル」の一つの形かもしれない。
お客さまを前にして困ったとき、誰かが助けてくれるという体制があるのは大きい。フロントラインの方々の不安を取り除き、安心して取り組んでいただいて成功事例を共有していきたい。
――「共創プラットフォーム」の取り組みについては。
中井支社長 私たちにはさまざまなリソース(資源)がある。施設や社員たちのケイパビリティ(能力)を使って新しい価値を生み出していきたいが、1社だけではなかなかできないことも現実問題としてある。他社との協力が重要だ。
昨年11月から、静岡県沼津局で車両のEV化と充電ステーションの実証実験がスタートし、先日は日本郵政の増田寬也社長も視察に来られた。一緒にやっている東京電力様は効率的な充電や省エネで、三菱自動車工業様はEVの性能向上などでそれぞれ課題を次へのステップにつなげ、そこでトータルの価値が生み出されていく。
SDGs(持続可能な開発目標)にも貢献し、カーボンニュートラルも促進できる。EVは意外とランニングコストが高くないようなので経費的なメリットもある。栃木県小山局でも同時に始まったが、実証実験が次の段階へと進んでいくことを期待したい。
また、スギ薬局様とは昨年4月から9月まで、「服薬指導済みの薬剤配送サービス」と「残薬回収サービス」の実験を愛知県内5局で実施した。今後もより幅広いビジネス領域で連携を進め、地域や社会に貢献できるサービスを提供していきたい。
社員力伸ばす「マネジメントの変革」を
――社員の方々の研修等については。
中井支社長 以前はオンラインで会議形式の研修を行っていたが、現在は主に動画の配信方式に変え、何回でも見られるようにした。長時間だと疲れてしまうので、なるべく短く中身の濃いものを提供している。研修後にはフィードバックというかクイズのようなものを行い、理解度を測ることも進めていきたい。
外部講師による研修も開始した。社会が変化している中、いつまでも郵政内だけの発想でやっていると、世の中からかい離してしまうこともある。今年度はCS(顧客満足)研修の中で、ANA様やJTB様に担当していただいた。さまざまな学びがあったと思う。
私自身もぜひ現場に行き、直接話をしたい。今の単マネ局長である郵便事業支店長も経験したが、窓口については分からないこともあり、統括局長の皆さんにもいろいろ教えていただきたいと率直にお願いした。時には「いや支社長、ぶっちゃけね」とストレートに言っていただくことがありがたい。率直な意見交換を重ねていけたらと思う。
――今後の抱負をお願いいたします。
中井支社長 日本郵政グループの経営理念に「お客さまと社員の幸せを目指します」とあり、日本郵便の経営理念には「人々の生活を生涯にわたって支援する」とある。どこまでも、お客さまと社員の双方が幸せになることを目指し、失敗から学びながら挑戦を重ねていきたい。