インタビュー かんぽ生命 谷垣邦夫社長

2024.04.19

 日本郵政グループ三事業の副社長を歴任したかんぽ生命の谷垣邦夫社長は、「かんぽ生命の保険というより〝郵便局の保険〟。郵便局ブランドとネットワークの強さを最大限活用し、営業を含めて全ての仕事をグループ一体となって取り組むことが大原則」と話す。(募集問題等で)苦労をかけた社員の方々へ感謝の思いを語り、「①信頼感②安心感③親近感――の三つの郵便局ブランドの強みにさらに磨きをかけて、人生100年時代における、かんぽ生命の社会的使命を社員と一緒に果たしていきたい」と強い意欲を示す。

「かんぽ生命」の社会的使命を社員と共に果たす

 ――年明け早々「令和6年能登半島地震」が発生しました。
 谷垣社長 ご冥福とお見舞いを心から申し上げる。私も2月中旬に能登へ激励に行かせていただいた。かんぽ生命は災害救助法適用に伴う非常取り扱いや契約者貸し付けと入院保険金の特別取り扱いを提供しているが、寒い中、頑張っている社員の皆さんに勇気づけられた。引き続き、復旧・復興を全面的に支援していきたい。

 ――日本郵政グループ全社での経営のご経験をどう生かされたいですか。
 谷垣社長 私の郵政人生40年は、国営時代、民営時代がほぼ半々。民営化以降は日本郵政での10年間を経て、日本郵便、ゆうちょ銀行、かんぽ生命それぞれの副社長として働く中で今感じることは、日本郵政グループにとって「郵便局ブランド」が非常に大きな強みであること。
 かんぽ生命の保険は「郵便局の保険」というブランドが一番の強み。営業を含め全ての仕事をグループ一体で取り組むことが大原則だ。「郵便局ブランド」と「ネットワークの強さ」を最大限活用し、かんぽ生命の成長に全力を注ぎたい。

 ――新商品で局窓口も活気づいてきたようです。何をアピールしてほしいですか。コンサルティングの方が行きづらい過疎地等の営業体制は。
 谷垣社長 日本郵政グループは、人が生まれる前から生まれた後も一生のイベントに沿ってお支えする「トータル生活サポート企業」が根本的なコンセプト。実現のために中期経営計画「JPビジョン2025」を策定している。生命保険はお客さまのライフイベントに寄り添う金融サービスであり、目に見えない〝安心〟をお届けできる。
 お客さまからの〝信頼〟が企業価値の源泉との思いで、お一人お一人の人生に寄り添い、分かりやすい商品と質の高いサービスを提供したい。
 1月に発売を開始した、人生100年時代に一生涯の保障ニーズにお応えできる新商品の「一時払終身保険」は「つなぐ幸せ」と命名した。健康状態を「告知なし」でお申し込みができる分かりやすい商品。保険金を残したい人へ残すご要望にお応えできる。かんぽ生命本来の社会的使命の〝安心〟をお届けすることで「人生を支えられる」と自信を持ってお勧めいただきたい。
 郵便局窓口の社員の方々には、アフターフォローや、必要に応じて局外活動もしていただいている。そういったリアル接点に加えて、かんぽ生命からメールやSMSなどでお客さまに直接ご連絡するサービスや、コンサルタントが、各種手続きの情報を業務用スマートフォンで正確に把握した上で、お客さまと接するデジタルを活用した仕組みも導入した。
 お申し込み時もサービスセンター社員がオンラインで同席し、ご意向をその場で確認する仕組みも導入し、募集手続き時間を短縮している。

信頼感・安心感・親近感の〝郵便局ブランド〟で

 ――かんぽ生命のビジネスモデルの中での郵便局の活用を教えてください。社会の重要テーマ〝健康増進〟における郵便局との連携は。
 谷垣社長 昨夏、就任直後に郵便局の営業の支援体制を充実させるため、各支店に「郵便局支援部」を新設した。同期でもある日本郵便の千田社長とは毎週打ち合わせをし、かんぽサービス部とエリマネ局との連携営業の強化に取り組むなど緊密な連携を図っている。
 例えば、コンサルタントがお客さまとお話をする場所がない時は郵便局カウンターをお借りするなど、さまざまな連携を可能にした。窓口社員の募集時は必要に応じてコンサルタントが共同募集する仕組みも導入し、アフターフォローを含めて「郵便局と一体の営業体制」を強化している。
 生命保険は健康増進と極めてなじみが深く、経営にも生かしたい。かんぽ生命といえばラジオ体操だ。昨夏、「1000万人ラジオ体操・みんなの体操祭」に参加したが、あの音楽が流れると体が自然に動く。ウェルビーイング向上にも資するラジオ体操は、かんぽ生命の大切な国民的財産で、重要な社会課題解決策とも認識し、NHK等関係者とも打ち合わせを重ねている。
 また、無料で提供する健康応援アプリ「すこやかんぽ」は、日々の歩数管理だけでなくラジオ体操も体験できるが、生活サイクルや食生活サポート、健康診断も行える仕様だ。昨年は、郵便局を巡ってアプリ内のスタンプを獲得いただくと、ふるさと小包などが当たるキャンペーンも実施した。

 ――アフラックとの協業はどのような形で進めていますか。
 谷垣社長 2013(平成25)年の、日本郵政との包括連携協定を機に、全国約2万局でがん保険の取り扱いをスタートし、21年に「資本関係に基づく戦略提携」のさらなる発展を合意した。
 アフラックにとって24年は、日本における創業50周年を迎えると同時に、日本郵政も持分法適用会社としてアフラックの利益の一部が連結利益に反映開始されるメモリアルイヤーだ。
 かんぽ生命は、がん保険販売でアフラックからさまざまなサポートをいただいているが、「アクセラレーションプログラム」と題したスタートアップ企業と協業する仕組みでも連携している。アフラックの社内報に私と古出眞敏社長との対談記事も掲載いただいた。戦略提携の好事例として、ウィンウィンの関係を深化させていきたい。

 ――保険業界はどう変化するのでしょうか。ESG投資も精力的に進めていらっしゃいますが、1人の人生を支えると同時にグローバルに視野を広げられるお考えですか。
 谷垣社長 死亡保障から「生きるための保険」として医療保険へシフトする動きは一層高まっていく。また、低金利の中で、貯蓄性も兼ね備えた保険商品は苦戦していたが、金利が改善してきたことで商品性にも幅が出てくる。
 かんぽ生命はウェルビーイングの向上、地域と社会の発展、環境保護への貢献をESG投資の重点取り組みテーマとして設定し、「インパクト〝K〟プロジェクト」を通じてインパクト志向の投融資を積極的に推進し、慶應・立命館・大阪などの大学とも産学連携プロジェクトを進めている。財務情報だけでなく、ESGを総合的に評価した「ESGインテグレーション」を導入した。
 また、かんぽ生命は昨年、米大手投資ファンドのKKRと提携し、子会社のグローバルアトランティックフィナンシャルグループが運用する再保険共同投資ビークルに参加した。国内マーケットも十分なニーズはあるが、海外ニーズも取り込み、収益源の多様化も検討を進めてまいりたい。

 ――新年度の幕が明けました。社員の方々にお伝えされたいことを。
 谷垣社長 昨年末、4年ぶりに業務改善計画に係る報告と公表義務が解除となり、今年1月から高齢者の方への販売も再開させていただいた。ご苦労された社員の方々に、まずは感謝申し上げたい。
 24年度は、かんぽ生命として新しいステージに突入したい。一時払終身保険もお客さまにご好評いただき、社員の皆さんの士気も大変向上してきた。
 保険という〝安心〟をお届けすることで社会に貢献すること、お客さまからの〝信頼〟こそが我々の企業価値という二つの原点を肝に銘じ、社員と共に頑張っていきたい。
 ①信頼感②安心感③親近感――の三つの「郵便局ブランド」の強みに磨きをかけて、人生100年時代におけるかんぽ生命の社会的使命を、社員の皆さんと一緒に果たしていきたい。