インタビュー 西口彰人近畿支社長(常務執行役員)

2024.02.23

 「創意工夫こそ近畿らしさ。近畿が頑張ることで全国に波動を広げたい」と営業に強い意欲を示す西口彰人近畿支社長(常務執行役員)。ゆうパック新規事業所の獲得や既存事業所の増送に力を入れてきたほか、2024(令和6)年1月からは金融営業支援と法人営業推進を図る「大阪金融営業本部」を本格スタートさせた。お客さまニーズをかぎ取り、三事業を主軸に〝横串〟を通す「日本郵政グループ一体となった取り組み」と「創意工夫」に勝負をかける。また、郵便局長一人一人の地縁性を生かした営業力にも期待を寄せ、「会社全体を幸せにする近道は『情報の共有化』だ」と強調する。

グループの多様なサービスを〝横串展開〟

 ――ご就任後10カ月が経過され、何が大切とお感じになられますか。
 西口支社長 まずは、このたびの「令和6年能登半島地震」によりお亡くなりになられた方々のご冥福を申し上げるとともに、被災された全ての皆さまに心からお見舞い申し上げたい。
 私は香川県小豆島の郵便局長を経験して以来、約30年の時を経て、昨年6月からフロントラインに近い近畿支社で仕事をすることになった。本社からは見えなかった課題も見え、郵政事業を支えているのはやはりフロントラインだと実感している。
 近畿は大規模な都市部から過疎地まであり、まさに日本の縮図。就任後2~3カ月はまず37地区連絡会の統括局長の郵便局を訪問した。皆さん元気で営業ができる人材も多いと感じた。だからこそ近畿が頑張ることで全国に波動を広げなければと思う。
 日本郵政グループは郵便・物流から貯金、保険、自治体関連業務、不動産等々、仕事の幅が広い。その強みをさまざまなお客さまニーズに生かすことができれば、多くの企業や団体ともウィンウィンの関係が築ける。
 顧客とウィンウィンの関係を築き、特産品のゆうパックや物販のほか、新規顧客や大きなお届け物をゆうパックで差し出されている法人のお客さまには、JPロジスティクスをご利用いただいたり、JPタワー大阪に本社オフィスも構えていただいている。
 現在、関係を構築できた企業に対し、給与振り込み等の金融商品も含めた法人・職域営業活動を行い、商品配送だけでなく、生産・保管・出荷等の物流を含めてトータル的にサポートし、グループ各社のお客さまに〝横串〟を通している。三事業一体の開花に、グループの総力を挙げて取り組むことが大切だ。

 ――近畿の強みである〝元気〟とグループの〝三事業一体〟を営業に生かされたい思いですね。
 西口支社長 郵便・物流は、ゆうパック等の新規事業所の獲得が目指すべき焦点であり、近畿支社では、既存の法人営業本部とは別に新規事業所の獲得等に特化した広域法人営業本部を増員し、強化した。ゆうパック推進は、全国の法人営業本部の平均を上回り、好調だ。
 金融は、がん保険はまずまず堅調に推移しているが、かんぽ営業が苦戦している。
何としても、1月から販売開始となった一時払終身保険「つなぐ幸せ」の販売実績を伸ばしたい。お客さまとの接点の基軸はゆうちょであり、唐突にお客さまに保険のお話が難しい時は定額貯金満期のお手続き等から、かんぽ新商品の一時払終身保険に結び付ける等、三事業を窓口で取り扱う郵便局の強みを生かしたい。

 ――金融営業はどのように動かれているのですか。コンサルティングの方々が行きづらい地域などは。
 西口支社長 地区連絡会ごとに創意工夫をされているが、支社も伝統的な取り組みを復活させてきた。代表的なものが「金融最高優績旗」。支社管内の地区連絡会を主に規模別に3グループに分け、営業成績を四半期ごとに各局で競うものだが、頑張れていなかった局が「優績旗獲得」に目標を定めたことで一気に伸びた事例も出ている。今後も〝やる気〟に響く取り組みを展開していきたい。
 個局が点在する「郊外」は、コンサルティングが全てカバーするのは難しく、エリマネ局も積極的にお客さまフォローをしていただかなければならない。各地区連絡会を担当するコンサルティングアドバイザー(CAD)はゆうちょ担当とかんぽ担当に分かれ、窓口でアポイントが取れた際にCADが応援に行き、社員と2人体制で対応しているが、CADを増やし、営業の機動力を高めたい。
 一方、「都市部」は、統括局長や副統括局長へのサポートとともに、所在する郵便局への金融営業の支援と法人営業の推進等のため「大阪金融営業本部」を昨年末に立ち上げ、1月4日からスタートした。引き続き、かんぽ生命と連携し、郵便局支援部と一体となって、かんぽ営業を推進する。

「情報共有化」で皆が頑張れる会社に

 ――人材育成に対する取り組みは。局長の方々の人材育成もお教えください。
 西口支社長 郵便局の強みはやはり〝人〟にあり、人材育成は極めて重要。そのためのネットワークづくりやロールプレーのために、コロナ禍でできなかった集合研修も復活させた。少人数のエリマネ局に配属された場合、社員同士の横のつながりもつくりづらいため、昨年11月には5グループに分け、1泊2日の集合研修を行った。悩んだ時に連絡し合える友人関係や切磋琢磨は大事だ。
 エリマネ局長の皆さんは、強い地縁性を持つ。その力をぜひ営業に生かしていただきたい。窓口社員が減少している中で、社員からは「局長も業務のヘルプをお願いしたい」との声も多い。
 窓口端末はかんぽの取り扱いだけで4系列のシステムが別々にあるなど複雑だが、操作ができなければサポートは難しい。端末操作が苦手な局長向けに端末操作研修も行うほか、各地区も工夫を凝らした局長研修を実践し、局長と窓口社員の業務負荷軽減になる取り組みも積極的に進めなければいけないと思う。

 ――奈良県月ヶ瀬地区で、ぽすちょこ便第2弾が始まりました。自治体や企業との連携に伴う新規ビジネス等も教えてください。
 西口支社長 月ヶ瀬のぽすちょこ便は円滑にスタートできたと聞いている。軽四輪の郵便車両の空きスペースに荷物を載せるぽすちょこ便を積極的に活用いただきたいが、買い物支援も各地域の方々のニーズは多種多様であり、その地域で最も望まれる形を探りながら課題を解決していきたい。
 自治体との連携では、和歌山県との包括連携協定締結をきっかけに「食で旅するおいしい和歌山2023 和歌山のええもん詰合せ」と題するカタログを製作・販売している。女性社員数名と吉本興業の芸人の方とで、カタログ掲載の和歌山県名産の梅干しと、その加工食品製造会社の工場内をYouTubeで広く紹介しながら販売促進し、県とウィンウィンの関係を築いている。
 大阪府寝屋川市との連携では、ネットで申し込むと図書館から本が送られ、郵便ポストに入れて返却する図書館の「本配送サービス」が地元図書館や自治体から大いに喜ばれている。
 また、全国施策のスマートスピーカーを活用したみまもりサービスや、京都府の児童虐待防止運動にも協力している。本社施策のドローン配送による配送高度化の実証実験(レベル3.5飛行)を兵庫県豊岡市で行い、成功した。

 ――近畿ならではのウェルビーイング(幸福度の指標)とは。
 西口支社長 今から30年以上前、私が郵政省に入省した際、近畿の先輩たちは「うちらが西の本省や」と活気があったことを覚えている。元気こそ近畿らしさであり、皆で明るくその底力を発揮していきたい。支社長になって常に「グループの総合力」と「創意工夫」が大事だと言ってきた。ローカルルールではなく、郵便局ならではの工夫をいろいろ試し、良い方向に改善いただきたい。
 もう一つ大切なことは「情報の共有化」だ。同じ物を見ても認識や見方が違えば違って見え、行き違いや言い争いになりやすい。誰しも情報を持つことで優位性を持とうとする傾向があるが、それが縦割りにつながる。支社は各施策の目的や背景、理由を本社から聞き取り、何のために今、この施策を進めているのかを、局長をはじめとするフロントラインと共有してもらいたい。それが会社全体の風土を幸せにする近道だ。