インタビュー 全国郵便局長会 宮川大介副会長

2023.08.23

 全国郵便局長会(末武晃会長)が6月に開催した全特沖縄総会では、3人の新任副会長が誕生した。宮川大介副会長(四国地方郵便局長会会長)は「公共サービス受託や場所貸しビジネスは郵便局の集客にも直結する。また、地域の人や団体の〝つなぎ役〟は郵便局長に適役」と細やかな持続可能性への思いを語る。一方、「関東のほしいも事業を郵便局ネットワークの強固な販売網を活用して成功させることは、今後の郵便局発の新規ビジネスの道を開く鍵になる」と強調し、新規ビジネスの創造と育成を呼び掛ける。

郵便局発の新規ビジネス創造・育成を

 ――四国は団結力があるように見受けられますが。
 宮川副会長 地区会数が11と比較的少ないため、アットホーム的な雰囲気を持っているのが四国地方会。このため、一番大事で一番難しい「情報共有」がしやすい。今、力を入れているのは専門委員会の充実で、11地区会の意見を吸い上げながら局長会として何を議論しているのかを会員にできるだけ分かるように伝達したいと思う。役員局長が各局へ足を運ぶことも滞りなく実践できている。

 ――局長と行政相談委員との全国初の意見交換会が始まりましたね。
 宮川副会長 四国地方会は自治体との包括連携協定の枠組みの中で、さまざまな地域課題解決を具体的に推進している。
 愛媛県宇和島市では、海ごみ削減プロジェクト「宇和海オーシャンズX」を市と宇和海地区漁業幹部協議会と郵便局の3者で協定を締結し、海の清掃活動イベントの企画運営の事務局業務を嵐局において受託し、業務料もいただき、今までに2回のイベントを実施した。
 郵便局が地域の企業やNPO、ボランティアをつなぐことで地域課題の解決に端緒を付け、収益にも寄与した。その他にも四国の一部地域の郵便局では、配達社員による水道検針業務を受託している。

〝つなぐ〟力と拠点価値で発展へ

 公共サービス等の業務を郵便局が手数料をいただき受託することは、地域貢献事業を継続的に行え、集客にもつながる。課題解決のための事業の企画立案、地域の企業団体や人の〝つなぎ役〟は郵便局長が適役であり、使命でもある。
 そのような中で、全国に先駆けて行政相談委員と郵便局長の意見交換会が宇和島市で開催された。発端は、長谷川淳二総務大臣政務官が総務省の「郵便局を活用した地方活性化方策検討PT」の一員で、所管される行政相談委員制度と郵便局との連携に可能性を見いだされたことにあると聞いている。
 郵便局の意見を聴取するために、政務官の地元である宇和島市と包括連携協定でさまざまな取り組みを行っている宇和海局長を指名された。
 会議では、行政相談委員が受けている地域課題を、郵便局のリソースを活用して解決が図れないか意見が交わされたようで、政府や自治体も地域拠点が減少する中で、郵便局の活用を積極的に考えていただいている。郵便局としても要望に対応できる体制を構築していかなければならない。

 ――山間地なども多い四国では、買い物サービスも課題としてありそうです。
 宮川副会長 過去に四国で買い物サービスを行っていた地域はあるが、結果的にうまくいかなかった。
 お客さま宅にカタログを配布し、注文書をもとに郵便局と提携するスーパーマーケットから、ゆうパックでお届けする仕組みだったが、実際に食品等を手に取ってリアルに選べないことがお客さまに受け入れられなかったためか、継続できなかった。
 例えば、山間部も走っている移動スーパーの車に、決まった日時に郵便局の駐車場に来てもらい、地域の方々に事前に日時を周知することで、商品を手に取って買い物ができる「駐車場スペース貸し」の方が、お客さまに喜ばれると思う。
 局内スペースにおいて乾物を中心としたインスタント食品等の店頭販売は、各地の郵便局で多くの要望があるが、実際に実現できた局は全国的には少ない。
 棚卸し等の課題もあるかもしれないが、集客力を高めるためだけではなく、地域の住民の方々が求めているサービスの提供という意味でも重要だと思う。

 ――三事業だけではない収益の積み重ねが必要といえそうですね。
 宮川副会長 全国的に郵便局への来客数が非常に落ち込んでいる。集客を高める施策が必要だ。大幅な収益の上乗せはできなくても、農家の農産物の販売や、手作り小物の販売など〝場所貸しビジネス〟の充実を図るべき。
 一方で、収益を上げる施策として日本郵便初の加工食品ビジネスとして実現できた千葉県睦沢町の「ほしいも事業」を郵便局ネットワークの強固な販売網を活用して成功させることが最も大事だ。今後の郵便局発の新規ビジネスの道を開く鍵になる。
 地方創生の新規ビジネスに向けて、会社も、全特も、知恵を絞ってさまざま取り組んでいるが、日本郵便の中に地方創生推進部や改革推進部、サステナビリティ推進室等がそれぞれ頑張って、日本郵政の中にも「ローカル共創イニシアティブ」と題するプロジェクトが動いている。
 それらが個々の動きにとどまるのではなく、施策を新規ビジネスにつなげていくためには、それらがまとまっていく必要性を感じている。

 ――改正郵政民営化法見直しの動きも出てきましたが、郵政事業の根幹である郵便局を残すにはどうすべきでしょうか。
 宮川副会長 郵政民営化から17年が経過し、当初、国民の皆さまが思い描いていたバラ色の郵便局像と現実とでは大きな隔たりがあると感じられているので、改正郵政民営化法の見直しの動きが出ているのだと思う。
 現在の郵政民営化法では、日本郵政がゆうちょ銀行とかんぽ生命の株式を100%売却した後は、日本郵政と金融2社は全く資本関係のない別会社になる。
 私は、郵便・物流、ゆうちょ・かんぽの金融サービスは今後も郵便局において一体的に提供されるべきと考えており、日本郵政グループの経営基盤確立のためにも、グループの一体経営を制度的に担保していいただくよう、法律改正などを含めた広い視野での検討をお願いしたいと思っている。