インタビュー JPロジスティクス 長谷川実社長

2023.06.14

 日本郵便の成長への架け橋を握る物流事業。ゆうパックを含む物流事業を、さらにテコ入れするため、生産の上流から最後のお届けまで他企業が入らずともグループ内で完結できる体制整備に向けて、4月に改編されたのがJPロジスティクス㈱だ。中国支社長も歴任した長谷川実社長は「JPと名乗るからには公共的な仕事も重要な役目。局長の皆さんに地域内企業や自治体の方を紹介いただけると大変にありがたい」と話す。

荷物で勝つ!グループ完結の一括物流へ

 ――4月から社名を一新され、一括物流事業を展開されていますが、その背景やメリットをお教えください。
 長谷川社長 2015(平成27)年に日本郵便が買収した時に豪トール社が持っていた日本国内のエクスプレス事業(貨物輸送サービス)を展開する会社が、前身のトールエクスプレスジャパン㈱。
 18年にフォワーディング事業(貿易事務や輸送手配業務)とコントラクト・ロジスティクス事業(倉庫運営・物流コンサルティング等の業務)を日本でも展開するためにJPトールロジスティクス㈱を発足させ、その際にトールエクスプレスジャパンをJPトールロジスティクスの子会社としたが、それぞれの事業は別会社で展開していた。
 これら三事業を一括物流サービスとして一社で提供するために、新会社として4月に改編されたのがJPロジスティクス㈱。物流戦略全般の企画立案は親会社であるJPロジスティクスグループ㈱が受け持つが、私は両社長を務める。
 日本郵便は個人宅に郵便やゆうパック等をお届けする〝toC〟中心で、物流の上流部分は他の物流企業が担うケースが多かった。
 しかし、ゆうパックを増やすためにも上流の生産から最終のお届けまで、日本郵便グループとしてトータルで力を入れなければならない。まとめてシナジー効果を出すために、名称変更とともにロゴもJPを強調し、機能を統合したのがJPロジスティクスだ。

 ――輸送ニーズはどう変化していますか。倉庫がポイントになりそうですが。
 長谷川社長 当社は海外からの輸出入、国内輸送、国内での倉庫業務を受け持ち、工場間や倉庫間の長距離輸送も行う〝BtoB〟(企業間物流)を基本とする。ゆうパック配送による消費者へのお届け以外の全てが仕事だ。
 最近は首都圏だと圏央道等に大きな倉庫が多くできてきたが、大規模倉庫から通販やドラッグストア等に配送する仕事が多い。
 当社も埼玉県幸手市と神奈川県相模原市、京都府久御山町等に倉庫を持っている。日本郵便は物流ソリューションセンターで保管する倉庫業務も行う。上流を押さえるために倉庫は非常に重要だ。

 ――JP楽天ロジスティクス㈱様との差別化、すみ分け、協力はありますか。近物レックス㈱様と業務提携されましたが。
 長谷川社長 JP楽天ロジスティクスは主に楽天市場の受注商品を倉庫で保管して仕分けし、ゆうパックで配送するが、当社がやっているようなBtoBの貨物輸送はそれほどやっていない。倉庫業務での競合もあるが、当社はBtoBがメインターゲットであり、グループ内でのすみ分けはできている。
 近物レックスとの提携は、東京から太平洋側以西が強い当社と、東日本に強い近物レックスの力を掛け合わせれば全国ネットワークを網羅でき、共同で営業をかけて販路も広げられると考えた。

 ――郵便局長の方にアピールされたいことはありますか。
 長谷川社長 局長の皆さんは各地域でいろいろな生産者の方や自治体とつながっている。例えば、「輸送はどの企業を使っていますか?」とお声掛けいただき、紹介いただけると大変にありがたい。
 当社の特徴は他の物流企業に比べて非常に公共性が高いこと。東京都品川区とは防災協定を結んだ。区が備蓄する水や毛布、食料品の賞味期限等の管理を平時から継続しなければ災害時に対応できなくなるため、当社が管理している。品川区内には当社のターミナルがあってやりやすいが、他地域でも横展開したい。
 自治体はさまざまな物流業務を担い、作成したパンフレットを自ら送付する場合もあるが、人員も厳しくなる中、物流業務を丸ごと当社に委託していただければ、自治体の本来業務に専念できる。JPと名乗る我々として公共的な仕事も重要な役目と思っている。