坂東秀紀 北海道支社長(執行役員) 質で勝負!湯便局の可能性を広く深く
広大な北海道の天地――。それぞれの地域にどのような課題があるのかを探った上で郵便局にできることを考えようとの思いで、道内20エリアを訪問した北海道支社の坂東秀紀支社長は今、さまざまな仕組みづくりに力を注ぐ。
質で勝負!湯便局の可能性を広く深く
坂東支社長は「エリマネ局は〝お客さまとのつながりが深い窓口〟。局長の皆さんは首長の方はじめ、地域の方々と密接につながっていることに感謝し、頼りにもしている」と話す。北海道の美味を届けるゆうパックについて「総合的な価値からみれば、むしろ安いと思っていただける商品の売り方が求められる。地元に密着した郵便局だからこそ、それができるはず」と期待を寄せる。
エリマネ局の〝地域密着力〟に感謝
――改めてご抱負をお願いいたします。
坂東支社長 社員を幸せに、会社も元気になるために、地域のために何ができるか、可能性を見極めたいと思い、就任後半年かけて全道20エリアを回ってきた。個々の郵便局はそこに住まわれるお客さまや地域の状況によって個性がさまざまで魅力も異なることを現場を見ることで改めて認識できた。それぞれが未来に向かって可能性を広げられるよう支社として頑張りたい。
実は私は札幌生まれ。大学時代から日本郵便に入社後40年間は東京暮らしで久しぶりに地元に戻ったが、基本的な環境は今も変わっていなかった。函館をはじめ、港から発展した町や、内陸は広大な平野が広がる。映画祭やアニメ漫画の聖地、歴史を感じる鉄道の風景等々、千差万別でフレーム切手も素晴らしいものが多く発行され、地元の皆さまに喜んでいただいている。
――地方創生に向けて郵便局ネットワークをどのように活用されたいとお考えですか。
坂東支社長 首長の方々と対面する際には必ず事務受託の話をさせていただいている。直近では余市町のマイナンバーカード交付事務を町内数局でスタートできたが、地方公共団体の事務受託はどんどんと広げたい。金融も郵便・物流、物販等はもちろんで、それ以外にも各地域にはさまざまなニーズがあるため、掘り起こし、郵便局がお手伝いすることで地域を元気にできる仕組みを着々とつくっていきたい。
本社でチャネル企画部の役員を3年間務めたほか、10年ほど前には全国の物流拠点となる地域区分局の再編にも携わらせていただいたことで、簡易局も含めて郵便局ネットワークの全体像を深く知ることができた。
全体から考えるとエリマネ局は「お客さまとのつながりが深い窓口」だ。人口が極端に減り、地公体がコンパクトシティ化を考えている地域では郵便局の上流への移転は必要かもしれないが、効率性という尺度だけで見て局数を減らせばよいとする議論はおかしい。実はそこにマーケットがあるためだ。ゆうパック取扱所や郵便切手類等販売所の委託契約を結むぶセイコーマート様は人口の非常に少ない場所でも生鮮食品も含めてその地域に必要な商材を見極め、生活インフラとして店舗を構えていらっしゃる。そうした企業理念は参考にすべきだと思う。北海――上士幌町のライドシェアのような取り組みのご展望は。 上士幌町ライドシェアの実証事業はいったん終了したが、評価は高かった。今後、実装に向けて、費用負担の方法を決めなければならないことは課題の一つ。日本郵便は軽四輪車で郵便やゆうパックの配送時に人を乗せることで原価が安く持続可能性がある。町も他の交通手段を使うよりコスト的なメリットはあったと聞く。竹中貢町長は意欲的にドローン等々の活用も視野に入れていらっしゃる。さまざまなものを組み合わせながら交通弱者の方々のお役に立てる形を議論し、つくっていきたい。
――北海道といえば美味がたくさんありますが、発送代が距離で割高になる課題にどう挑まれますか。
坂東支社長 郵便局はきめ細かなネットワークが生産者の近くにある。消費者の方々が召し上がった時に今までにない体験と思い出が残る心に響く付加価値の情報を含めて提供し、皆を幸せにするのが使命だ。安い商品を大量に供給することではない。郵便局が日頃築いた人間関係のある農家の方の生産物一つ一つをしっかりとした箱に詰めてチルドゆうパックで贈ると、消費者の方々の反応が違うとも聞いている。
工夫を凝らし、試行を重ねて成功事例が出てくれば他でも展開すべき。高品質のゆうパックネットワークでお届けすることは総合的な価値からみれば、むしろ安いと思っていただける商品の売り方が求められる。地元に密着した郵便局があるからそれができるはずだ。海外の日本食ブームはまだまだ伸びる。いろいろなニーズは日本全国にあり、グローバルにもある。
――全国初の「ご当地レターパック」は素晴らしいアイデアでしたね。
坂東支社長 「東川町リビングラボ」(地域の連携協定等に基づき、日本郵便・東川町・慶応大学SFC研究所の3者協働で活動)による共創が実現できた素晴らしい写真付きの〝ご当地レターパック〟は実現に至るまでは大変だったが、大好評。受取人の方に喜ばれ、差出人側も何らかのPRができる。東川町に本社から出向している社員の梶恵理さんはじめ、関係者の皆さんの熱意がまとまって形になった。第2弾、3弾を他の地公体や企業に活用してもらうにはスムーズにできる仕組みづくりが必要で、今、関係者間で詰めている。
――現場の郵便局長の方々に何か伝えたいことはありますか。
坂東支社長どの局長の皆さんも地元をよく把握されていることに感心する。郵便局は一つの事業所のため、その運営が第一の責任だが、地元の地公体の首長をはじめ、実に地域の方々と密接につながっている。エリマネ局長の皆さんが地域を把握した上でそれぞれの個性を生かして行動してくれていることに感謝し、頼りにもしている。局内の無人販売も他の場所に置くより郵便局内に置くことで料金の回収率が高いと生産者の方々に言われるが、郵便局もお客さまに喜ばれ、場所代もいただける。そうした小さなウィンウィンウィンも積み重ね、広大な北海道に幸せ感を発信し、広げていきたい。