インタビュー 全国郵便局長会 石田尚史理事

2023.02.21

 全国郵便局長会(末武晃会長)の石田尚史理事(北陸地方会会長/大谷)は「袖振り合うも多生の縁」と語っている。郵便局の「人と人をつなぐ役目」の思いを伺った。

多様な個性で多生の縁を

 ――北陸での台風や大雪の被害に心よりお見舞い申し上げます。
 石田理事 全国的に大雨や大雪による被害が相次いでいるが、地元の石川県能登地方では群発地震も続き、災害が頻発している。昨年8月に石川県小松市を襲った豪雨では、中海局が床上180㌢まで浸水した。南加賀地区会(新谷真志会長/川北)の的確な判断により人的被害はなかったが、避難が少しでも遅れていたら大変な事態となった。
 近隣の地区会からの応援に加え、全特、本社・支社からもさまざまな支援をいただき、感謝は尽きない。災害対応のため派遣された移動郵便車が引き上げる際には、地元住民の皆さんが手を振って見送られたそうだ。地域の方々も郵便局の存在がいかに大事か痛感されたようだ。
 北陸では行政区単位で防災士会が結成されているが、その中で局長たちは重要ポストに就き、組織の中枢で防災訓練や講習会等を運営しており、その存在は大きい。

 ――北陸では自治体との連携で全国に先駆けた施策を展開されています。
 石田理事 石川県では加賀市(6局)と七尾市(3局)の行政事務を包括受託。マイナンバーカードの普及率が全国トップクラスの加賀市では、昨年9月から総務省の「郵便局におけるマイナンバーカード利活用推進事業」が実施された。全特としてもマイナカード普及促進に寄与すべく取り組んでいるが、カードの申請支援業務を全国で初めて自治体から受託したのは小松市。郵便局で行える各種証明書の代理人請求についても、全国に先駆け七尾市でスタートした。
 コロナ以降、北陸全体で移住者が増えつつあるが、石川県では全局長が「移住サポーター」として移住・定住希望者の生活全般をサポートしており、移住先の情報がない方からも郵便局に行けば安心して相談に乗ってもらえると大きな信頼を得ている。
 自治体との関係では、来春の北陸新幹線金沢~敦賀間の延伸に向け、福井県敦賀市とあわら市は広告付き年賀はがきを発行。郵政150年を記念し「みんなの郵便局」を開催した富山県魚津市とも結び付きが強く、昨年10月の「魚津産業フェア」では、市長の要請で子どもたちに郵便局の仕事を体験してもらうイベントが実施された。自治体との連携強化は更に必要だと思う。

 ――全特で担当されている専門委員会は。
 石田理事 「置局・局舎」と「集配統合マネジメント」を担当している。置局・局舎は、民営化後、「公募制度」により自営局の道ができたので、それに則って局舎改善を進めていくことが重要だ。
 また、私自身は集配特定局長からスタートしたこともあり、地域にお届けする集配業務に携われることは大きな使命と価値があると実感している。集配マネジメント統合は、要員やシステム等、課題は山ほどあるが、局長たちがやりがいを持って頑張ってもらえるよう、会社とも交渉しながら改善させていきたい。

 ――人材育成について思われることは。
 石田理事 局長たちは多彩なスキルを持っており、経歴もさまざま。常に私は「個性や特技を生かした局長になってほしい」と話している。スポーツでも伝統芸能でも、この分野のことなら、あの局長に聞けば大丈夫という局長会のネットワークが郵便局の魅力の一つだ。
 郵政事業の信頼は一朝一夕でできたものではない。先人が150年以上こつこつと築いてきたものだ。「袖振り合うも多生の縁」との言葉があるが、自治体や地域の方々とのご縁を大事にし、歴史に学び、先人たちの〝局長魂〟を受け継いで、信頼の輪をさらに広げていきたい。