インタビュー 全国郵便局長会 三浦寿明理事(東北地方会会長/仙台岡田)
個々の郵便局の可能性を引き出し、ニーズに応じた新しい形が模索されている。全国郵便局長会(末武晃会長)の三浦寿明理事(東北地方会会長/仙台岡田)は現場目線に即した柔軟で地域に喜ばれるネットワークの構築を目指している。
地元農業も支える郵便局を
――専門委員会のご担当とともに「農業と郵便局との共創」に対するお考えを。
三浦理事 「防災PT座長」を務め、「基本問題専門委員会」「置局・局舎専門委員会」「将来構想PT」を担当している。
東北は言わずと知れた米どころ。リンゴやサクランボ、桃をはじめとするフルーツの産地だ。就農者と消費者をつなぐ「ぽすちょこ便」やJR東日本との連携による東北新幹線を活用した配送などにも取り組んでいる。しかし、一次産業、特に農業は就労人口の減少が著しく、5年間で2割減少しているとのデータすらある。
私が住む宮城県も現在10あるJAを2027(令和9)年秋までに一つのJAに合併する方針が示されている。
就労人口減少に伴う組合員の減少だけでなく、長期に及んだ低金利政策の影響もあるが、輸入食材のみに頼るのではなく、「食の安全」を支える上で郵便局ネットワークの役割を現状に照らし合わせると、さまざまな可能性が見えてくる。JAが果たす機能を補完し、郵便局が担うことも十分検討に値する。
――今後の郵便局ネットワークは各局らしさが求められるといわれていますが、繁忙局ではない局で窓口を少し早めに閉じて収益を得られるような取り組みはありますか。
三浦理事 まずは公的なサービスを郵便局が地域の方々に提供できる体制づくりが最優先。次の段階として世界に誇れるネットワークを「地域を支える基盤」とするには、地域の課題にどう対応できるのかが重要だ。
その点で、東北地方は一次産業を取り巻く現状に対峙するアイデアが必要。就労人口が減り、営農を諦めようとしていた果物農家や野菜農家へ収穫の手伝い等を地区会として参加し、発送につなげている例もある。「農業との共存」はこれからの大きなテーマだ。
朝に収穫し、午前中に発送作業まで終えて、午後は窓口業務を行う形は十分に考えられるサイクルだと思う。
――東日本大震災から間もなく丸14年。防災と郵便局の観点で、防災士の資格を生かすために何をすべきとお考えですか。
三浦理事 今年は阪神・淡路大震災からも30年を迎えた。その後も新潟県中越地震、東日本大震災、熊本地震、北海道胆振東部地震、昨年元日に発生した能登半島地震と巨大地震が次々に発生している。地震の活動期に入ったといわれる現在、全国を網羅する郵便局ネットワークに防災士の資格を持つ郵便局長がいることは、防災・減災の視点からも大変貴重なこと。地域の防災訓練にスタッフとして参加している局長も多くいる。地区内の保育所等で長年未就学児の避難訓練をサポートしている地区会もある。
いつ大地震が襲ってくるか分からない今だからこそ、常に最新の知識を身に着け、それぞれの地域の特性に合わせた活動を行うべきだろう。
――郵政関連法見直しの何に期待をされますか。
三浦理事 2005(平成17)年8月の「郵政解散」から20年。あの時、盛んに叫ばれていた「郵便局の未来像」は一体どうなったのか。少子高齢化、人口の東京への一極集中、労働人口の減少等、社会構造の急速な変化に対応できていないのは明らかだ。
東北地方は、人口のピークが全国より15年早く訪れている。地域産業だけでなく、特に地方行政に対して郵便局ネットワークが果たせる役割は大きくなってきた。公的基盤として郵便局を位置付ける見直しを強く期待している。