インタビュー 原田昌範 山口県立総合医療センターへき地医療支援センター長
――郵便局でのオンライン診療に何を期待されますか。
原田センター長 20年以上へき地医療に取り組んできたが、どのへき地に行っても郵便局があり、しかも比較的アクセスしやすい場所にあった。二つ目は郵便局の局長や社員の皆さんは地域の方をよく知っていて安心感がある。三つ目として郵便局は金融決済ができる。四つ目は薬等も配送できる。へき地では通信回線が届いていない家庭も多いが、五つ目は郵便局には通信回線がある。
医療も含む多機能な郵便局を
――直近の動きを教えてください。
原田センター長 昨年12月、厚生労働省の2024(令和6)年度「郵便局でのオンライン診療に係る補助金の活用」の補正予算として、郵便局でのオンライン診療後の薬配送代が加わった。24年度から新設された同予算は全国で初めて実装に踏み切った周南市が高瀬局でのオンライン診療に活用されている。
例えば、山口県柳井市の平郡島では以前、診療所で診察後に薬をもらう院内処方だったが、総務省の平郡局での実証事業でオンライン診療後の院外処方となり、患者の方が配送料を負担することになったが、補正予算で解決できる。
直近では、国や医師会、自治医科大学、公益社団法人地域医療振興協会等が郵便局と連携し、全国各地で「郵便局のオンライン診療」のニーズ調査を行う方向に進みそうだ。
どの地域にどんな郵便局があるのか、その地域の診療所や巡回診療の有無も含めた医療提供体制などを調べ、ニーズを探る。
全国展開に向けて、一つのパターンだけではその形がベストな局と、そうではない局が出てくるため、平郡局では3パターンが検証された。「コミュニティ・ハブ」づくりを目指し、今後、全国に広げるために日本郵政グループにも「オンライン診療専門PT」等の設置を期待している。
――課題と将来展望を。
原田センター長 ご高齢の方はデジタルに疎い場合も多く、慣れるのは難しいため、厚労省は看護師がそばにいるオンライン診療を推奨してきた。郵便局も看護師の方が駐在できれば理想的だが、現実的にそれはできない地域がほとんどだ。
しかし、郵便局には地域を思う〝人〟がいてくださる。将来的には、郵便局のみまもりサービス、食材や薬等いわゆる生活に最低限必要な物資やサービスが集約される〝拠点〟として医療も提供できる多機能な形が望まれていると思う。