第14回年賀状思い出大賞

2022.12.04

佳作1 松尾恵美子 様
「私のたからもの」
 それは、二〇一七年の年賀状である。当時、四歳だった孫が初めて自分で書いたもの。
 あけましてありがとうございます
 またあそぼうね
 曲がりくねった文字がぶつかり合っていたが、手にした時、一瞬頭の芯に光の矢を感じた。
 あけましてありがとう! 生かされてありがとう! 健康でありがとう! 温かい心に触れてありがとう! お世話になってありがとう! 平和で毎日笑って過ごせる幸せをありがとう!
 たくさんたくさんの幸せのありがとうが、心の中を駆け巡った。

 生きていればまた遊べるよ。友と語り合えるよ。本も読める。旅行にも行けるよ。その時思った。元気でいるだけで、心配かけないだけで、これだけで十分に役に立っていると。
 孫からの年賀状には、その後に新年を何回迎えても、いつも新しい「ありがとう」と、感謝の気持ちを新鮮にしてくれる

 

佳作2 浅野 憲治 様
「五十歳差の不思議な交流」
 六十歳の誕生日の年の年賀状の中に、見慣れない年賀状が一枚紛れ込んでいました。幼い文字で「あけましておめでとうございます」と書かれ、学区の小学校名とクラス、差出人の名前が書かれていました。これが、四年三組の久美子ちゃんとの最初の出会いでありました。私は、丁寧に毛筆で返事の年賀はがきを学校宛てに書き送りました。
 その年の夏には暑中見舞いが、やはり五年三組になった久美子ちゃんから届きました。同じように、返事を学校宛てに書き送りました。

 学校のはがきの書き方での実習は、これでお仕舞いになるのが一般的ですが、私と久美子ちゃんとの交流はその後も続いています。大学への入学も、成人式も、会社員になっても、年賀状はもちろん、時々のお祝いのメッセージの交換は途絶えることはありません。
 年賀状が結びつけたご縁です。

 

佳作3 もえ 様
「宛名のない贈り物」
 二人目を妊娠中のお正月の事です。郵便受けに、宛名の書かれていない年賀状が一枚入っていました。不思議に思い裏を見ると、小学生になる長女の名が書かれています。年末に「私にもちょうだい」と、未使用の年賀はがきの束から、一枚持っていった事を思い出しました。
 きっと自分で郵便受けに入れたんだ……。私は呆れながら「ちゃんと宛名を書かなくちゃ駄目だよ」と言いました。すると娘は、あっけらかんと答えました。「だって、ママのお腹の赤ちゃん、まだ名前がないでしょう?」私はてっきり、宛名を書くのが面倒になったのだとばかり思っていたので、その理由に驚きました。

 「赤ちゃん、年賀状をもらった事がないから、喜ぶかなと思って!」すると「あっ!動いた」話が聞こえたかのように、赤ちゃんがお腹を蹴りました。「ほらね、きっと嬉しいんだよ」と娘が笑いました。
 娘の、お姉ちゃんとしての初めての贈り物。今でもその宛名のない年賀状は、家族の宝物です。

 

佳作4 さいが みと 様
「まゆちゃんからのねんがじょう」
 ことしのおしょうがつに、はじめて、だいすきなまゆちゃんからねんがじょうがとどきました。
とってもうれしかったです。
 まゆちゃんはわたしのひとつうえで、 やさしくてかわいいおともだちです。

 ねんがじょうって、どういうものかわからなかったけど、ままに、あたらしいとしがはじまるときに、ことしもなかよくしてねってつたえるおてがみのようなものだとおしえてもらいました。
 まゆちゃんとはあんまりあえないけど、ずっとおともだちでいたいから、らいねんのおしょうがつに、ねんがじょうをかこうとおもいます。