新春ビック座談会 〝現場の力〟をグループ経営に 法改正と新しい郵便局の創出を
「新春ビック座談会」の出席者は、長谷川英晴参議院議員(前総務大臣政務官)、いんどう周作参議院議員、勝又一明全国郵便局長会会長の3名。森山真全特専務理事が司会を務め、最も注目される「郵政民営化法等の一部を改正する法律案」をはじめ、注目すべき項目への想いを聞いていただいた。共通する点は郵便局という国民共有の財産を生かす道筋の明確化だ。長谷川議員は「〝現場の意見〟に真摯に耳を傾けて実行することで必ずより良い事業になるし、結果的に地域や国を守る郵政事業となっていく」と指摘。いんどう議員は「人口減少が進む中で〝郵便局を拠点〟とするビジネスモデルはやがて世界の手本になる」と展望した。勝又会長は「地方創生がビジネスとして成り立つよう明確な方針を次期中計で打ち出していただけたら現場もやる気になれる」などを語った。
どこまでも地域と共に
――森山専務 昨年の通常国会で提出を果たされた「郵政民営化法等の一部を改正する法律案」の今後の行方を多くの関係者が見守っています。
勝又会長 郵便局が今後、地公体事務受託等々を広げながら各地域の守り手となることは国からの視点でも重要な役目だと思う。見直し法案はそれに向けて郵便局の公共性が担保される内容で全特としてもベストと考えている。
民営化19年近くが経過する中、ゆうちょ銀行、かんぽ生命は株式の上場ということもあって遠心力が増した感があり、郵政事業の一体感が希薄化していると感じる。郵便局は、かんぽ生命、ゆうちょ銀行の代理店であるが、かんぽ生命とゆうちょ銀行では、郵便局を活用した営業の取組みに温度差を感じる。もう少し郵便局との一体的な営業スタイルが構築できないものかとの問題意識も残る。郵政民営化法等の一部を改正する法律案は継続審議となっているが、郵政事業の一体感を保つためにも3社体制の検討はぜひ先生方のお力で前に進めていただきたい。
長谷川議員 日本郵政、日本郵便は法律に基づき設置された特殊会社。通常の民間企業と異なるのが郵便局だ。日本郵政グループの経営陣の方針によるところも大きいと思うが、そうした中でも郵便局ができることを明確に示し、郵政事業・地域・国を守るため、この法案は成立させなければならない。地方で、地方公共団体の支所や小・中学校、金融機関、商店、ガソリンスタンド、さらにJAまでもが無くなっていく中で、郵便局を地域の拠点にすることで地域にお住まいの方々の生活を守る仕組みの構築が法律を改正する根幹にある。
いんどう議員 これまで郵便局は三事業プラスαで地域のことを住民のためにボランティア的に取組みを行ってきたが、三事業と同程度に郵便局の柱となる事業にする仕組みにしなければ、地域の持続可能性を高めて強い日本を創ることにつながらない。三事業の経営が厳しいから郵便局をなくせばよいという単純な議論ではなく、我が国の最大の課題、超少子高齢化による地域のさまざまな課題に対応するために郵便局を拠点として活用する方向にシフトさせなければならない。それが今回の法律改正である。
特に、生産年齢人口減少、高齢化が進む我が国で、地域の暮らしを守るサービスを支えるために郵便局を活かす形づくりは現在の郵政民営化法の枠組みのままでは難しい。
――森山専務 郵便局長は前島密翁の郵便創業の時代から常に地域と共に生きてきたと思います。「地域貢献、地方創生と郵便局」のお考えをお聞かせいただけますか。
長谷川議員 デジタル化が進む中だからこそ必ず人の手を介するサービスが必要であり、そのための拠点も必要になる。誰が担うかといえば、現在地域に残されている最後の拠点である郵便局しかないだろう。しかし、全てを公的支援に頼るというようなことでは将来は拓けない。
それぞれの地域によって異なる課題に対し、郵便局をどう活用すればよいのか、郵便局だけでできないことはどことどことで一緒にやればできるのかを考えなければいけない。その際にはユニバーサルサービスを担う郵便局を中心に据える形が最適であり次世代につないでいける。
いんどう議員 地方創生も郵便局の公共性の概念が根底にあると思うが、地域のニーズに合わせ、取り組む中身は、地域ごとに郵便局ごとに違う形であるはずである。当然、広域で取り組むべきサービスもあるだろう。ただ、郵便局と言っても大小さまざまであり、離島や中山間地等には1人局や2人局もある。
郵便局に、地域の暮らしを守るいろいろなサービス拠点の代替を担わせようとしても人的リソースが足りないところも出てくる。そのため、地域のさまざまなサービスに対する支援措置を行っている関係省庁等や地公体と連携を強化し、人的リソースや予算措置も含めて、政府一体となってパッケージ対応を行う仕組みを将来的に整備していく必要があると考える。
我が国の高齢化は先進国の中でも異次元スピードで進んでいる。郵便局を拠点とする地域の暮らしを守るモデルはやがてこれから我が国と同じような人口構造になっていくであろう他国の手本にもなっていくと思う。
勝又会長 近年は地域で郵便局長の顔が見えにくくなってきたことが少し心配だ。もう少し〝地域の輪〟に入り込み、地域の中で存在感を出していける局長になる努力を重ね、地域に必要とされる郵便局長を目指してもらいたい。また、会社と共に地公体事務の受託やオンライン診療等も郵便局が今後、なすべき使命として取り組んでいきたい。
防災は全国的な課題だが、例えば、北海道と沖縄では取り組むべき防災対策も異なってくる。12地方会それぞれがしっかりと地域性に合致した防災に取り組んでいくことも重要だ。新任局長にはまず防災士資格の取得を目指してほしい。
――森山専務 人口減少、高齢化社会が進む中で、自宅から近いところに郵便局という地域の拠点があることは、地域にお住まいの方々の安心感につながると思います。郵便局長は地域のお客さまの状況を把握しています。そうした〝現場力〟についてどうお考えですか。
勝又会長 昨夏に能登半島地震の被災地である奥能登地域を視察し、現地の局長の皆さんから話を聞いたが、地域のお客さまから『早く郵便局を再開して』と懇願する声が止まなかったとの話を聞いて胸にこみあげるものがあった。どのような地域、どのような状況にあってもやはり郵便局は地域の拠点となるべきと思う。各地域のニーズに合致した郵便局とすることが求められている。
ただし、自分から地域と交わり、何をすべきかを考える〝自立性〟も持たなければ〝現場力〟は生きてこない。その意味でも会員の声が上がりにくい組織風土ではなく、地域に寄り添う組織を作りたい。末武晃前会長時代から取り組む「風通しの良い組織」づくりに引き続き取り組んでいきたい。
長谷川議員 それぞれの地域の事情は本社や支社よりも現場で働く局長や社員の皆さんの方がよく分かっている。各々地域の視点に立って課題やニーズに対し、金融代理店機能を持つ郵便局や配達ネットワークをどう使っていくべきなのか、〝現場の意見〟に真摯に耳を傾けて実行することで必ずより良い形になるし、結果的に地域や国を守る郵政事業になっていく。
例えばカタログ物販もまず地域の思いがあって、郵便局の窓口や配達担当者が取り組んだ結果、地場産業の発展に寄与することができた。「つぶらなカボス」など好事例は、すでに数多くあると思う。
いんどう議員 国交省やデジタル庁、総務省時代にまち・ひと・しごとやデジタル田園都市等々に関わらせていただいてきたが、地域のニーズが十分反映されていないプロジェクトも多かったと感じている。補助金は1年限りであり、大企業やコンサル会社が自分たちのサービス品を地域で売り込む実証的な事業の色彩もあり、事業が翌年度以降は継続できないなどの問題点があった。
何が足りないかといえば、地域の方々がプロジェクトにニーズの掘り起こしの段階から関わることだ。局長の皆さんは地域と接点があり、ニーズを知っている。その〝地域力〟をグループ経営に活かしていただきたい。
――森山専務理事 会社は今年、2026(令和8)~28年間の次期中期経営計画を発表するとのことですが、どのような期待をされますか。
長谷川議員 郵便局ごとに置かれている地域の事情は異なる。実際にやってみなければ判断が難しいものが山積しているが、現在はチャレンジしきれていないのが実態だと感じている。地域愛とチャレンジ精神が旺盛な現場の考えを本社・支社の保身や過度のネガティブチェックで最初から切り捨てていれば何も始まらない。
次期中計では、単年度の成果にとらわれることなく、複数年チャレンジしていくことを入れ込んでいただきたい。やらないまま、人口減少がこうだから、来客者が減少したから何割局を減らさなければいけないというのはナンセンス。現状を把握し、新しい郵便局の形と仕組みを創出すべきだ。
いんどう議員 近年は郵便局が、三事業を維持するために四苦八苦して、地域との関わりが減っているのではないかと懸念している。
郵便局長が地域の人々とさまざまな知恵を出し合い、デジタルやAI技術も活用しながら郵便局を地域の拠点化することで地方でも若い人が安心して仕事や子育てできる生活基盤を作り、さらにはさまざまなサービスの提供を受けられるという付加価値を高めていただきたい。地域のことに取り組むことがこれからの我が国、地域にお住まいの方々を守る新しい郵便局の創出となる。本年はその元年としたい。
勝又会長 会長就任以来、会員の皆さんに自ら考え、取り組むという〝自立性〟と〝地域貢献〟の精神を呼び掛けてきた。ただ、会社と現場の想いがあまりに乖離していては結局何をやっても無駄になってしまう。民間企業でありながらも、公共性も併せ持つ郵便局の姿を描いていただきたい。
地公体事務受託等をはじめ地域貢献、地方創生が郵便局のビジネスとして成り立つようにするという明確な郵便局の将来像を打ち出していただけたら現場のモチベーションも上がる。社員が希望を持って仕事に取り組める明るい未来がイメージできるような次期中計を期待したい。