マイナ申請支援、地公体内全局で
地方公共団体の「マイナンバーカード申請支援」等を地公体内の全郵便局で受託し、交付率向上に大きく貢献する形がじわじわと広がっている。関東支社(丸山元彦支社長)と群馬県高崎市は市内全57局で2023(令和5)年からスタート。更新や再発行も事務も追加されながら、2年半で市内全局の取扱件数は約1万5000件に達した。埼玉県さいたま市も市内全99局で23年3月から受託。先行する中国支社(砂孝治支社長)は22年9月から岡山県真庭市との包括連携協定を機に市内全21局で受託している。申請支援業務は25年5月末時点で全国146団体から1586局が受託し、直近は近畿支社(三苫倫理支社長)管内の大阪府岸和田市が7月から市内全27局に委託した(写真上)。
交付率向上へ、電子証明書等も
市内全局に至った背景には、地元局長と地公体との継続的な協議等によるつながりの深化と現場を支える支社の強力なバックアップと交渉力が共通している。一方、需要が高まる「マイナカード電子証明書の更新手続き」も25年5月末時点で39団体から110局が受託し、着実に広がっている。郵便局にマイナ関連事務を委託する地公体は総務省の補助金を100%活用でき、改めて郵便局の公的な役割が見直されている。
続・続 郵便局ネットワークの将来像㊻
高崎市のマイナンバーカード交付率は2022(令和4)年10月時点は42.9%と、当時の全国平均51.1%を8.2ポイント下回っていた。市と関東支社がマイナカード申請支援の委託契約を締結し、市内全全57局に委託し、申請業務を開始したのは23年1月。2カ月半を経た同年4月に市の交付率は63.2%まで急上昇し、全国平均差も3.8ポイントまで縮まった。さらに同年10月時点の交付率は72.3%と全国差は0.2ポイントまで追い付いた。地公体内全局だけあって、効果も明らかだ。同市は申請のみならず、24年4月から更新、今年4月から再発行も郵便局に委託した。
高崎市の窓口では「市はマイナカード申請手続きを受け付けておりませんのでお近くの郵便局に行かれてください。無料で写真も撮って提出いただけますよ」と案内している。マイナに関する業務は〝ほぼ丸ごと〟郵便局にお任せだ。
住民が局で記す確認書は、局からJ-LIS(カード発行機関)に直接送付。交付のみを市が受け付ける。マイナカード関連事務を市内全46局で先駆的に取り組み、交通系ICカードもひも付ける実証を行った前橋市では、局窓口で受け付けた書類は市に送付する。交付までのやり方は地公体によってさまざまだ。
地公体さま 郵便局へのマイナ関連委託
ウィンウィンなら やったもの勝ち(価値)!
群馬県西部地区連絡会(小越康統括局長/富岡七日市)地公体担当の小林賢一局長(写真上、高崎駅前通)は「高崎市は以前、交付率が平均を下回っていた。22年に市の方針が変わり、スムーズとはいえなかった交渉がギアチェンジ。『もう全局でやりましょう!』と急展開になったが、市は議会の了承を得なければならず、支社も現場も本社に『これはできませんか?』とお伺いを立てながらの紆余曲折があった。開始に至れたのは市内局長皆の理解と関東支社の積極的な働きかけのおかげ」と感謝の思いで振り返る。
また、「四半期に1度の手数料精算時には、市に新たな提案できる良い機会となり、地公体事務受託の仕事も幅が広がった。エリマネ局長は市や市議会とつながる重要な入り口になれる。次の段階は支社の方が市に交渉される中で、隣で見守っていた。しかし、入り口の役目も重要。市の方から『ちょっとあの件、教えてもらっていい?』と電話もよくいただく。一歩一歩人脈を積み上げている」と意欲的だ。
高崎市市民課は「カード申請はスマホでもできるが、高齢者は苦手な方も多い。高崎市は本庁と支所の計7カ所。郵便局であれば57カ所の拠点がある。市民の満足度も高く、評判が良い」と話す。
さいたま市も市内全99局で申請支援を行っているが、交渉には埼玉県中部地区連絡会(林将史統括局長/上尾平方)の地公体担当の新井敏史局長(大宮浅間)を中心に尽力した。さいたま市デジタル改革推進部は「郵便局は市の10倍の拠点を持つ。混雑を抑え〝誰も取り残さない社会〟をつくれる」と期待する。
岸和田市は7月から全27局が申請・更新支援を開始した。4月に市長に就任した佐野英利市長の理解が追い風にもなったようだ。大阪府南部地区連絡会(久保博史統括局長/和泉池上)の地公体担当の余保一久局長(岸和田本町)は「市と市内局とのつながり、信頼関係を積み上げてきた結果だと思う」と語る。森振一郎副統括局長(岸和田岡山)は「市民の方々と一緒に書類を作り上げていく仕事は局社員の得意技」と強調する。
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一方、「マイナンバーカード電子証明書の更新手続き」の受託も22年5月に九州支社(平山泰豊支社長)管内の宮崎県都城市がイオンモール都城駅前内局(樋口剛局長)に委託して以降、徐々に広がり、今年3月には山口県防府市が中国支社の山口県周西地区連絡会(福田信一郎統括局長/徳山櫛浜)内の10局に委託。1地公体から10局受託は最多となった。
7月には東北支社(斎藤貴支社長)管内のイオンモール名取内局(伍十川幹夫局長)など4局が名取市から受託し、3月に開始した角田市内7局の受託ともに宮城県南部地区連絡会(大沼芳則統括局長/柴田)を中心とする努力が実った。
東京支社(高橋文昭支社長)は23年から品川区の荏原局(田原浩司局長)でスタートし、今年4月から足立区内単マネ局3局でも開始した。それ以外も各地で人通りの多い郵便局を中心に電子証明書関連事務受託も軒並み進んでいる。
郵便局にマイナカード関連事務を委託する地公体は、総務省自治行政局の「マイナンバーカード交付事務費補助金」を100%活用でき、地公体から郵便局の委託費も満額補助される。地域性にもよるが、地公体も、郵便局もウィンウィンだとすると〝やったもの勝ち(価値)?〟なのかもしれない。