ニューレジリエンスフォーラム第5次提言 郵便局の役割も期待

2025.08.02

 命と生活を守る「ニューレジリエンスフォーラム」(三村明夫会長/日本製鉄名誉会長)は6月13日、石破茂総理大臣に「第5次提言」を提出した。提言には、石破内閣が公約に掲げた防災庁に「社会現象の相転移」(地震や豪雨により電力や道路等のインフラが低下することで全く別の性質の被害を生む現象)を事前に探り出し、備えることで被害を最小限に抑える事前防災を実現するための組織が求められる」と明記。記者会見では、コミュニティーが縮小する地域社会において〝共助〟の観点から郵便局の役割を重要視する指摘もあった。同フォーラムには全国郵便局長会の前末武晃会長を引き継ぐ形で勝又一明会長が発起人として名を連ねている。(写真は石破総理への要望書提出。右から3人目が勝又全特会長)

〝共助〟を強く!地域社会整備へ

 提言の柱は①事前防災と発災後の復旧・復興に特化した機能を持つ「防災復興庁」の制度設計②防災庁には防災大学校を創設し、所管・運用とともに全国の小中高校での防災教育の充実・強化③公助に依存しない「共助態勢の強化」を災害現場の環境改善の主軸とし、平時から世代を超えた「地域社会の環境整備と官民連携」――の3本。
 記者会見冒頭、三村会長は「いよいよ本命の防災庁の機能をしっかりと発揮する5次提言を出させていただいた」と強調。
 松本尚企画委員長(日本医科大学特任教授/衆議院議員)は「日本はこれまで自助と公助は国として力を入れてこられたが、共助の部分が脆弱。地域社会がどんどん先細って、地域コミュニティー、助け合うベースとなる組織が非常に弱くなっている。防災庁はつくり直す役目を担っていただきたい。災害時に活躍される医療関係者、建築、運輸、郵便局、その他のさまざまな団体を民間レベルで活用できる方策も考えていただきたい」などと説明した。

記者会見の模様(左から、松本委員長、三村会長、河田共同代表、濱口事務局長)

【質疑応答】
 ――総理からはどのような話があったのですか。
 三村会長 非常に前向きに受け取っていただいた。日本では共助が不足している。どうすれば、例えばイタリア並みに強化すればよいのだろうか、と真摯に考えていらっしゃった。

 ――相転移にどう対応されようとしていますか。
 河田惠昭共同代表 私は防災庁の設置準備アドバイザーの一人として1月から8回のワーキング検討会に参加したが、災害時は平均的な被害が出るのではなく、相転移が起きて結点の地域に被害が集中する。
 そうした「社会現象の相転移」を事前に探り出し、備えることで被害を最小限に抑える「事前防災を実現」する役目が防災庁には求められる。我々は事前に予測し、対策を練る「本気の事前防災」ができ得る体制を目指している。
 各省庁で何が相転移になるかを見つけていただかなければいけない。つまり、各省庁にこれまで以上の人と資金をつけないとできない。防災庁ができたら、既存の省庁の人員が減るのではないのか、との心配があるが、そうではなく、研究を通して何が相転移になるかを見つけていただくのは各省庁でやっていただかなければならない。
 今までは起こってからどうしようとやっていたので、全部間に合わなかった。石破総理はそのことをよくご理解いただいている。ただし、時間がかかり、すぐにはできない。人材をつくっていかなければならない。初動で起きるさまざまなことに対応できる日本をつくらなければいけない。

 ――防災大学校とはどのようなイメージですか。
 濱口和久事務局長 自衛隊、防衛省は防衛大学校、気象庁は気象大学校、海上保安庁が海上保安大学校等は基本的には高校を卒業し、一般大学と同じように文科省管轄外の大学として大学卒業資格を受けることのできるよう、防災大学校も大学卒業資格が取れ、かつ教育機関プラス自治体と自治体等職員研修やシンクタンク機能を持てる形が望ましい。海外からの研修生を受け入れることができる日本の総合的な防災の研究者に教育する組織を考えている。

 ――共助には消防団の管轄する日本消防協会や女性防火クラブ、少年消防クラブ等々さまざま団体がありますが、連携は。
 松本委員長 官民連携は全国にさまざまな団体があるが、市町村によって協定を結んでいる団体の数、種類はバラバラだ。どこか司令塔を担って進めていかなければ各市町村の預かりのようになる。どの地域に行っても住んでも同じくらいのレベルの防災対策ができるようにしなければいけない。その音頭取りを防災庁がやるべきと我々は提案している。

 ――事前防災の部分でも地域防災が非常に重要と思うのですが、郵便局に期待することはありますか。(郵湧新報)
 松本委員長 我々も郵便局の方々とヒアリングを行ってきた。エリマネ局はコンビニよりも幅広く各地域に存在している。ある程度コミュニティーの中で備蓄や、防災士資格を持ちながら地域内の防災教育等々をやっておられる。郵便局長や社員の皆さんにさらに意識に防災意識を高めていただければ、共助という三つ目の柱に強く結び付く。期待しつつ、三つ目の柱を書かせていただいた。