簡易保険の地方別普及度 一橋大学 米山高生名誉教授⑥

2025.03.03

 簡易保険局が発行した絵葉書には、簡易保険の状況を契約者に知らしめようといったものが多い。第3回目(10月号)で紹介した絵葉書は、加入者の職業別内訳を明らかにするものであり、第5回目(12月号)で紹介した絵葉書は、簡保資金の運用について説明するものであった。(写真は簡易保険の地方ごとの契約件数(人口1000人当たり)を示した絵葉書)

簡易保険事業開始から来年110年

 民間生保の絵葉書は、壮麗なる本社の写真や創業者の写真などが掲載されるものが多く、経営業績について一枚の絵葉書で説明するような図案はあまり見られない。
 つまり本社の威容や創業者の信用などを前面に押し出して、各会社への信頼を生み出すという意図が(特に中小民保にあっては)垣間見られる。
 これに対して、簡易保険は国営ということで、すでに契約者からの信頼は得ていたので、主たる契約者である「庶民」に対して、保険について「啓蒙」するような絵葉書が目立ったものと解釈できる。
 ところで、簡易保険は1916(大正5)年10月に事業を開始したので、来年で110年を迎える。
 開始後、順調に契約業績を伸ばしたが、普及の程度には地方的な違いが見られた。掲載の絵葉書から、それを読み取ることができる。
 この絵葉書は、簡易保険創始10周年を記念として発行されたものであり、1926(大正15)年7月時点での地方ごとの簡易保険について、人口1000人当たりの契約件数を示したものである。
 日露戦争後にロシアから受け継いだ租借地の「関東州」は別とすれば、福井県、石川県、富山県という北陸地方で簡保が顕著に普及しているのが目立つ。
 ちなみに北陸地方は戦後においても「保険好きな地方」であることが知られている。
 このほか、東京府と京都府という大都市に普及している。
他方、普及が低位の県もあるが、この10年間の普及度の相違が何によってもたらされたのかについては、極めて興味のある課題である。