生きる!地域と 熊本県御船町 局長退職後も郵便局一体で町おこし
全国どの地域も人口減少で悩みを抱える中、局長退職後も郵便局と一体で町おこしに奮闘しているのが、熊本県中部地区連絡会(宮下民也主幹統括局長/熊本西原)の七滝局(岡本悠太局長)で昨年3月まで局長を務めた楠田優子さん。御船町で展開している地域貢献について、御船上野局の髙松克有局長と共に話を伺った。
役場とつなぐ「お伺い行政」件数増
熊本県のほぼ中心に位置する御船町は中山間地が7割を占める。2016(平成28)年の熊本地震以降、観光客や人口も激減し、耕作放棄地や空き家は増える一方。
〝これはまずい〟と翌17年に元婦人部団体で発足したのが「七滝元気組(平野立枝代表)」(写真下)。楠田さんは副代表を務め、地域清掃や祭りの継承などに取り組んできた。
「5月の滝祭に向けて、皆が集える『コミュニティカフェ』を建設しようと、昨年12月からクラウドファンディングも始めた。5年後、10年後の地域を想像して、〝ポツンと一軒家〟になる前に、やるべきことをやらないと」と危機感を募らせる。
楠田さんは(一社)みふね中山間地域定住支援センターの会長も務め、地域おこし協力隊とも連携し、移住・定住促進や空き家対策などにも取り組んできた。
七滝局と御船上野局では、昨年1月からタブレット端末による「お伺い行政」を行い、住民の方々のお困りごとを町役場につないでいる。
髙松局長は「件数も着実に増加している。高齢の方は役場に行くとなると、タクシーやバスで乗り継ぐなど一日がかり。身近な郵便局で、今後は各種申請業務やオンライン診療もできれば」と意欲を示す。
御船町総務課の井上幸司主査は「ご相談はマイナンバーカード関連やLINE登録などが多い。髙松局長、岡本局長からもアドバイスをいただきながら周知を図っており、利用件数も増えてきた。地域密着の郵便局は大変心強い」と期待を寄せる。
御船上野局内のキオスク端末(左)と飲食料品等の販売模様(右)
町の観光協会理事でもある髙松局長は(一社)熊本県MTB(マウンテンバイク)リーグを自ら設立し、熊本長嶺局の髙野欽司局長と共に役員を務める。22年からは町内の吉無田高原で国際大会を開催し、「道路も整備いただいた。今後は食事や宿泊先の業者とも連携を進めたい」と展望を語る。
楠田さんは「局長時代から地域のことを常に考えていたので、今も変わらないし、かえって忙しいくらい。わが地域を元気にしようと活動していると、他の地域にも波動が広がる」と笑顔を見せる。
2月3日には、御船町社会福祉協議会(藤木正幸会長)に年賀寄付金配分事業として、車両購入の寄付金が西村龍治副統括局長(砥川)から贈呈された。
〝地域を元気に〟と各機関を巻き込んで魅力を発信している郵便局の取り組みは、あの地、この地で元気も発信している。