矛盾からの脱却を ジャーナリスト 大久保冨士鷹
2024.08.06
日本郵政と日本郵便の統合を柱とする郵政民営化改正法案は、6月23日に閉会した通常国会への提出が見送られた。見送りの一因として、金融業界や自民党の金融族が改正に反対の姿勢を明らかにしたことも挙げられる。
臨時国会への時間はあまり残されていない
金融業界は日本郵政の金融2社株式の完全売却を支持するが、本音は金融2社への「上乗せ規制の維持」、政府による金融2社への間接出資の継続に期待しており、法案への反対は「論理的には矛盾している」との指摘も出ている。
金融業界は、政府から出資を受けている日本郵政が金融2社の株式を保有し続けることは、金融2社の販売する保険や投資信託などの金融商品が政府から保証されていると消費者に期待されるため、公平な競争環境ではないとして、民営化に賛成の立場を一貫して取り続けてきた。
しかし、郵政族議員の1人は「金融業界にとっての最大の懸念は上乗せ規制が撤廃された後で、金融2社が傘下に別の民間金融事業者を抱えることだ」と明かす。この懸念は、民営化が進んで日本郵政が金融2社株を完全売却すれば、現実に起こりうる。
それならば、上乗せ規制を残すためには、金融業界は民営化改正法案に反対しないのが筋なはずだ。金融2社が間接的に政府から出資を受けている限りは、上乗せ規制の撤廃へのハードルは高いままだからだ。
改正法案は、今秋開会の臨時国会への提出に向けて、自民党内で具体的な条文作成作業に入る見通しだ。最大の議論の的となった金融2社株式の完全売却は「できるだけ早期に」という現行法の記述を削除することで結論を得たが、上乗せ規制の撤廃は紆余曲折を経ることになりそうだ。
しかし、臨時国会に提出するための時間はあまり残されていない。