社説 〝防〟と〝安〟は郵便局で

2024.02.07

 元日の静かな夕暮れ、東京でもかすかに長い揺れを感じたが、能登半島を中心に大惨事になっていたとは思ってもみなかった。他人事ではなく、改めて防災の重要性が身に染みた年明けだった。沖縄・九州離島サミットでも気象台の方が「近年は過去の状況が通じなくなった」と意味深い言葉を発言されていた。自然災害が少なかった地域でも油断はできず、どこに住んでいようとも突然災害に見舞われる危険性があるということだ。ましてや、すでに予測される南海トラフには誰もが自分事として真摯に向き合うべきだろう。防ぐ備えこそ大切だ。(写真は石川県七尾市の南大吞局)

「過去の状況が通じなくなった」

 郵便局の中には、災害時の緊急避難所や、日頃から備蓄局として活躍する局もあるが、1万3000人近くの郵便局長の方々が防災士資格を取得していることは、郵便局の価値を大きく高めている。これまでも、避難訓練や防災マップづくりで地域と連携してこられたが、今後はさらに地域に密着した活動が期待されると思う。
 防災だけでなく、防犯にも局長は大きく携わる。年々手口が巧妙化し、だまされる高齢の方も多い特殊詐欺を郵便局が未然に防いだ実績が認められ、警察側から連携が求められるケースも出ている。
 防災、防犯、さらには防病の拠点として郵便局スペースを活用した「まちの保健室」も喜ばれ、また慢性疾患の方向けの「オンライン診療」も期待されている。全国初の実証中だった石川県七尾市の南大吞局(池岡直樹局長)は今回、被災されて休止中だが、周辺局含めて復旧・復興を心から願っている。
 「防」という字の先に垣間見えるのは、安心や安全の「安」という字。人口減少の中での人生100年時代。郵便局は地域の安全な暮らしを支える〝人〟がいる拠点であり続けてほしい。