インタビュー 全国郵便局長会 宇野憲二理事(北陸地方会会長/三方)

2024.03.30

 全国郵便局長会(末武晃会長)の宇野憲二理事(北陸地方会会長/三方)は「令和6年能登半島地震」から約3カ月が経過した今、地域を守る防災への思いなどを語っている。

防災士の定期研修と郵便局に災害物資の備蓄を

 ――「令和6年能登半島地震」は大変な事態でらっしゃいますね。
 宇野理事 地震発生後すぐに石川県能登地区会の坂口高雅会長(町野)の携帯に電話したが、つながらず心配でたまらなかった。2日後の3日にようやくつながり、「局は大丈夫だったが、たくさんの家が倒壊した」と大変な事態になっていることを聞いた。
 その坂口局長が2月8日、北陸支社(加納聡支社長)主催の正副統括局長会議に出席し、「震災後、初めてスーツを着ました。ありがとうございました」と支援に対し、御礼を述べられた姿を見て感動した。
 北陸地方会としても発災直後に、被害が少なかった福井県や富山県でペットボトルの水を大量に購入し、石川県の押水・中島・金丸の3局にブルーシートやポリタンクの支援物資とともに集積した。
 また、発電機や軽トラックを「冬場は使わないから」と提供してくれた局長がおり、3局から七尾市内の局まで運び、そこから奥能登の輪島市の局にリレーするように支援物資を運搬した。
 全国郵便局長会(末武晃会長)からも多くの支援物資が届けられたが、車が思うように通れず、なかなか一度に持っていけないもどかしさがあった。
 道路は穴が空いてでこぼこがあり、応急処置されていても、怖くて走りにくく、石川県警も「不要不急の人は行かないように」と交通を規制していた。
 珠洲市や輪島市は海底が高さ4㍍ほど隆起し、港が使えず海上からの物資補給は困難で、陸上での物資の輸送も半島の地形の影響で通れないなど、支援の難しさが今回の特徴だ。

 ――断水が復旧のネックになっているようですが。
 宇野理事 1月末に輪島市に支援に行ったが、ひどい事態で、一番は断水だった。飲み水は全特はじめ、いろいろな方面から贈っていただいたが、ペットボトルの飲み水をトイレに使うわけにもいかず、苦労されていた。お風呂も入れない状態だった。停電は輪島市でも一部復旧した地域があったが、完全に復旧していなかった。
 郵便局は普通の家屋より頑丈なため地震による倒壊はなかったが、珠洲市の白丸局は津波で備品が全て流された。
 奥能登の局長たちは発災1カ月過ぎても自宅に電気が通らない状況の中で頑張っていた。
 2月10日に発生した震度4の余震で倒れてきたブロック塀に挟まれて、地元の方がお亡くなりになる事故も発生した。ボランティアに行くにも、いつ余震が発生するか分からない状況なのでヘルメットが必須だ。
 一方、七尾市内は奥能登に比べると家屋の倒壊は少なかったが、断水はまだ続いている(取材時)。

 ――今後の対応は何が必要と思われますか。
 宇野理事 豪雨や豪雪はある程度予測できるが、地震は予測不可能。地震リスクは全国どこにもあり、水や食料の備蓄体制を整備しなければいけない。個々の郵便局にも一定程度、備蓄ができるとよい。
 ただ、有料にしてしまうと、田舎にはどこも公民館があるため、自治体は郵便局に備蓄しなくても公民館に備蓄すればよいと考えると思う。
 このため、無料で空きスペースを提供し、郵便局に行けば水と食料があるという安心を地域住民の方々に提供することが、他のビジネスにもつながっていく。
 防災グッズやAED設置は全特の地域貢献・地方創生専門委員会で話が出ている。私も防災士で資格取得の際にAEDの使い方を習ったが、いざとなった時に滞りなくできるかは不安。ペーパードライバーにならないために定期的な研修が必要だ。

 ――郵政民営化法見直しについては。
 宇野理事 一番優先していただきたいことは3社体制の構築。日本郵政グループとして一体的に経営することができれば、郵便局ネットワークを維持することができる。法律での担保を願っている。