池田ゆうちょ銀行社長 ゆうちょシンポジウム
ゆうちょ銀行の池田憲人社長は昨年11月30日に開催された「ゆうちょシンポジウム」で、5月に発表される中期経営計画見直しの前哨戦として「リアルとデジタルの融合を図る新リテールモデル」への転換戦略に強い意志を表明した。「ゆうちょ通帳アプリ」の拡大により「金融窓口の充実」を図る。新NISA制度開始に向けて「投資信託紹介局もつみたてNISAを提案できる仕組みを構築した。全国約2万拠点でNISA口座拡大を目指す」と語った。地域の眠れる企業を掘り起こし、日本経済を底上げするゆうちょΣ(総和)ビジネスも着々と共創を進展。全国津々浦々の事業者情報の収集・蓄積・活用を行うシステムとして、「Σビジネスプラットフォームシステム」の開発も発表した。
地域創生Σビジネスも着々 中計見直し前哨戦
ゆうちょ銀行の三つのエンジン(収益基盤)のうち、第1のエンジン「リテールビジネス」の主軸は「ゆうちょ通帳アプリ」の拡大。アプリによるプッシュ通知等も活用し、リアルチャネルとも接触を増やす「次世代リテールバンキングモデル」を目指していく。
池田社長は「ゆうちょ通帳アプリ登録数は昨年10月末時点で900万口座を突破。中計見直しでは、目標1000万口座の次なる目標を掲げる。相乗効果で紙の通帳ビジネスの代替になり、窓口業務はその意味で充実が図れる。アプリ内の広告を通じて日本郵政グループ各社や他社含め、ニーズに合った商品を案内する。投資信託は紹介局にあるタブレットを活用し、直営店や投信取扱局にリモート接続することで、つみたてNISAのお申込みができる。リアルチャネルの充実を図り、郵便局と当行窓口での獲得推進の障害はできるだけ削除する」と強調した。
また、第3のエンジン「Σビジネス」について、「単に個々の企業の支援のみでなく、ゆうちょらしく、地域に根差す隠れた事業を掘り起こす。ジェイ・ウィル・グループと事業再生投資会社を立ち上げる準備を進めているほか、商社との協業準備も進めている。ベンチャー投資は、東海東京証券株式会社主催の『オープンイノベーションカレッジ』に加入し、産官学連携の地域のスタートアップ・エコシステム(業界同士や製品、サービス、プロダクト等が連携し、大きな利益構造を構成)を推進。投資先発掘のために津々浦々の企業者情報の収集や蓄積、活用する『Σビジネスプラットフォームシステム』の開発も決めた」と明かした。
ゆうちょ銀行地域金融法人部の阿知波久未マネジャー は「お客さまとの会話で得られた情報は貴重。Σビジネスプラットフォームシステムには簡単に記録できる音声入力機能も導入。ビジネスチャンス創出と地域活性化に貢献する」と説明。すでに13エリア本部約800人のうち、約50人が地域情報掘り起こしに奔走中で、将来は郵便局の情報収集も検討する。
「オープンイノベーションカレッジ」を主催する東海東京証券の北川尚子社長(写真上)は「地域のスタートアップ・エコシステムを強固なものに進化させるために、ゆうちょ銀行の全国津々浦々のネットワークや、安定した財務基盤は非常に心強い」と展望。
また、中堅・中小企業の事業再生に実績のあるSTATION Ai㈱の佐橋宏隆社長(写真上)は「名古屋の舞鶴公園隣接地に国内最大のスタートアップ支援施設が今年10月開業することを目掛け、ソフトバンク100%子会社のSTATION Aiを設立した。すでに支援したスタートアップ企業は282社。5年後に1000社を目指す」と意欲を示した。