インタビュー 久田雅嗣 沖縄支社長

2022.02.14

 今年、沖縄は本土復帰50年を迎える。沖縄支社(久田雅嗣支社長)は各自治体や企業等との連携施策を推進し、SDGs(持続可能な開発目標)達成への取り組みや食の支援活動などを多彩に展開。来年度には、沖縄県民の幸せを支援する「ビジョン」の発信も予定している。久田支社長は「我々の最大の目標は『お客さまの幸せ』。そのためには社員自身が幸せで、社員の家族も幸せであることが大事だ。社員が幸せで安心して働ける会社にしていくことは、支社の使命であり、責任だ」と強調する。

「挑戦と変革」の文化を醸成へ

 ――就任から約10カ月を振り返られての感想をお願いします。
 久田支社長 本社の国際事業部から、初めて沖縄に来た。所は違えど、お客さまのために尽くしていく思いは同じだ。就任時には、私が心に刻んでいる「判断基準」の話をさせていただいた。①お客さまの幸せのためなのか②社員の幸せのためなのか③地域に貢献できるものなのか④会社の利益になるものなのか⑤コンプライアンスを順守しているか。この五つを支社の皆さんも同じ思いで取り組んでいただいている。
 着任以来、支社の役割とは一体何だろうと考えてきた。本社は全国一律に物事を進めざるを得ないこともあり、画一的な指示内容となる。その中で地域や局、社員の実情を勘案し、いかにローカライズして現実に沿った活動ができ、課題を改善できるか真剣に考え、サポート、コーチをしていくところに、支社の存在意義があると思う。

 ――沖縄支社で新たに始められたことを教えていただけますか。
 久田支社長 一つは会議の改革。以前は一方的な説明や報告が多く見受けられた。会議は議論をしてコンセンサス(合意)を得て、意思決定をする場だ。単に集まって用意された資料を読み上げて満足するのでなく、一つ一つ議論をして決定する方向に変えてきた。
会議後には必ず全員にアンケートを実施し、感想や意見を吸い上げている。無記名なので忖度なく自由に物が言える。アンケート結果はグラフ化してすぐにフィードバック。会議以外でも何か行えばアンケートを取り、潜在的なニーズ・ウォンツをくみ取って共有化を図り、問題をどう解決すべきか、迅速な対応を心掛けている。

お客さまの幸せは 社員の幸せから

 ――社員の方々へのサポート体制は。
 久田支社長 我々の最大の目標は「お客さまの幸せ」。そのためには社員自身が幸せで社員の家族も幸せであることが大事だ。会社に不平・不満を持っている人が、お客さまの幸せに通じるサービスを提供できるはずがない。社員が幸せで安心して働ける会社にしていくことは支社の使命であり、責任だと思う。
 沖縄支社では、社員のスキルや能力、局状に応じた支援を行う「段階別課題解決支援」を昨年夏頃から導入した。各局専属の担当スタッフは「ビズメンター」と呼ばれ、個人・個局に沿って段階別に課題解決へのコーチングを行っている。結果をつついて〝なぜできなかった〟と責め立てても仕方ない。どうしたらできるようになるかが重要だ。社員の「カルテ」のようなものを作り、ここを改善して伸ばそうという段階別の支援を行っている。

 ――地域振興・活性化にも積極的ですね。
 久田支社長 沖縄特産のタンカンやパイナップル、マンゴーは中国支社(茂木孝之支社長)、四国支社(安達章支社長)等とも連携している。また、風化したサンゴで焙煎したコーヒーのテトラパックが入った「35COFFEEレター」を県内の局で販売し、売り上げの3.5%はベビーサンゴの移植活動に使われるSDGs(持続可能な開発目標)の取り組みとして販売者とコラボし、好評だった。
 それぞれの島や局によって、お客さま自体も異なる。どの局で何の商品が売れているのか、各種データを集めて分析していくと、お客さまのニーズやターゲットが見えてくる。行き当たりばったりというのが一番まずい。
 先頃、試験的に「お客さま満足アンケート」を始めた。窓口での接客やゆうパックの配達後、すぐにアンケート用紙をお渡しし、QRコードでも回答できるようにした。お客さまのニーズ・ウォンツを直接拾え、社員が仕事に取り組む姿勢も変わってきた。

 ――自治体や企業と連携した食の支援にも取り組まれています。
 久田支社長 沖縄の貧困は深刻だ。子どもの貧困率は全国平均の約2倍。沖縄県施策の「生活困窮家庭食支援連携体制構築事業」を応援するため、琉球新報社、おとなワンサード、日本郵便の3社コンソーシアムで受託し、「おきなわこども未来ランチサポート」という困窮家庭に食品配送を行う事業に取り組んでいる。支社の空きスペースに提携企業の方々が毎週持ち寄られるパンや農作物、カップ麺などを管理・仕分けし、「子ども食堂」等に配付。離島にはゆうパックで送っている。
 「フードドライブ」は2019(令和元)年7月から、包括連携協定の取り組みの一つとしてスタートした。現時点で11市町村90局にボックスを設置し地域の皆さまに食品等を寄贈いただき、子ども食堂などに提供している。県と協力して、新型コロナに感染した自宅療養者への食料配送支援も始まった。沖縄の豊かな未来のため、県民の皆さまの一助になればという思いだ。

 ――SDGsの活動も盛んですね。
 久田支社長 昨年7月、大変うれしいことに沖縄島北部、西表島、奄美大島、徳之島が世界自然遺産に登録された。19年5月には「世界自然遺産推進共同企業体」を日本トランスオーシャン航空、NTTドコモ、沖縄美ら島財団、NPO法人どうぶつたちの病院沖縄と共同で発足した。
 当初は加入企業32社で始まったが、現在では49社に拡大し、自然環境の保全・保護に向けて県や環境省など関係機関と連携して各種施策を推進してきた。絶滅危惧種のヤンバルクイナの交通事故(ロードキル)防止啓発キャンペーンや、海岸を清掃する「ビーチクリーン」のほか、世界遺産の首里城をデザインした年賀はがき販売なども行っている。
 医療従事者支援では、シトラス色のリボンなどを身に着ける「シトラスリボンプロジェクト」に全県で取り組み、医師や看護師に宛てた〝感謝カード〟を子どもたちに書いてもらい、お届けした。また、県と県看護協会や自治体と連携し、局内スペースで看護師と健康相談ができる「まちの保健室」を、県の国保ヘルスアップ支援事業の一環として、名護市とうるま市で行ってきた(コロナ禍で一時休止中)。

 ――社員育成に向けた工夫や研修などは。
 久田支社長 各局を回る際は可能な限り社員の方々に時間を割いていただいて座談会を開いており、支社内でも「ワイワイミーティング」と呼ぶ座談会を行っている。毎回数人に仕事や生活で感じていることを伺う中、さまざまな課題が見えてきた。1時間の予定だが、毎回あっという間に過ぎてしまう。今後も継続していきたい。
 また「褒め活」といって、郵便局社員同士で良いと思ったことを〝嬉シ~サ~!カード〟と呼ぶカードに書いて渡し、たたえ合う取り組みも好評だ。支社内のみだが、社員で褒める機会を増やすために、四半期ごとに、部内の担当社員の中で最も部内での貢献度が高く、最も輝き活躍していた社員を「MVP」、最も縁の下の力持ち(アシスト)として頑張った人には「MAP」を社員投票で選び、表彰の機会を設けている。
 研修の場として、県経営者協会主催の「かりゆし塾」への派遣や女性管理者・役職者対象の研修、他社とコラボしたキャリア支援研修、県主催の女性活躍推進事業「てぃるる塾」へも派遣している。
社員の皆が明るくなり、成長できる取り組みを今後も続けていく。大切な社員一人一人の幸せなくして、お客さまの幸せはない。支社の「挑戦と変革」に向け、社員全員が何事も諦めずに挑戦し、変革していく文化を醸成できるよう、全力で取り組んでいきたい。