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(1面から続く)
貨客混載実証の課題解決を現場から提案
全世代に優しいまちづくりの肝は「交通利便」
全世界共有ウーバーアプリで郵便局が予約代行
2025(令和7)年3月から6月まで加賀市で実証が行われた市・Uber・日本郵便の「公共ライドシェアドライバーによる貨客混載実証事業」は、人を乗せるライドシェアドライバーの手すき時間にゆうパック配送も依頼するものだが、実証で見えてきた最たる課題は配達先が不在の場合、ゆうパックを持ち戻らなければならず、荷物を載せたままでは人を乗せるスペースもなく時間ロスで収支が合わないことだった。しかし、「実証で終わらせない」との信念のもと、新谷統括局長と細野副統括局長は加賀市とUberにこれまで提案してきた内容をもとに国土交通省の「公共ライドシェア協議会」に会社とともに解決策を掛け合っている。
温泉街で有名な加賀市は24年3月の北陸新幹線延伸に伴いインバウント中心とする観光客増や、地方の共通課題となっている「交通弱者対策」としてウーバーアプリから簡単に配車と事前決済が可能で一般の人が2種免許を得て自家用車に人を乗せる「公共ライドシェア」をスタートした。「公共ライドシェア」は、大都市圏中心に導入された「自家用車活用事業(日本版ライドシェア)」とは異なり、地方公共団体やNPOが主体となって交通空白地住民や観光客の移動を支える制度。加賀市は、市内約1000カ所を乗降ポイントとして巡回する「乗合タクシー」と「公共ライドシェア」で交通利便を図っていた。
しかし、両方とも住民の認知度が低かったことから、新谷統括局長や細野副統括局長は24年夏頃から加賀市に「郵便局も貢献しよう」と①アプリの使い方サポートやライドシェア予約代行②手すき時間に局長や社員がドライバーに③ドライバーがゆうパックも運ぶ貨客混載ーーを提案。24年11月に行われた全国郵便局長会の将来構想PTで細野局長が「交通弱者対策」として発表した「公共ライドシェア」は同PT沖縄代表の松川真奈美局長(小禄金城)の「ほっと安心、ゆいまーる相談(よろず生活相談サポート)」とともに最優秀賞に選ばれ、本社でプレゼンテーションも行われた。会社からは特に貨客混載が評価され、市とUberと日本郵便で25年3月から「公共ライドシェアドライバーによる貨客混載実証事業」が実施される運びに急展開した。
しかし、4カ月間の実証で見えてきた課題は、多くの実証事業と同様に収支面が最たるものだった。
細野局長は「市の公共ライドシェアドライバーがゆうパック一つ運んで得られる手数料は平均80円、配達完了できて178円、不在の場合の報酬はゼロ。配達できる個数が3時間で20個程度のため、割に合わなかった。不在で荷物を持ち戻る状態では人も乗せられない。そこで持ち戻り率を減らす改善策として『宅配ボックス』や『OITETTE』の設置、住宅密集地や団地など移動距離が少ない地域を配達区域に選定することで時間当たりの配達可能個数を増やせばドライバーも時給も2600円程を確保できると提案させていただいた」と話す。
実装に向けて市とUber、郵便局の3者が協議した結果、局窓口での公共ライドシャアと乗合タクシー両アプリサポートや周知、世界共通のウーバーアプリのシステムが搭載されたタブレットを市から貸与される受付代行、乗合タクシー定期券販売、市内全局の前を乗合タクシー乗降ポイントにするアイデアは実現可能と認められ、6月をめどに実証第2弾が開始される運びとなった。しかし、局長や社員によるドライバーは勤務中の他事業実施としての保険や給与、勤務時間管理などの壁があり、当面は時間外で個別に協力する「副業申請」の形が認められた格好だ。こちらの実証は別枠で26年内を目指し、検討が進められている。
昨年12月8日、Uber Technologiesのダラ・コスロシャヒCEOとUber Japanの山中志郎代表が加賀市の山田利明市長を表敬訪問。ダラCEOは「日本でもシニア世代向けの新機能ウーバーシニアやシンプルモードの提供も開始した。超高齢社会の対応を戦略的に展開し、公共ライドシェアに26年も注力したい」と明確な意志を表明したもようだ。Uberは加賀市のみならず京都府京丹後市、大分県別府市、長野県野沢温泉村などでも多言語アプリで外国人にも使い勝手のよい「公共ライドシェア」を実践している。
現在、加賀市の公共ライドシェアは毎月200件前後利用されており、半数近くが外国人だが、増加傾向にある。7時から23時まで(金土のみ翌2時まで)サービスを提供し、乗合タクシーの時間外は特に利用が増えるようだ。登録ドライバー数は30人超だが、仮にゆうパックの貨客混載が実装として成り立てばドライバーにも日本郵便にとってもウインウインの仕組みが構築できる。
細野副統括局長は「学校も統廃合が進む中、通学が不便な学生さんも多い。共働き世帯が増える中、塾などの往復にも活用できる乗合タクシーと公共ライドシェアの予約代行も郵便局でできるよう取り組んでいる」と語る。
新谷統括局長は「高齢者の方やデジタルが苦手の方のサポートを提供し、乗降ポイントの待合場所にも郵便局がなることでついでにあらゆる行政手続きや健康相談、オンライン診療などもできればご高齢の方だけでなく若い世代にも優しいまちづくりに貢献できる。交通手段を同時並行で進め、その仕組みを作ることではじめて郵便局は本格的なコミュニティハブになれるのではないだろうか。また、本来は局長や社員も地域の方を乗せることができれば何かあった時に郵便局に来ていただいて解決できる安心感もあると思う。課題は山積するが、何としても実装につなげていけるように一つ一つの課題を割り出し、解決しながら少しずつ前に進んでいる」と強調する。