日本郵政 定時株主総会
日本郵政グループは6月19~21日、上場後8回目となる定時株主総会を東京都港区のザ・プリンスパークタワー東京で開催した。日本郵政の株主数(2023〈令和5〉年3月末時点)は約74万人、発行済株式総数は約37億株。引き続き、個人投資家保有割合が高い。
総会では、株主からの「郵便局の統廃合は地方の過疎化を進めてしまうのではないか」との事前質問に対し、増田寬也社長が「郵便局ネットワークはグループの貴重な経営資源。存在意義を高める取り組みを徹底的に行いたい。2040年以降の本格的な人口減少社会を見据え、求められる郵便局の在り方を導き出すために自治体や地域の皆さまの意見を伺い、丁寧な議論を行いたい」と将来像を探る方針が打ち出された。(※株主総会記事における役員の方の役職は株主総会時点のものになります)
求められる郵便局像の議論開始へ
中期経営計画「JPビジョン2025」の中間点となる2023(令和5)年度は過去2年間を振り返り、一部見直しも検討される。6月21日に行われた日本郵政第18回定時株主総会では、リアルとデジタルを融合する「みらいの郵便局」を改めて放映。
DX推進は、郵便や物販、金融、保険の登録ユーザーIDと各社公式アプリを段階的に一体化する「JPプラットフォームアプリ」を早急に構築する。
物流分野の共創は、佐川急便の小型荷物を日本郵便の配達網で届ける形をヤマト運輸とも開始。JP楽天ロジスティクスの物流拠点運営を楽天から受託する商品配送や、子会社を再編したJPロジスティクスをグループの国内企業間物流事業の中核とするなどの状況が報告された。
銀行業は、700万超に口座登録される「ゆうちょ通帳アプリ」にQRコードによる税公金支払い等、スマホやATMで入出金機能を追加。家計簿アプリ「ゆうちょレコ」では、複数金融機関の支出・収入を一覧で確認できる。生命保険業は学資保険「はじめのかんぽ」を改定し、保険料戻り率100%を超えるプランも用意。青壮年の顧客層を広げる。
不動産事業ではグループ保有不動産開発のほか、グループ外不動産への投資にも注力。さらに、EV車両への切り替えや「+エコ郵便局」、ダイバーシティ推進、働き方改革、健康経営等にSDGsや人事戦略にグループ挙げて取り組んでいる。
自治体や地域の声生かす形を
株主からの「株価低迷が続いているが」との質問に対し、議長の増田社長は「謙虚に受け止めている。DX推進、各事業の成長やSDGsで企業価値向上に努め、株主還元を重視。1株50円の年間配当のほか、自己株式取得も実施する」と答えた。
「持ち株会社が持つ3社の議決権比率が異なる。日本郵便の株式を今後売り出す可能性は」には西口彰人常務執行役が「日本郵政は日本郵便の株式100%保有を法律で義務付けられており、売ることはない。中計では2025(令和7)年度までに金融2社株式を50%売却する目標を掲げ、かんぽ生命は50%まで処分が進み、ゆうちょ銀行は60%強を日本郵政が保有するが、50%まで売却する方針を持つ」と説明した。
「ヤマトとの協業は成功させてほしい」には西口常務が「成功させたい。二輪車を中心にメール便で少し大きな荷物もポストに配達できる日本郵便の強みにヤマトも着目し、クロネコDM便とネコポスの配達を日本郵便が受託する。大目的は2024年問題を控えたドライバー不足への対応だ。すでに10道央圏でメール便を引き受けている。万全を期して取り組む」と意欲を示した。
「郵便局の改革は」には立林理常務執行役が「郵便局ネットワークはお客さまとの大切な接点で地域の拠点。新しい郵便局モデルの確立が大切。経済合理性だけではなく、新たな業務等を取り込むことで収益性と公共性の拡大を図り、住民利便性向上に傾注したい」と強調した。
「空き家パトロールなどは利益化を図るべき」には立林常務が「無料ではないが、あらゆるサービスは適切な利益を確保した上で郵便局ネットワークの価値を高められるよう取り組んでいる」と述べた。
「ゆうメール減少の要因は」には、日本郵便の金子道夫専務取締役兼専務執行役員が「デジタル化や環境負荷低減を理由に定期刊行物が減少した。
ゆうメールは採算性を重視し、大口のお客さま中心に契約条件見直し依頼とともに、再配達削減に向けて受箱やポスト配達可能な荷物小型化促進に取り組む」と方針を示した。
「65歳から70歳までの雇用は」には牧寛久執行役が「期間雇用社員の業務は事故等を考慮して満65歳以降の更新は行っていないが、高年齢者雇用安定法は70歳まで就業確保措置が努力義務。モチベーション高く働ける就業機会確保措置を労働組合とも議論している。65歳以降の働き方と安全確保措置等を引き続き検討したい」と語った。
新任含む取締役15人が選出された総会のライブ配信総視聴数は1125回、同時最高視聴者数は682人、会場を訪れた株主は310人だった。