政府 人間主義の地域づくり

2023.02.22

 デジタル庁はデジタル田園都市国家構想の推進に向けて、地域の暮らしやすさや持続可能な社会実現のために地域幸福度(ウェルビーイング)を定期的に測る仕組みづくりに動きだしている。指標は、人間中心主義を明確化し、地域住民の視点から「暮らしやすさ」などのウェルビーイングを数値化・可視化。昨年末に発足した検討会では先行自治体のヒアリングも行われた(写真は総務省デジタル田園都市国家構想推進本部第5回資料から)。

ウェルビーイング指標浸透へ

 昨秋、自民党「日本ウェルビーイング計画推進特命委員会」の事務局次長に就任した長谷川英晴参議院議員は「郵便局がデジタルとリアルをつなぎ、地域を幸せにすることがウェルビーイングの概念から重要」とも話している。

幸福度の指標、活用検討会も発足
心も体も健康な地域に

 昨年12月19日の「デジタル田園都市国家構想実現に向けた地域幸福度(ウェルビーイング)指標の活用促進に関する検討会」(座長=前野隆司慶應義塾大学ウェルビーイングリサーチセンター長)の初会合で、前野座長は「ウェルビーイングはまだ浸透していないが、測ることで生産性も創造性も上がり、職場であれば離職率や欠勤率も下がる。地域に引きこもりが減り、心の病も体の病にもなりにくくなる予防医学の一種だ。体の健康診断も体重だけで判断できないのと同じで、ウェルビーイングも大量のデータを取った方がよい。先行自治体の事例等も見ることが重要だ」と呼び掛けた。
 同日は兵庫県加古川市、静岡県浜松市、富山県朝日町のヒアリングが行われている。
 現状、デジタル田園都市国家構想の交付金を活用する自治体のうち、デジタル実装タイプのTYPE2、TYPE3で採択した27自治体(22年度)が先行的に使っている。地域幸福度(ウェルビーイング)を測る指標は、(一社)スマートシティ・インスティテュートが開発した日本独自のLiveable Well-Being City指標(LWC指標)。幸福感(心の因子)、活動実績指標(行動の因子)、生活環境指標(環境の因子)――の三つの領域、22の環境因子における約140(客観的100、主観的40)の指数で構成される。
 測定は①「人間中心主義」を明確化②市民の視点から「暮らしやすさ」と「幸福感」を数値化・可視化③ランキングではなく、自治体が「個性を磨く」機会創出④WHOなど国際的な枠組みを導入⑤客観と主観データの両方を活用⑤まちづくりに役立てる――ことを目的とする。
 あくまでデジタル田園都市国家構想実現に向けて活用し、自治体間の優劣や比較、ランキング付けを目的とするものではない。
 幸福度を測る因子は、「協調的幸福感」(大切な人を幸せにしている)、「向社会的行動」(社会貢献のために寄与、町内の役に立つことを提案)、生活の利便性(公共施設の使い勝手の良さ、医療機関の充実)、「自然を感じる」などさまざまな項目を挙げている。デジタル庁HPにはさまざまな分野の指標がレーダーチャートのような形で表示されている。
 デジタル庁は「指標は、デジタル田園都市国家構想を推進するために活用の裾野を広げていく段階。暮らしやすさや幸せを評価する包括的な指標として活用いただくのが目標。誰でもダウンロードして使えるようになっているため、まちづくりに関わりたいと考える事業者や、郵便局の方々にも指標を活用いただき、地域の活性化に役立ててもらえればありがたい」と期待を寄せている。