日本郵政株主総会 〝共創〟で新ビジネス開拓も加速

2022.07.16

 日本郵政グループは6月15~17日、上場後7回目となる定時株主総会を東京都港区のザ・プリンスパークタワー東京で開催した。日本郵政の株主数(2022〈令和4〉年3月末時点)は約80万人、発行済株式総数は約38億株。引き続き、個人投資家保有割合は一般企業と比べ、高い割合を示す。
 中期経営計画「JPビジョン2025」の2年目に突入した株主総会では、三事業強化や他企業・自治体等との共創による新ビジネス開拓の加速化を強調。株主からの問いかけに、日本郵政側が「若年層のベアを実施したが、さらに社員のモチベーションが上がるようしたい」と答える一幕もあった。
 ゆうちょ銀行はグループ初の株主優待を実現。各社の総会で日本郵政の増田社長が各社の自立性と同時にグループ一体的な企業価値向上を展望した。

若手に照準、待遇改善を断行

 新中期経営計画「JPビジョン2025」の初年度だった22年3月期(21年度)決算を事業別に見ると、成長分野のゆうパックは25年度取扱個数13億6000万個の目標に対し、約9億8900万個。
 ゆうちょ銀行は、つみたてNISA稼働口座数累計40万口座を向けて、17万口座まで積み上げた。JPビジョン2025期間内の目標とする株式売却では、日本郵政の株式保有割合が昨春、49.9%になったかんぽ生命が認可制から届出制に移行したことで、今年4月には新医療特約の販売を開始するなど精力的に新規業務を展開している。
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 6月17日に行われた日本郵政の第17回定時株主総会では 、映像により「日本郵政グループの最近の取り組み」が説明され、「営業は、新たなスタイルに抜本的に転換し、DXは〝リアル×デジタル〟で体験価値を提供する未来の郵便局を目指す。
 楽天グループや佐川急便、ファミリーマートなど多くの企業や自治体、地域金融などとの連携を強化している。SDGsは2030(令和12)年度に温室効果ガス19年比46%削減を掲げ、東京電力や三菱自動車とカーボンニュートラルに向けた実証実験や環境配慮型郵便局を広げていく」とされた。
 議長を務めた増田寬也取締役兼代表執行役社長は、株主から事前に受け付けた「株価上昇に向かう戦略は」との質問に対し、「①営業戦略②DX施策③共創プラットフォームの構築④SDGs達成――を柱にさまざま取り組んでいる。株主の方々への還元も重視し、安定的な一株50円の年間配当、自己株式取得も実施する」などの方針を示した。
 一方、「ゆうちょ銀行株式の今後の対応方針は」には「経営の自立性、自由度を広げる観点からできるだけ早期に処分していきたい」と方針を示した。
 株主からの「決算で5000億円超の利益を上げたが、コロナ禍でエッセンシャルワーカーとして頑張る社員の皆さんへの還元は」との質問に対し、志摩俊臣常務執行役(当時)が「懸命な社員には報いるべき。22春闘ではJP労組と交渉する中、2年見送っていたベアを、社員の頑張りを踏まえ、一般職と若年層の賃金改善を決めた。今後の経営状況に鑑み、社員のモチベーションが上がるように対応したい」と答えた。
 「円安が進む中、資産価値下落への対応は」には、西口彰人常務執行役が「グループの財務上、有価証券関連株式の比率が非常に大きい。ゆうちょ株式の保有割合がグループ資産の大層を占め、市場や米国金利動向等の影響を受ける。三事業の強化や、他企業や組織との共創を通じて新ビジネスを生み出し、事業拡大に取り組みたい。JP楽天ロジスティクスで安価で高品質の物流サービスを楽天通販のお客さまに提供する手を打ってきた。収益貢献に努力したい」と語った。
 さらに、「デジタル化が進む中での郵便事業の成長戦略、お客さま満足度向上のための政策は」には、「郵便局窓口のデジタル化を強力に進めるとともにアプリケーションでも局窓口と同じサービスを受けられるよう未来形の郵便局を進めている。昨年度は550万件強のお客さまの声をいただき、分析した。約1割程度の苦情は新しいサービスを考える上でのアイデアになる。大事に分析し、施策にも反映したい」と意向を示した。
 「送達日数が規定以上に遅れるケースがあるように思う。はがきや手紙は郵便法に守られているが、ダイレクトメールは他業種参入による収入減は大丈夫か。ゆうパックは観光農園やJA直売所にのぼりを立て、集荷に動くべきだ」には、日本郵便の金子道夫専務取締役兼専務執行役員が「差出時間や地域にもよるが、土日を挟まない場合、早ければ翌々日にはお届けする。安定的なサービス提供にできる限り努めている。集荷は差出個数や集荷時間等、個別の事情等でできないこともあると思うが、積極的な営業、集荷サービスの提供に努めたい」と意欲を見せた。
 「通常払込手数料について」には田中進常務執行役が「通常払込は送金料金を加入者の方の負担と、送金される方の負担とを伝票の赤と青で分けているが、1月からは局窓口で現金でお預かりする場合は加入者負担の形になった。ただし、ATMや窓口でも口座を通じて払い込む場合は料金はかからないため、ぜひ利用いただきたい」と説明した。
 「後継者育成マニュアル」には、日本郵便の立林理代表取締役兼専務執行役員(日本郵政常務執行役)が 「外部の弁護士が精査した結果、局長の採用選考に全国郵便局長会が関与している記述は認められなかった。60歳未満を満たす方は誰もが応募を可能としている。事前研修等の受講は要件としないなどウェブの採用情報に掲載している」と述べた。
 「社員の切手換金問題の改善は」には早川真崇常務執行役が「大量切手の交換処理の際は管理者が立ち会う。昨年4月に日本郵政に『グループコンダクト統括室』を設置し、各社との連携強化、お客さま本位の業務運営に関する事象の早期発見に取り組んでいる」と報告した。
 新任含む取締役13人が選出された総会のライブ配信総再生回数は1264回、最大同時視聴者数は681人、会場に訪れた株主は306人だった。