「共創の未来へ」 郵便局での行政サービス

2025.07.18

 郵便局窓口で自治体と住民をつなぐ行政サービスの取り扱いが広がりを見せている。2001(平成13)年12月から始まった証明書交付事務は、390の都道府県/市区町村から5245局で受託(今年1月末現在)。19(令和元)年7月からは包括事務受託(長野県泰阜村)、21年6月からは各種証明書の代理人請求(石川県七尾市)も始まるなど、受託範囲は拡大している。(写真は熊本県御船上野局でのお伺い行政相談)

価値高まる〝役所と住民のパイプ役〟

 窓口に自治体のタブレット端末を設置し、テレビ電話による行政相談を実施しているのは、栃木県日光市の清滝局(小倉浩史局長)と熊本県御船町の七滝局(岡本悠太局長)、御船上野局(髙松克有局長)。
 御船町総務課の井上幸司前主査は「ご相談はマイナンバーカード関連やLINE登録などが多い。局長さんからアドバイスをいただいて周知を図り、利用件数も増えてきた。地域密着の郵便局は大変心強い」と称賛を送る。

 髙松局長(写真上㊧)は「役場と定期的に協議を進め、受託局の拡大やタブレットを活用した〝書かない〟〝行かない〟窓口の実現など、郵便局への期待は大きい」と意欲を示す。

 北海道黒松内町の熱郛局(今村和宏局長、写真上)は昨年1月から、公的証明書の申請書記入をタブレット端末で行う「書かない窓口」を全国で初めて設置した。
今村局長は「導入から1年半で地域の皆さまに浸透してきた。マイナカードで受け付けて5分ほどで完結。書き損じもお待たせすることもなく、『楽になった。便利だねえ』との声をいただく。郵便局の負担も減った。多い月で10件以上の申請がある。導入自治体が増えているので、ぜひ各地の郵便局に広がっていければ」と想いを語る。

 今年度から集落支援員を受嘱して、地元住民の方々との「対話会」を開催しているのは、山形県西川町の4局と滋賀県大津市の葛川局(出雲裕史局長)。
西川町の菅野大志町長(写真上)は「郵便局の強みは、地域の皆さまからの信頼の厚さ。対話を通じて得られる情報を住民の困り事として捉え、解決できるよう行政に生かしていきたい」と大きな期待を寄せる。

 山形県北部地区連絡会の荒木尚人統括局長(写真上、間沢)は「集落支援員や町のLINE登録支援も手数料をいただいており、会社も町もウィンウィンな制度。全国に広まれば、郵便局の存在価値がさらに高まる」と強調する。
 葛川局は5月20日に初の対話会(サロン)を市民センターで実施し10人が参加。事前に出雲局長が参加者と一緒におはぎやヨモギ餅、みそ汁を作り、皆で頬張りながら和気あいあいと意見を交わした。
 
 出雲局長は「絵手紙教室を7月に開催することが決まったほか、公共バスがないため買い物や通院が不便とのお声や、空き家問題なども指摘いただいた。地域のお困り事に応える〝局長らしい仕事〟でやりがいを感じている。今後も市と地域のパイプ役を担っていきたい」と力を込める。
 行政サービスは役所の補完的な役割はもとより、身近な郵便局で、なじみの局長・社員さんなら何でも聞けて、要望も届けてくれると好評だ。〝地域のために〟との温かい想いにあふれた郵便局は、地域の持続可能に不可欠な存在となっている。