共創の未来へ オンライン診療と郵便局
人口が減り、高齢化が進む。政府が手を打っても止まらない東京一極集中。しかし地方、そして地域の暮らしは守るべきものだ。本紙新年号で好評をいただいた郵便局と自治体や企業との連携紙面を、各項目ごとに順次紹介し、郵便局の地域創生の姿を追っていく。(写真上は周南市における郵便局でのオンライン診療・巡回診療開始セレモニー)
人生100年守る複合拠点に
2022(令和4)年12月、日本郵便が愛媛県宇和島市と連携し、「スマートスピーカーを活用した郵便局のみまもりサービス」と「タブレット端末を活用した遠隔医療支援」の合わせ技を市の受託業務として実装スタート。
郵便局長が患者宅を訪問し、タブレットで医師とのやりとりを手助けする形だった。局内に初めて診療ブースが設置されたオンライン診療は23年11月、石川県七尾市にある南大吞局(池岡直樹局長)で総務省の実証として始まった(写真下)。
池岡局長は「実証期間中に能登半島地震が起きた。局舎は無事だったが、奥能登中心の被害は甚大。避難所では持病のある被災者の方々が薬もない中での不安は底知れないものがあり、『画面上でも医師の顔を見ながら診療してもらえたら、どれほど安心されるだろうか』と能登地区連絡会の坂口高雅統括局長(町野)は切実に語られていた。会社側も懸命に動いてくれている。実装にできるよう現場も頑張りたい」と話す。
24年7月には、山口県周南市にある高瀬局(福谷直美局長)で全国初の実装として開始された。山口県周西地区連絡会の福田信一郎統括局長(徳山櫛浜)は「患者の方は80~90代の方が多く、オンライン画面を見ると『動画を見せられているのかな?』と思われるようで慣れるまでには少し時間もかかる。普及はシステム整備等ハード面だけではなく、ソフト面も大切。市に巡回診療を増やしていただく提案をし、社協の方には先生と高齢の方々との〝触れ合いの場〟を設けるお願いもした。人間関係を深めることで安心して受診できる」と語る。
同年9月には山口県柳井市の平郡局(棟居正樹局長)で離島初の実証が、10月には広島県安芸太田町の安野局(佐々木利之局長)で、郵便局を「コミュニティ・ハブ」とする総務省の実証も行われた。
佐々木局長は「実証事業は①安芸太田町の包括事務受託(23項目)②オンライン診療と同服薬指導③オンラインスマホお悩み相談の三つ。町の病院まで車で片道約40分かかる地域。スマホ教室は診療のない日に業者の方がオンライン予約制で実施したが、毎回大盛況。町との連携を深め、地域の皆さまの暮らしを生涯支援できるよう取り組みたい」と意欲を示す。
日本医師会(松本吉郎会長)の長島公之常任理事は「オンライン診療が特に必要な離島やへき地等ほどオンライン診療のニーズは高いので、平時だけでなく災害時も想定した通信環境などを含め、オンライン診療に係る適切な体制を国として整備いただきたい。その中には、安全で使用性の高い機器が必要だが、初期費用は高額で維持費用と合わせ、現在の支援だけでは不十分。地域医療を守る大切な仕組みのため、国や自治体の補助金等のさらなる支援も検討願いたい」と訴える。
25年1月に入り、山口県立総合医療センターの原田昌範へき地医療支援センター長は「公益社団法人地域医療振興協会」と「郵便局との連携」を協議し、「公益財団法人日本離島センター」は「コミュニティ・ハブとして郵便局活用」と「郵便局でのオンライン診療」を前向きに検討。日本郵政グループの山門彰審議役が調整役となって動いている。
原田医師は1月17日、長谷川英晴総務大臣政務官と、先立つ15日に自見はなこ参議院議員とも打ち合わせを行っている。今国会が開幕した1月24日には柘植芳文参議院議員が厚生労働委員長に就任するなど前進の機運は高まっている。