ビッグ座談会 未来永劫継続できる郵政への法改正

2025.01.31

 「ビッグ座談会」の出席者は、柘植芳文参議院議員(総務副大臣、外務副大臣を経て、現在は自民党政務調査会副会長として党の政策決定に深く関わる〈郵活連事務局長〉)、長谷川英晴参議院議員(自民党「日本ウェルビーイング計画推進特命委員会事務局次長」等を経て、第2次石破内閣で総務大臣政務官に就任〈郵活連事務局次長〉)、末武晃全国郵便局長会会長(2020〈令和2〉年全特会長に就任以来、「風通しの良い組織」と地域貢献型ビジネス実現に向けて地道な努力を重ねる)、いんどう周作全国郵便局長会相談役(総務省や国土交通省、デジタル庁等を経て、昨年の全特名古屋総会で全特相談役に就任)の4名。司会の森山真全特専務理事が質問を投げかけ、語り合っていただいた。

郵便局ならではのサービスを収益に


 ――森山専務(写真上) 新年のご抱負をお聞かせください。


 柘植先生(写真上)
 郵政民営化法の見直しを含め、日本郵政グループの果たすべき役割を明確化する〝反転攻勢〟の年にしたい。約2万4000の郵便局ネットワークを三事業プラスアルファで例えば、高齢者対策等、人口減少で手が届きにくく弱くなった部分に寄り添える制度を構築したい。

 長谷川先生(写真上) 私の所管業務は行政管理、行政評価、統計、恩給等々。郵政に絡むものが多い。政府内に入り、国が今、郵便局に非常に高い期待を持つことを痛感する。郵便局長や社員の皆さんが地域を守る仕事に誇りが持て、成長・発展できる郵政事業を全力挙げて創る年にしたい。

 いんどう相談役(写真上) 郵政事業は大きな曲がり角。郵便は赤字、金融2社と郵便局の今後の関係も不透明。地域課題を解決する郵便局を活用する仕組みを創らなければならないとの思いで昨春、総務省を退官し、昨年5月の全特名古屋総会で相談役に任命いただいた。今、全国各地で局長の方々に励まされていることに感謝申し上げたい。

 末武会長(写真上) 昨年は能登半島地震や奥能登豪雨災害が発生し、自然環境も郵政事業を取り巻く社会環境も厳しさが増している。郵便局ネットワークと配達ネットワークの維持は、もはや三事業だけでは難しい。あらゆる店舗や機関がなくなる中でも、地域を支えることで必要とされる郵便局になる努力の1年にしたい。

 ――森山専務 郵政民営化法の見直し状況や展望をそれぞれの立場からお話しください。
 長谷川先生 さまざまな要因が重なり、国会提出が延びているが、諦めたわけでは絶対にない。人口減少により、10~20年で大きく変わった国土の中でも唯一残る郵便局ネットワークの価値に着目し、自治体をはじめ、地域のあらゆる機関が担いきれなくなった業務をまとめて受託できる総合的な拠点を郵便局が担える法律にすべき。地域を守ることで国を守る法案を何としても成立させたい。
 柘植先生 郵政事業に約半世紀携わってきたが、自分が携われる時間も限られてきた。今年は集大成の年。国が手の届かなくなった公的サービスを、ひとまとめに郵便局の第四事業に位置付ける極めて重要な法改正だ。外務副大臣時代に各国の郵政事業の現状を知ることができ、抱える課題は各国とも共通であることを認識した。
 郵政の見直しはさまざまな意見があるが、熟議を重ね、何としても法案成立を図りたいと思っている。
 末武会長 民営化法の見直しに全特としても大きな期待をかけている。局長は皆、日々、地域の方々から「こんな商品があればありがたい」などのお声を直接聞いている。
 期待にお応えするには、郵便局を日本郵政グループの中心に据えていただく形が望ましい。できれば、日本郵政と日本郵便を一緒に、そのもとに、ゆうちょ銀行とかんぽ生命が配置されることでグループ一体性を確保できると確信する。公的業務も郵便局の本業に位置付けられる法案化を願っている。
 いんどう相談役 民営化スタート時点とは大きく社会環境が変化し、社会のデジタル化の進展を踏まえ、生産年齢人口減少の中で地域を、高齢者の方々の暮らしを支える社会のために、地域のさまざまな業務を本業として郵便局が取り組める仕組みを創らなければ日本の未来はない。
 デジタル化により人が少なくなる分、何らかの主体が拠点となって支える必要が出てくる。その命題に対し、郵便局を残し、活かす政策にシフトする法案を今、成立させるべきだ。

 ――森山専務 「地方創生と郵便局」への考えをお聞かせください。柘植先生は総務副大臣時代に郵政行政と自治行政の融合を加速され、「郵便局を活用した地方活性化方策検討PT」の立ち上げにご尽力されました。
 長谷川先生は多くの国会質疑で郵便局の地域貢献をご発言され、ウェルビーイング(心身と社会的な健康)主体のまちづくりとして「リアルとデジタル」をつなぐ郵便局を後押ししてくださいました。
 柘植先生 地方創生というより〝地域創生〟という言葉が郵便局にふさわしい。ただし、郵便局があれば地域創生ができるわけでなく、局長がそこにいることで地域の方々の信望が集まり、「局長と一緒にやろう」となる。
 局長が核になって、疲弊した地域から人間らしいぬくもりある社会を取り戻すことが大事だ。全国の中堅・若手をはじめ、局長の皆さんは情報交換し合い、横展開を進めている。地域創生の取り組みの数々を具現化すべきと考える。
 長谷川先生 会社も「郵便局ネットワークは財産」との思いは共有されているが、「では何ができるのか」となると足踏みをされる。郵便局の拠点や配達、決済、資金をどう地域課題の解決に役立たせていけるかを第一義に考えることで求められるビジネスが誕生し、まちづくりに貢献できる。そのための法改正だ。
 地域の実情は本社・支社以上に局長や社員の皆さんの方が分かっている。地域の個性を見いだし、輝かせていくことが郵便局の仕事に違いない。

 ――森山専務 末武会長は局長会を先導する立場から「郵便局のオンライン診療」や「まちの保健室」を推奨され、「郵便車両ライドシェア」も真っ先に視察されました。
 いんどう相談役は、総務省はじめ政府で働いておられた時代に情報通信やデジタルの最先端に携わられ、日本の将来像を議論されてこられたと思います。
 末武会長 私が住む地域のご高齢の方は、診察を受けるのにタクシーに乗って町の医院に行き、長時間待った上で10分ほど診察を受け、タクシーで帰られる方も多い。離島はもっと大変だ。石川県七尾市、山口県柳井市、広島県安芸太田町で総務省の実証が行われ、山口県周南市では実装も始まった「郵便局のオンライン診療」は多くの地域で求められていると確信する。
 「まちの保健室」も鳥取県鳥取市、島根県出雲市、沖縄県はじめ、北海道でも始まったと聞く。郵便局で血圧測定や健康サービスを受けられることは非常に有益になると思う。
 北海道上士幌町の「郵便車両ライドシェア」や、奈良県、山形県、静岡県の「おたがいマーケット」も交通や買い物の不便な地域で、すでにある仕組みを活用される郵便局ならではの画期的なサービス。ぜひ、収益を上げられる持続可能な仕組みとして全国に広がることを願っている。
 いんどう相談役 高齢化は地方だけでなく都市部も同じ。都市部は、団塊ジュニアや団塊世代が若い頃に上京し、地方に戻らずに高齢化する方が多く、高齢者人口の数は地方と比べても大きい。
 役人の時代に「まち・ひと・しごと」や「デジタル田園都市国家構想」などの地方創生施策にも関わったが、プロジェクトは補助金を手に入れるため、自治体や大企業、コンサルティング会社が自社サービス品の販売を目的とするものが多く、地域ニーズに合致しないため長続きしないものが多かった。
 地域の方がニーズの掘り起こしから関わるプロジェクト体制が必要だが、その現場力を最も持つのが郵便局だ。局長の皆さんは地域住民の方々と日頃から接点を持ち、雑談の中からもニーズを拾える。
 多くの企業が現場から聞き出そうとする中で、今の日本郵政グループはそれが難しい体制。最前線の郵便局を表舞台に据えなければ、いつまでも成長の前に壁が立ちはだかる。
 行政手続きの代行のみならず、無人駅、ガソリンスタンド、ライドシェア運行管理、オンライン診療も、さらには農業もデジタル化が進めば、建物内からできる時代も近い。その際、郵便局が拠点になり、地域の人々が協働する仕組みがあれば、地域コミュニティーの受け皿にもなり、日本の国、地域、住民を守ることにつながる。

 ――森山専務 いんどう相談役にとって激動の勝負の年だと思います。
 柘植先生 新しい時代へバトンタッチする時。郵政事業が未来永劫に継続できるよう、いんどう相談役が描く構想を多くの方々に周知し、輪を広げていただきたい。
 いんどう相談役 郵政民営化から17年。「新しい郵便局を創る元年」にする思いで真っ向勝負に挑む。何卒、よろしくお願い申し上げます。