ゆうちょ銀行 リアル×デジタルで顧客層拡大
ゆうちょ銀行は5月15日、中期経営計画の見直しを発表した。内外の金利上昇やデジタル化の想定以上の進展など、経営環境が大きく変化したことを踏まえ、従来の五つの重点戦略の基本的な方向性は維持しつつ、①リテールビジネス②マーケットビジネス③Σ(シグマ)ビジネス――の三つのビジネス戦略を中心とする枠組みに見直した。
「ゆうちょ通帳アプリ」2500万口座(28年度末)目指す
「リテールビジネス」は、リアルとデジタルの相互補完戦略を加速。「ゆうちょ通帳アプリ」の登録口座数が2024(令和6)年3月末時点で1040万口座と25年度目標の1000万口座を突破したため、25年度末には1600万口座と上方修正し、28年度末には2500万口座を目指す。
通帳アプリと約2万4000の郵便局ネットワークを掛け合わせ、郵便局でアプリ案内を行い、ユーザー数拡大を図る。
さらに、新しいNISA制度が始まり、投資への関心やデジタル取引ニーズが高まる中、リアルとデジタルを融合した資産運用商品の販売体制を強化。約2万の郵便局と資産形成の専門チームを配置する金融コンタクトセンター等をリモートで接続し、郵便局で専門的なサービスを受けられる体制を拡大する。NISA口座数を25年度末で94万口座、27年度末に120万口座まで拡大し、銀行業界トップを目指していく。
「マーケットビジネス」は、国内金利が上昇トレンドに転じたため、国債投資シフトも積極的に進める。長期を中心に残高を拡大。円金利資産に係る資金収支を拡大し、資金収支全体で拡大する。
「Σビジネス」は、ゆうちょらしいGP(ファンドの運営に責任を負う無限責任組合員)業務として、①地域金融機関等と共創②全国津々浦々のネットワークを活用し、きめ細かく地域の資金ニーズを把握③中長期的な目線で資本性資金を供給④投資先の成長、課題解決を支援――を推進。
100%子会社の「ゆうちょキャピタルパートナーズ」(水上圭社長)を中核に、パートナー企業と連携し、事業承継・事業再生投資、ベンチャー投資、ESG投資に取り組む。
ゆうちょ銀行は23、24、25年度と3期連続の上場来最高益の実現、26年度以降の次期中計の早い段階で純利益5000億円規模の達成と、ROE(自己資本利益率:投資家が投下した資本に対し、企業が上げた利益を表す財務指標)5%以上の達成を目指している。
笠間貴之社長は同日の記者会見で「年代別の来客数と通帳アプリのユーザー数のデータを踏まえると、まだ拡大の余地は大きい。アプリを通じ、ニーズに合わせた多様な商品・サービスを紹介し、新たな収益機会を開拓したい。通帳アプリのプッシュ通知等を用いて、郵便局への来局誘致も行っていく予定で、リアルからデジタル、デジタルからリアルという好循環をつくりたい」と強調。
郵湧新報の「プッシュ通知等を用いた郵便局への来客誘致のイメージは」との質問に対し、「例えば、郵便局や公民館での物産展等のさまざまなイベント、資産形成セミナー等々を通帳アプリ登録された地域の方々にプッシュ通知を送ることで来局誘致もできることを想定している」と説明した。