郵便局らしさ満載 ぽすちょこ便

2023.11.01

 雨にも負けず、雪にも負けず、日々、ポストと郵便局を回る郵便取集車の余積スペースを活用し、局間を配送する新たな物流サービス「ぽすちょこ便」が山形県鶴岡市内15局で9月21日、スタートした。地域内に〝ちょこっと〟送る際にもってこいの郵便局らしいサービスの料金は、ゆうパックの約4分の1の一ケース290円(税込み)。第1弾は地産地消ニーズに応え、品質は良いが形が今一つの規格外農産物等を生産者が郵便局から差し出し、加工してパンやケーキに使う飲食店が、店近くの局でほぼ当日受け取る仕組みを構築した。他自治体からすでにオファーも出ている。日本郵便は5年後をめどに全国約160地域での横展開や買い物支援への応用を目指していく。

近場の配送 なんと290円!
日本郵便 山形県鶴岡市から

①生産者から受け取り

②赤車に空きスペースの積載

③受取局に到着

④飲食店の近隣局で受け取り

取集車余積活用アイデアが実現

 「ぽすちょこ便」第1弾は、と2017(平成29)年の包括連携協定締結を機に、さまざまな連携で信頼を築いてきた山形県西部地区連絡会(難波忠夫統括局長/羽前本郷)と本社や東北支社(小野木喜惠子支社長)で現場目線の協議を重ねながら、3年間改善策を模索してきた。
 当初、地産地消のための近場配送に、ゆうパックでは割高になる厚い壁にぶつかった。割安で使える形を探る中、取集車の余積スペースを活用するアイデアが浮上。試行する中で利用者がさらに気軽に使えるよう、スマホアプリを使って申し込み等が瞬時に完結できる形に改善し、実装に入った。

新鮮な食の出荷、地産地消に貢献

 市の櫛引地域産業振興プロジェクト推進協議会が食品ロスや規格外品有効活用に向けて、各店舗で加工して提供する「くしびきフルーツ」の配送は、以前は市職員が自らの車を使って農家から生産物を集め、各店舗に配達していたが、「手間が大変」と生産者の方から鶴岡局(藤井泰局長)の阿部剛士郵便部長に相談が持ち掛けられたのが3年前。そこから本社や支社、地区連絡会での協議が始まり、斬新なアイデアが生み出された。
 ぽすちょこ便を取り扱うのは市内41局のうち、生産者や飲食店に近い位置にある15局。そのうち、発送は10局、受け取りを10局で行うが、発送・受け取り両方できる集配局は5局ある。日に1~3回ルートを10~12ケースが巡回し、予約枠として1日約50ケース。ニーズを見て便を増やすことも可能で、朝や昼に申し込めば当日中に届く。夕方予約した便は翌日の場合もあるが、何時に持ち込めば何時に届くか、アプリでケースの空き状況を一覧できる。
 申し込みは、日本郵便専用ウェブサイトで差出人か受取人がアカウントを作成し、空いている配送コースや日時を予約すると、相手先の飲食店等に予約情報が届く。生産者は品物を持って差し出し予約した局に持ち込み、配送料を支払う(後に飲食店側にスマホで請求書を送付)。
 情報が届いた飲食店は受け取り予約をした店舗近隣の局に行って、スマホで予約情報を局社員に見せて生産物を受け取る。ポストと局を定期運行する郵便取集車を活用するため、余計なコストをかけずに1ケース(横47㌢、奥行29㌢、高さ22.5㌢)配送料290円を実現できた。
 東北発、県内着のゆうパック料金は100サイズで1450円(ゆうパックスマホ割や局受取割引で1170円)、120サイズは1770円(同1490円)に比べると、290円は約4分の1。ただし、ぽすちょこ便には紛失時の損害保障はなく、日本郵便が責任を負う事由がある場合には運賃返却で対応する。また、冷蔵・冷凍配送はできない。
 記者会見で、「ぽすちょこ便」の命名プレートを持った山形県西部地区連絡会の堀弘郵便・物販担当副統括局長(八幡)は「日本で唯一の〝ユネスコ食文化創造都市〟の鶴岡市で開始され、地産地消にお応えする新規事業。津々浦々にネットワークを持つ郵便局ならではの配送サービスで、新鮮な食の出荷の可能性を開き、地域の活力につながる」と意欲を示した。
 日本郵便ロジスティクス事業部の御手洗正夫部長は「郵便局の使命は、誰もが使いやすいユニバーサルサービスだ。郵便局は各自治体ともさまざまなお付き合いがある。他自治体からも買い物支援で安価なサービスができないかとご相談もいただき、検討している。個人の方にも、ビジネスでも、地域内で安く届けたい時は使っていただける。全国に向けた横展開を構想している」と語った。

日本郵便 将来、個人宅へも検討

 御手洗部長は「地元産の野菜や果物、海産物で品質は良いが、少し形が悪かったりする規格外の生産物は全国の流通に載せにくく、地元で加工して消化する地産地消のニーズが各地域にある。それ以外にも自治体の方が地域活性化のために簡易的に荷物を運びたいニーズは実は多い。雪深くなってきた時に、どんな天候でも走る取集車で運べれば苦労せずに済む。個人の方も近場に何かを送りたい時はスマホで空き状況を見て来局され、届け先付近の局を指定すればお手軽に配送し、ついでに局の用事も済ませられる」と説明。
 さらに、「配送料金を抑えるために局から局への配送でスタートだが、個人宅への配送も検討する必要がある。その場合は、おそらくオプションのような形になるが、タイミングを図る。現在登録されているのは5社だが、段階的に広げたい。郵便局を通じ、地域のさまざまな方に広報し、認知度を徐々に上げていきたい。2024年問題は長距離便のため、大きな影響はないと思う」と展望した。

生産者 アプリ予約が便利
飲食店 何より料金が魅力的!

 庄内地域中心にリンゴやナシ、サクランボ、イチジク、野菜を規格外品含めて地域の飲食店等に販売する生産者の㈱インフィニファームの斎藤司社長は「以前は市の櫛引庁舎に持ち込み、職員の方がそれを本庁舎に運び、本庁舎に飲食店が取りに行くことで時間もかかって大変だった。改善策として昨年、郵便車の空きスペースを活用して配送いただいたが、伝票を何枚も書いて、事務処理が大変。ぽすちょこ便となって予約もスマホからアプリででき、とても楽になった」と喜びを見せた。
 生産物を受け取る側のパン屋を経営する㈱庄交コーポレーションの川島里美執行役員は「以前は市役所に果物等を取りに行っていたが、店から遠く、敷居も高く17時半までに繁忙時間帯でも店員を残して1時間店を出なければならないことにプレッシャーがあった。駐車場もあって店舗に近い郵便局で20時まで受け取れるようになって、重い果物の時も楽になり、とてもありがたい。何より魅力的なのは290円のリーズナブルな料金」とうれしそうだった。
 「ぽすちょこ便」開始に至るまでの3年間、鶴岡局(藤井泰局長)と山添局(富樫文利局長)で試行が繰り返されてきたが、山添局の富樫局長は「余積のアイデアは本社が考えられたものだが、現場として多くの方々に使っていただけるシンプルで安いサービスの検討を依頼した」と語っていた。