ビッグデータとAI活用遅れる日本 岩田一政 元民営化委員長
米国のシンクタンク「ランド研究所」のシミュレーションによると、米国は2030年代に中国・北朝鮮軍と米国・台湾との間のハイパーウォーで優位性を失う結果を示している。ハイパーウォーに直面した日本は果たして生き残れるのか、大変心配している。デジタル転換は経済面のみならず、安全保障の面でも欠くことのできない課題だ。
「前島密賞」受賞者代表であいさつ
私が座長を務めていた総務省情報通信政策研究所がまとめた「AI経済検討会報告書2022(令和4)年」では、AIを活用する日本企業の比率は5%。他の先進国の平均は35%を超えている。中国企業は7~8割がAIを活用する。スイスのビジネススクールIMD(国際経営開発研究所)の最新ランキングによると、日本のデジタル競争力は世界29位で、ビッグデータとAIの活用が遅れ、63位だ。
金融完全売却はリスク大
シンガポール郵便はネット上でモノを売買するECナンバーワン企業を目指していたが、民営化の過程で日本のゆうちょ銀行に相当する「シンガポール郵便貯金銀行」をシンガポール開発銀行に売却し、銀行免許を失ったことでグローバル化したEC市場で勝ち抜くことが難しくなったと嘆かれていた。
三事業一体化のビジネス戦略を
郵政民営化法7条では、日本郵政は金融2社の株式をできる限り早期に処分とされている。売却終了のタイミングに関わりなく、三事業を日本郵政のもとで一体化したビジネス戦略の構築が重要だ。
米国では投資会社が組成するファンドに個人が投信の形で出資するミューチュアル・ファンドが発達し、小口投資家も優良株式取得が可能になり、生活を支える有力な手段となった。ゆうちょ銀行もミューチュアル・ファンド・バンキング機能を広げることで日本のデジタル転換を促進する役割も果たせる。
日本の金融システムは銀行優位の間接金融が中心で、多くのリスクを必要とするベンチャー育成に向いていない。ファンドを活用した直接金融の比率を高めるべきだが、日本郵政グループの子会社JPインベストメントは中心的な立場でのファンド組成が可能。
地域活性化基金のみならず、ベンチャー育成基金を組成できる。ファンドを数多く組成し、投資信託の窓口販売を通じて日本のイノベーション生成に貢献すべきだ。