続・続 郵便局ネットワークの将来像⑲
MaeMaas(まえまーす=前橋版次世代型移動サービス)とは何だろう? 群馬県前橋市内全46局で始まったSuica対応交通系ICカード「nolbé (ノルべ)」の窓口販売は、行政のものだったマイナンバーカードを起点に全てをつなぎ、開放する民間とマイナカード連携の幕開けにも見える。総務省の実証事業として期間は定められるものの、カード申請時の1回限りでなく、市民でいる限りは便利さを享受できる仕組みだ。(写真上はマイナカードとノルベの連携)
なるほど便利!なマイナカードに
埼玉県小川町政策推進課の西田成亮主査は「住基カードの普及が難しかったのは、行政目線では役に立っても、マイナカードを持つことで何の役に立つかという住民目線が薄かったことにあったと思う。今、マイナポイント付与のお得感でカード普及率は伸びているが、今後は、持つことでどこまで便利さを実感できるかが肝。また、高齢の方がカードを持つことで何に役に立つかを分かりやすく説明する〝ソフト面〟の手当が重要」と指摘する。
24日から始まる「まえばしシェアサイクルcogbe(コグべ)」はスマートフォンアプリから利用登録が可能。市民が自らのマイナカードと登録すれば、通常15分50円を半額25円で自転車を借りられる。郵便局は前橋中央局をはじめ、自転車を配置する拠点として一役を担う。
幕開けた民間連携
市と郵便局の橋渡し役も務める大野誠司副市長は「まえまーすの鍵は交通系ICカードとマイナカードのひも付けだ。地域のさまざまな交通を市民の方に便利に利用していただく目的だが、まえまーすを登録できる場をどう広げられるかが課題だった。46カ所もある郵便局に協力いただけることは非常に効果があると思う。マイナカード普及に合わせて、市内の交通会社が潤うようノルベも普及したいため、1枚2000円を、郵便局が1000円で販売するキャンペーンも開始した。マイナカードの便利さを実感してもらった上で、市はさまざまな業務の〝社会的コスト〟を大幅に減らせる」と語る。
山本龍市長も以前、「地方都市はマイナカードの利活用を図らなければ生き残れない。働き手の減少、高齢者層の増加をデジタルで乗り切り、生産性を上げるしかない。外出できない高齢者の方も増えた。自動運転にも期待したい。市は医療と介護にかかる費用の1割をマイナカード活用によって生み出し、市民に還元したい。社会課題をローコストで解決し、若者や高齢者も生きがいを持てる社会を構築できれば移住定住も、企業も招致できる」と強調していた。
同市は、救急患者が出た場合、救命士が病院側に患者データを転送する。準備の際の患者認証はマイナカード・生体・パスワードの3種類。病院が個人情報を見るため、高いセキュリティーが求められるが、経済産業省の4段階の情報セキュリティーレベルの最高位を実現し、救急隊員が走行しながら見えた画像を搬送先の医療機関に送れる。
マイナカード活用により、心筋梗塞の場合、病院に到着するまでにカテーテル手術の準備も可能。医師は病院に待機しながら不整脈の診断もできる。マイナカードの裏にあるチップで情報連携を進めているが、最終的には誕生から亡くなるまで自分の検診情報を企業や病院と連携することで、地域包括ケアを適時適切に受けられ、検診結果を自ら画像で見ることで市民の健診見落としゼロを目指している。
健康寿命延伸も郵便局で
6月の規制改革会議の閣議決定を受けて9月30日、「郵便局の空きスペースを活用したオンライン診療の可能性」の意見交換会が参議院会館で行われ、厚生労働省、総務省、内閣府、日本郵便が出席した。
その際に「郵便局も資格がある」と提案した自見はなこ参議院議員は「前橋市のさまざまな取り組みはぜひ広がってほしい。オンライン診療も広げるのに大事なことは〝本人確認〟になるが、私はその役割に最も適したのが郵便局だと思う。行政事務としての本人確認はできなくても、民営化以降、郵便局は金融業務の中で苦労されながら本人確認プロセスを厳格化して対応されてきたが、これが重要。医療関係者は、この人はカルテに記載された人と同一人物かの確認は必須で、別の方の薬を処方すると大変なことになる」と話す。
また、「郵便局は全国2万4000あるが、医師会は850しかない。郵便局で本人確認をした上で、局の空きスペースでオンライン診療を受け付ける形にできればよい。特に医療過疎地での郵便局の役割は非常に意味がある。地域の信頼を根差してきた局長の方々がいる郵便局なのだから、公益的な業務を共に担っていただけたらと思う」と期待を込める。
もし、郵便局スペースでのオンライン診療が始まり、薬等の配達も本格化すれば地域が便利になり、人生100年時代に元気な高齢者の方も増える。時には散歩がてらに郵便局に行って雑談ができれば〝心〟も温まりそうだ。
尾身朝子総務副大臣は4年前に前橋市を視察している