〝誰も取り残さない〟デジタル社会を
「デジタル社会における郵便局の地域貢献の在り方」の審議が10月14日、総務省情報通信審議会郵政政策部会(米山高生部会長)で始まった。柘植芳文総務副大臣が出席し、「少子高齢化、人口減少、新型コロナ等で一層地域社会が疲弊してきた。デジタル社会が進む中で地方が取り残されないよう、国民生活や地域をより良きものにできるため本日諮問し、12月末に中間報告。来年7月をめどに答申いただきたい。未来志向の夢を持って、日本郵政グループとして、郵便局として何ができるかを議論願いたい」と呼び掛けた。委員からはマイナンバーカードや遠隔医療に関する発言も見られた。
郵便局の地域貢献の在り方を審議 総務省郵政政策部会
12月末に中間報告がまとめられる審議の議題は、郵便局を通じたマイナンバーカード活用や事務受託の拡大等さまざまな公的基盤との地域貢献、郵便局データを生かした災害時連携、デジタル地図、局スペースや人材を活用した地域おこし等。国光あやの総務政務官(写真下)は「支所が撤廃しても郵便局がある。安心できる社会に向け、デジタル技術を活用した郵便局の地域貢献は重要」と語った。
支所等が撤廃しても郵便局がある
今後、日本郵政グループや自治体のヒアリングを重ねていくが、初回の審議では、日本郵政の西口彰人常務執行役が「JPビジョン2025」の進捗、日本郵便の立林理代表取締役兼専務執行役員が日本郵便の経営状況、高橋文昭常務執行役員が郵便局と地方創生の現況を説明した。
根本直子委員(早稲田大学大学院教授)は「地域貢献と日本郵便、日本郵政と親和性がある。マイナンバーカードや遠隔医療は伸びる分野。交付金もいつまであるのか分からないため、利益見通しがある方が良い」と述べた。横田順子委員(特定非営利活動法人素材広場理事長)は「会津若松は10月末でミニストップが全て撤退する。地方で郵便局がさらに重要な立ち位置になる。〝なんでも屋〟でなく、ビジネスとして絞り込みが必要」と提案した。
桑津浩太郎委員(㈱野村総合研究所研究理事)は「高齢化の前倒しで人手不足。郵便局は自治体や公的ファンドの支援を前提に自動運転等でコンビニ商品のオーダー、病院等の送り迎え等の役目もあり得る。法の枠組みや財源は提言が必要。外部人材活用の枠組みも検討すべき」と話した。
希少な存在価値を生かす審議へ
柘植副大臣は「デジタル化が進む中で地域社会の構造をどう変えていくか。その際に郵便局という存在が希少価値といわれている。できないことを羅列すると答申にそぐわなくなる。何ができるのかを審議していただきたい」と強調した。
米山部会長(写真下)は「デジタルプロジェクトを支えるデジタルネットワークの基幹をどう構築するか。遠隔医療も基幹ネットワークで対応できるイメージをどう作っていいけるかも詰めていただきたい。進取の気性をもってどう生かすか、だと思う」と総括した。
収益性と公益性、制約の壁を乗り越えて
掛け算でビジネスモデルの変革を 米山部会長
審議終了後の記者会見で、米山部会長は「諮問理由はデジタル化のメリットと、地域拠点としての有用性を生かし、郵便局が果たす地域貢献を検討する必要が生じたため。今後、自治体と日本郵便からヒアリングし、自治体ニーズも調査し、前向きな議論をしたい」と説明。
記者団の「地域の公的基盤とは自治体のみか」との質問に対し、「実証実験等を踏まえると自治体になるが、さらにどう広げていけるかに制限はなく、拡大する可能性はある」と答えた。
また、「収益性と公益性の両立をどう実現すればよいか」には、「国営ではないため、収益性を全く無視しての活動は無理があるが、結論は1か0かではなく、制約があっても企業目的に〝地域への貢献〟が入っている。達成は使命であり、相反するものではない。地域域貢献はSDGs、ESG投資の観点からも価値がある。収益性が落ちてきたからどうするか、は過去の審議会で議論に上ったが、今回は地方創生に郵便局が役に立つように皆で考えていくことが趣旨」と強調した。
郵湧新報の「デジタルネットワークを支えるプラットフォームはすでにある拠点を生かすイメージか」には「知恵を絞って回答を出していただく。足し算でなく、掛け算し、ビジネスモデルを変えていかなければいけない。地域が元気になるために郵便局は何ができるか、郵便局だけの力ではできないとしたら、どこまで政府なり何なりが手助けしていくか。その辺の議論になる可能性はある」と語った。