マイナンバーカード実証全デジタル始まる 北陸・南関東

2022.10.20

 郵便局におけるマイナンバーカード(以下:マイナカード)の利活用が全国各地で急速に広がっている。9月26日に北陸支社(加納聡支社長)の石川県加賀市内5局と南関東支社(一木美穂支社長)の神奈川県小田原市内5局で「マイナカード申請手続き全てのデジタル化」が総務省実証事業として始まった。加賀市の包括事務を受託する橋立局(渡辺宣行局長)でセレモニーが行われ(写真上)、「郵便局型キオスク端末」の設置により、市民の各種交付手続きが瞬く間に局窓口で完結する様子が披露された。同局と片山津局(金戸英俊局長)では同時に「オンラインでの各種手続きと行政相談」も開始した。

電子証明書事務受託 平塚西局で開始


 一方、神奈川県平塚市からマイナカードに搭載される「電子証明書の発行・更新手続き」を平塚西局(写真上、岩瀬健太郎局長)が10月3日から、受託業務を開始。宮崎県都城市、福島県南相馬市、宮崎県西都市に続く4番目、南関東で初となる。

郵便局とマイナが接近!普及の底力に


 橋立局で9月26日に開催されたセレモニーで、総務省郵政行政部企画課の松田昇剛課長は「郵便局での各種証明書交付は、局と市の電話やFAXでのやりとりに時間を要し、お客さまをお待たせしていた。今回、『郵便局型キオスク端末』を開発することで手続き全体がデジタル化され、役所の手を煩わせることなく、局で完結して証明書を交付できる。実証期間中、マイナカードを持って橋立局にお越しいただき、簡単に住民票の写し等を入手できるデジタル体験を市民の方々に体感いただける。実証をきっかけに全国展開を祈念する」と述べた。

デジタル体感を発信、総務省の実証で


 加賀市の宮元陸市長は「旧特定局(エリマネ局)局長を中心とした郵便局ネットワークは地域と信頼の絆を結んでいる。少子高齢化と人口減少が非常に進む市はさらに郵便局との関係が密接になるだろう。市のマイナカード普及率75.5%と全国3位。エストニア視察の際、マイナ同様のIDカードと銀行口座のひも付けが印象的に残った。行政利用だけでなく、民間サービスとの接続を加速させなければ広がりにくいが、その意味でも今回は第一歩。橋立局の試みがさまざまな分野に広がっていくよう願いたい」と語った。

 北陸支社の加納聡支社長は「郵便局は地域に寄り添い、共生する理念の下、行政の方々とさまざま取り組んできた。加賀市とは2018(平成30)年に包括連携協定を締結し、19年には橋立局で市レベルとして全国初の包括事務受託を開始。当時の担当者だった私にとって感慨深い。市との連携を深め、スムーズに住民の方にサービス提供できるように取り組み、周知のお声掛けもしていきたい」と意欲を示した。
 
(左)市民が端末で申し込み    (右)右から渡辺局長、宮元市長、社員の方々

 「マイナカード申請手続き全てのデジタル化」はマイナカードを活用して証明書発行に係る申請手続きができる端末を局に設置し、端末から印字した受付票を局窓口に手渡すと複合機で証明書を出力する。セレモニーでは、約10分かかっていた証明書申請が30秒から1分以内にできる模様も披露された。来局した酒谷信久さんは「役所に行き、整理券をもらって手書きするのは面倒だったが、自宅に近い郵便局で簡単に素早くできるのは便利」とほほ笑んだ。
 同日から橋立局のほか、同市内の山代局、片山津局、動橋局、山代桔梗ケ丘局、小田原市内の小田原早川局、小田原局、小田原国府津局、 根府川局、曾我局の計10局で同時に始まった。FAXによる自治体と局とのやりとりも省略化でき、青森県御所川原市内5局で実施中の「交付申請手続きの一部デジタル化」の形をさらに時短化する形で、12月23日まで試行される。
 
 小田原早川局の加藤千潮局長も「市役所から車で約10分の場所にあるうちの局は2名局。包括受託ではないが、以前から証明書交付事務を受託してきた。高齢のお客さまが多く、手書きもニーズが高いが、速さを望まれる方との両ニーズに応えていける」と喜びを見せている。
 2017(平成29)年から全国で最も早く市内全47局でマイナカードの申請サポートを行ってきた群馬県前橋市の大野誠司副市長は「マイナカードは行政手続き中心に活用されているが、市はスマホや生体認証と組み合わせた〝まえばしID〟を作ることで、公共交通の市民割引等にも活用できると思う。他にも例えば、郵便局が健康データの入口となって血圧を測り、健康アドバイスを受ける拠点になるなど、市民の方々に近い郵便局を社会のデジタル化の入り口にもなっていけるのではないか」と提案している。
 9月22日に開催された内閣府の「経済・財政一体改革推進委員会」では、初めて「マイナンバーカードの利活用拡大」が本題に上げられ、デジタル庁と厚生労働省、国税庁から利活用状況の現状が説明された。資料では、デンマーク、エストニア、韓国等では個人番号カードの全口座ひも付け義務も紹介された。

申請支援受託全国67局まで拡大

 マイナカード普及促進へ郵便局の申請事務取扱局も勢いよく増え、9月27日時点で全国9自治体から67局が受託した。
 開始順で見ると、北陸支社が石川県小松市・志賀町・七尾市、東北支社(小野木喜惠子支社長)が山形県山形市・戸沢村、近畿支社(小方憲治支社長)が和歌山県日高川町、中国支社(指宿一郎支社長)が岡山県真庭市、信越支社(菊地元支社長)が長野県小谷村・山之内町から受託した。11月1日から山形県西川町の東北支社管内4局も受託する。
 9月26日に長野県小谷村役場で行われた受託開始式で中村義明村長は「高齢の方が役場まで来ずに近くの郵便局でできることで普及促進に期待したい」と感謝の意を表した。中土局の太田賀久局長は「村との打ち合わせの中で、申請支援業務を提案し、快く同意いただけた。村と一緒に地域に根差し、推進したい」と話していた。