健康やまちづくりを日本郵政Gと 新潟県南魚沼市上田地区
新潟県南魚沼市と信越支社(菊地元支社長)は2018(平成30)年に締結した包括連携協定に基づき、はいかい者捜索や地場産業活性化など、あらゆる施策に郵便局が協力してきた。市は20年3月に高齢化率34%で商店も減り、内閣府の〝小さな拠点〟に選定される上田地区を「医療のまちづくりモデル地区」とし、持続可能な医療体制やまちづくりを推進する8事業の一つに「日本郵政グループとの連携強化」も掲げた。実証実験もその一環で、郵便局を物流拠点とする「買い物支援サービス」により、住民は散歩がてらに出て対話でき、自宅近くの販売場所は人と出会えるコミュニティーとなる。受容性や採算、継続性を半年~1年間検証し、他地域や他分野の拡大を検討する。
市との包括連携を起点に
買い物支援サービスの主体的な役割を担う郵便局物販サービス店舗事業部は、ローソンから法人のフランチャイズ契約を基に「JPローソン」の屋号で、北海道から沖縄まで18店舗のコンビニ運営を担当。昨年10月から神奈川県横浜市の高齢者向けにローソンと組み、移動販売サービスを展開してきた。ただ、横浜市の場合は市内にあるローソン店舗を拠点に商品を配送できるが、上田地区内にはローソン店舗がなく、配送拠点をどうするかが課題だった。
林市長 菊地支社長
荒若TS社長 青木TS前会長
協議が重ねられる中、信越支社と青木進郵便局物販サービス(TS)前会長(全特顧問)が持つ越後上田局の空きスペースを商品倉庫として提供しようとなり、実現の見通しがついた。19集落のうち4集落が国道沿いにあり、途中で商品がなくなっても越後上田局でローソン商品を補給できる。
軽トラの右側にはローソン商品が並べられ、缶詰、お菓子、インスタントラーメンのほか、ティッシュボックスやトイレットペーパー等日用品も積載。また、大容量40㍑の冷凍庫には、はりまやのアイス、ローソンで人気のある冷凍飲料等も載せられている
二つ目の課題が、コンビニには少ない生鮮食品の供給。横浜市の移動販売の届け先は朝昼晩ご飯付き高齢者施設のため、生鮮食品は必要なかったが、上田地区では一般住民の近くの販売場所を巡回するため、料理に使う生鮮3品が不可欠だった。このため、スーパーはりまやに相談し、生鮮3品も積載し、販売できることになった。
三つ目の課題は19集落で車を止めて販売する場所の確保。JPローソンと上田ふるさと協議会で19集落を回って交渉を重ねる中、各集落の長から推薦された19カ所の販売場所が確保でき、月~金曜の週5日、午前中と午後に2カ所ずつ回ることを決めた。
左側は冷温庫と冷蔵庫があり、チルド関係を搭載。冷温庫は米飯やおにぎり類、冷蔵庫は果物、野菜、乳製品等が積載されている。はりまやの加工食品を含めたドライ商品もある。積載量は大体200~300品目
はりまや商品は前日17時までに希望商品を電話で発注すると、翌日に予定の販売場所に車が運んでいく。ローソン商品は御用聞きし、積載していなかった商品は翌週に届ける。
南魚沼市の林茂男市長は「農協の小売店が撤退した後にどうすればよいかを悩んでいたときにお声掛けいただいた。上田地区の皆さまの深い理解と思いを共有し、実現に至った。成果を見極め、他の市街地にも拡大していきたい。この日を心待ちにした住民の方も多いと思う」と感謝を表した。
信越支社の菊地支社長は「郵便局ネットワークを基盤に地元企業やコミュニティーと連携し、新しいサービスを作り、地域のお客さまの人生を支える〝共創プラットフォーム〟が具現化できる。素晴らしい仕組みを多くの方に利用いただけるよう支社も一緒に頑張りたい」と強調した。
TSの荒若社長は「良好な買い物環境は、生活を営む上で必要不可欠。今回の取り組みが、地域において買い物にお困りの方を支援すると同時に、地域の皆さまのコミュニケーション活性化の一助にもなるよう努力してまいりたい」と意欲を示した。
青木TS前会長は「高齢化が進む上田地区で、お年寄りや買い物弱者の方に郵便局が何かお役に立てないかとTS在職中に市長にさまざま相談してきた。多くの方々の協力のもと、サービス拠点を越後上田局にできた。さらに地域に愛される郵便局になってほしい」と感慨深く語った。
事業概要を説明した南魚沼市U&Iときめき課の若井勉課長は「高齢者の方が近くまで出て買い物する際に、近隣の方と交流の場も提供できる。心身共に元気に安心して暮らし続けられる環境を充実させたい」と強調。TS店舗事業部の野本久部長は「皆さまに喜んでいただけるサービスにできるよう現場も懸命に考えている。アンケートも取って住民の方々の意見を伺い、御用聞きをしっかりできるようにしたい」と意志を表明した。