インタビュー 及川裕之 北海道支社長
北の天地で物流の地殻変動が起きている。北海道支社(及川裕之支社長)は4月、札幌駅に隣接する札幌中央局に冷蔵倉庫も備えた「札幌物流ソリューションセンター第2倉庫」を新設した。北海道、日本郵政グループ、楽天グループの3者包括連携でも「低廉な手段での一括輸送」が検討されている。及川支社長は「さまざま新たな〝共創〟が広がるよう取り組みたい」と強調する。また、1年半前から全道全局で展開する「終活紹介サービス」を「非常にニーズが高いと実感する。郵便局は地域の〝安心・安全の拠り所〟であり続けたい」と話す。
共創広げ、全局が〝拠り所〟に
――ご就任されて1年間のご感想等を。
及川支社長 創業150年の節目だった変革の年に任命いただき、あっという間に1年が経過した。新型コロナの緊急事態宣言や蔓延防止等重点措置で対面での営業や会議、研修等に制限も生じた。
前年度は、近年まれに見る豪雪や暴風雪に見舞われた中の業務運行。また、記念イベント「みんなの郵便局」には、多くの地域の方々に参加いただいた。社員の皆さんには、本当に一生懸命頑張っていただき感謝している。
私は生まれも育ちも北海道で、採用からずっと北海道勤務の地元人。大好なこの地を元気にしたいと心底思っているが、北海道は人口が急速に減り、ピークの1997(平成9)年に約570万人だったのが今や約516万人。札幌市だけ増え、約197万人と全体の4割弱を占める一極集中の状況だ。
179市町村のうち152市町村が過疎地域に指定され、高齢化も全国を上回るペースで進んでいる。広大で、雪の多い少ない、寒さの度合いや暮らし方に伴う苦労も地域によって全く異なる。人口減少地域では役場の支所廃止や他金融機関の撤退が増えている。郵便局は地域の〝安心・安全の拠り所〟であり続けたい。
――全国で最も早く全市町村と包括連携協定を締結されたのが北海道でした。北海道・楽天グループと日本郵政グループの3者による包括連携の行方も注目されています。
及川支社長 北海道支社は2018(平成30)年度までに北海道と全179市町村と包括連携協定を締結した。郵便局の自治体事務受託は指定ごみ袋の販売等も含めて4月1日時に約50市町村から委託を受けている。包括事務受託は昨年10月に道内で初めて白老町、今年4月から積丹町とも協定を締結し、住民の方たちの生活に寄り添おうと積極的に取り組んでいる。
北海道と楽天グループとの3者協定は、3者の社員で「北海道デジタル実装サポートチーム」が立ち上げられた。「シニア向けスマホ基礎講座」は5月24日に帯広局、25日に釧路中央局で、「外国人向けのオンライン行政相談」は5月から6月にかけて北見局ほか3局で開催した。
今後、「デジタル実装モデル事業」をさまざまメニュー化し、自治体向けの勉強会も開催し、必要に応じて事業化に取り組んでいく。北海道にはおいしい食材も多くあるが、都心部から遠方で配送代が高くなる。物流課題の解決も検討していきたい。
1922(大正11)年8月1日に市制が施行され、札幌区は札幌市となった。同様に100周年を迎える道内6市町村と郵便局がコラボして企画やイベントへの出店、フレーム切手作成等で記念事業を盛り上げていきたい。
ニーズ高い終活紹介サービス
――東京に続いて終活相談サービスを開始され、全国初の訪問美容も始められたのが北海道。企業や団体等との共創ビジョンの展望をお聞かせください。
及川支社長 終活紹介サービスは2020(令和2)年9月に札幌市で試行し、11月から道全域に展開した。それ以来、終活相談ダイヤルに多くのお電話をいただき、お客さまから「相続相談を郵便局にできて良かった」と喜びの声も多く、非常にニーズが高いと実感している。
みまもりサービスはご利用いただいているお客さまを丁寧にサポートすると同時に、今後はスマートスピーカーを活用したみまもりサービスを自治体の皆さまにどんどん提案したい。
窓口がなく、発送を専門的に受け持つ道央札幌局の約3000坪を営業倉庫化し、「札幌物流ソリューションセンター」を設置している。小包等の発送だけでなく、通販事業者の方等に商品の保管・受注・梱包・発送までトータルに利用いただいている。
4月には札幌駅に隣接する札幌中央局に冷蔵倉庫も備えた「札幌物流ソリューションセンター第2倉庫」を新設した。常温では扱えない商品のお客さまに利用いただき、新たな〝共創〟が広がるよう取り組みたい。
また、北海道日本ハムファイターズの新しい本拠地を含む「北海道ボールパークFビレッジ」という施設が北広島市に来春開業するため、郵便局もFビレッジポストを3月に市内6カ所の局前や駅前に設置した。Fビレッジを盛り上げ、地域を活性化したい。
バスケットボールのレバンガ北海道も支援し、昨年12月試合時に会場に特設ポストを設け、お客さまに応援メッセージを投函いただいてハーフタイムに読み上げるイベントも実現した。
――新しいかんぽの営業体制がスタートしました。人材育成や社員の方とのコミュニケーションは。
及川支社長 新しいかんぽ営業体制のもと、ゆうちょの営業は郵便局では窓口社員のみが行う形になったため、ゆうちょ銀行に密接に関わるし、拠点集約に伴い、レイアウト変更等で日本郵政の北海道施設センターにも関わるため、ゆうちょ・かんぽのエリア本部、施設センターと北海道支社のグループ一体で取り組むことを意識統一し、情報共有や意見交換を密に進めるなど全社で準備した。
支社独自にゆうちょ銀行エリア本部に協力いただき、投資信託の窓口社員への個別指導にも取り組んだ。コンサルタントの活動拠点が28カ所に集約されたことで居住地からの通勤が大変になるケースも見られたため、保険契約や投信等の引き継ぎ、お客さまのフォロー含めて社員にできる限り丁寧な対応をとってスタートした。
昨年4月から「積極的にお声掛けしてよい」となっても、第一歩を踏みだせない社員も多く、信頼回復の途上であってもお客さまのために働く喜びを通じ、自信や誇りを社員の皆が取り戻す必要性を強く感じた。
モチベーションアップ講演会を部外の先生に依頼し、行った結果、社員の9割が「とても良かった」「前向きになれた」と好評だった。支社長メッセージも適時発出し、不安解消やモチベーションアップを図っている。
昨夏には、支社の「人材育成PT」を立ち上げた。皆が分かりやすく簡潔な文書を書けるように文書作成マニュアルを作って研修会を実施した。アンケートで要望が多かったのはエクセル研修。
係長・主任からは社員とのコミュニケーションや指導など、コーチングスキルの習得の研修を受けたい要望も多かったため、今年度も準備を進めている。人材育成のマニュアルも作り上げていきたい。
――金融営業において局長の方々に期待されたいことはありますか。
及川支社長 昨年度から社員の活動プロセスに着目し、社員を支援し活動を後押しする「活動プロセスマネジメント」に取り組んでいる。局長の皆さんを含めて管理者に「社員の活動を把握して課題に対してアドバイスを」と推進している。「活動プロセスマネジメント」をしっかり進めていただけたらとお願いし、期待もしている。