続・続 郵便局ネットワークの将来像⑫

2022.05.05

 東日本大震災から11年1カ月を経た4月11日、東北支社(小野木喜惠子支社長)は一時閉鎖していた福島県大熊局(安田清克局長)を移転・開局した。大熊町(吉田淳町長)には震災発生前、4局があったが、原発事故の影響で営業を全て休止し、町に郵便局がない状態が続いていた。大熊町の吉田淳町長は「待望の再開。居住者のみならず、町内で働く方々の利便性が高まり、町への帰還を検討されている方に強い後押しになる」と大きな期待を寄せる。

福島・大熊局が開局 11年ぶり復興交流ゾーンに

 どの地での開局も、その背景にはさまざまなドラマがあるが、大熊局の開局は避難解除以降で初めての再開となり、苦節を味わった地域だけに喜びもひとしおのように見えた。現在、大熊町には住民票を持つ居住者数は約300人超が3年間で帰還した、約600人は主に東京電力などで働く人たちが住む。11年間、町には全く金融機関がなかった。復興交流ゾーンにはコンビニがあるが、ATMは設置されていない。

 開局日の朝、500円玉の貯金箱を窓口に持ってきた40代男性は「そりゃあ郵便局できてうれしいよ」とニッコリ。貯金通帳を大事そうに握り締め、記帳にやってきた90歳の女性は「こないだ、局長さんに名刺もらったんです。うれしかったあ」と顔をほころばせていた。

 安田局長は立会会見で「開局のあいさつに商店や近隣住宅に伺ったところ、『今まではお金を下ろすために隣町やいわき市まで行っていたが、歩いて行けるところに郵便局ができて大変ありがたい」とのお言葉を頂戴した。帰還する方、帰還された方々に郵便局が再開できたことをしっかりお伝えし、地域の皆さまの期待に応えていきたい」と意欲を示した。

 開局セレモニーで小野木支社長は「町のご協力、お力をいただくことで利便性の良い素晴らしい場所、交流ゾーンの一角に開局できることに感謝申し上げたい。避難している方々と町に戻られた皆さまの心の架け橋に、地域のお一人一人が心の触れ合いを生める〝ぬくもり〟ある郵便局として力を尽くしたい」と思いを語った。

 吉田町長は「待望の再開。日本中、世界中の皆さまからご支援いただき、ようやくここまで来ることができた。震災前、町内にあった四つの郵便局はいずれも地域に根差していたが、震災後は郵便局も金融機関もなく、町民は不便な環境を強いられ、町の要望を日本郵便と復興庁が動いてくださっての再開。利便性が高まり、帰還を検討されている方に強い後押しになる」と未来を見据えた。

 髙島貞邦東北地区主幹統括局長(大玉)は「震災から11年経過したが、浜通り地区は14局が一時閉鎖され、住民の皆さまもなかなか帰還できない状況。大熊局を拠点に、地区における我々のネットワークを最大限に生かしながら、皆さまと共に〝まちづくり〟を進めていきたい」と共創の思いを述べた。

 福島県東部地区連絡会の髙橋圭二統括局長(鹿島)は「我が地区連絡会では『それぞれの局が、日本一地域に愛される郵便局になろうよ』との合言葉のもと、事業を進めている。地域の皆さまから末永くご愛顧いただけるよう頑張りたい」と意気込みを示した。
 また、全国郵便局長会顧問の柘植芳文参議院議員、徳茂雅之参議院議員からの祝辞のメッセージも披露された。

福島沖震度6、激震災害に指定

 開局セレモニーの登壇者全員が冒頭に語った言葉は、今年3月16日夜半に起きた福島沖の最大震度6強の地震見舞いだった。
 二之湯智防災大臣は4月8日の記者会見で、「今回の地震は激甚災害として福島県新地町の農地関係を指定する。被災自治体と一体となって復旧復興に全力を尽くす」と強調し、「福島の被災地に入って状況を確認したが、東日本大震災に加え、2019(令和元)年の東日本台風、21年の地震、さらにコロナ禍の影響により復旧復興への気力を失いかねない。希望が失われることのないよう、政府一体となって被災者に寄り添った支援を行う」と発表した。
 地元局長によると、「今回の地震では、東日本大震災の時に倒れなかった物が倒れたお宅が多い。家屋や道路の損壊も11年前より大きいのではと感じるほど、被害は我々の肌感覚としては非常に大きい。お客さまに水や食料を個人的に配って回っている局長もいる。一人一人が、自分の地域を守ろうと一生懸命だ。自分も頑張らなくてはと思う。小野木支社長も、被災直後に現地を激励に回ってくださった。本当にありがたかった」と目を潤ませる。
 3月29日には福島県浪江町で開催された第1回「浜通り連携協定サミット」で、福島県の内堀雅雄知事は「地元局長の皆さんと企業、自治体が共に持続可能なまちづくりを議論することで、復興と住み続けたいと思える福島の実現につながる」と期待感を込めた。
 東北の復興はいまだ道半ばだが、その一歩一歩は力強い。縁の下の力持ちとして地域を支える郵便局と局長の存在はこれまで以上に〝ぬくもり〟を発信している。