トークセッション 日本郵政×楽天

2021.11.15

 楽天グループ(三木谷浩史社長)が10月13日に開催したオンラインカンファレンス「楽天オプティミズム」で、日本郵政の増田寬也社長と三木谷社長がトークセッションを行った。テーマは「リアル×デジタルの融合がもたらす社会イノベーション」。5月の資本・業務提携以降、両社で加速する物流、モバイル、DXの連携は日本を変えゆくか――。進行はジャーナリストの大西康之氏が務めた。

日本変える〝物流革命〟へ


 

 大西氏
 デジタルの切り口で、郵便局はどう変わっていくのか。

増田社長「リアル×デジタルで地域活性」

 増田社長 うちの一番の持ち味は全国津々浦々にある郵便局ネットワーク。その上で「デジタル郵便局ネットワーク」を作り、24時間365日、スマホ上でサービスを提供していきたい。そうすれば、郵便局の今の仕事もデジタルに移していける。
 三木谷社長 約2万4000の郵便局は非常に魅力的なアセット(資源)。金融関係でのアライアンス(提携)も考えられる。日本のEC化率はまだ10%前後だが、20%、25%と進む中で一番重要なのは『モノを届ける』ということ。日本郵政グループと組むことは圧倒的に効率的でシナジーが高く、出店者にとっても魅力的な値段、質の高いサービスを提供できる。
 増田社長 郵便局で本当にやりたい仕事、地域で期待されている役割はさまざまある。例えば、相続の相談をやってほしいという要望がある。今は他の仕事があるため窓口の体制ができていないが、デジタル郵便局ネットワークを作り上げればダブルで強くなり、地域に役立つ仕事にも取り組める。そのために「JPデジタル」(飯田恭久社長)という会社を立ち上げた。
 大西氏 地方経済活性化における役割は。
 増田社長 郵便局ネットワークは、都市部にも地方部にも相当数ある。社員約40万人の知恵を引き出せば、地域の問題解決に貢献できる。伸びしろは、むしろ地方部で大きい。関連する産業を刺激して、新しいビジネスにつなげていけると思う。

三木谷社長「郵便局から新しいDXを」

 三木谷社長 デジタリゼーションで電子的な距離はなくなった。地方はこれからどんどん栄えていくと思う。そのときに物流、モノを運ぶという現実が出てくる。全国あらゆる所にある郵便局は、大変重要なプレーヤーになっていくだろう。いろいろな地方のサービスの拡充など、新しいデジタルトランスフォーメーション(DX)を郵便局で起こしていくことができればと思う。
 大西氏 楽天とのパートナーシップによって日本郵政グループが変わると、日本が変わっていく気がする。
 増田社長 最初に成果が見えてくるのは物流分野だろう。「JP楽天ロジスティクス」(諫山親社長)を設立して、一刻も早く、高い質でお届けするための取り組みを進めている。年内には、ゆうちょ銀行デザインの楽天カードを出すなど、新しいサービスを次々に提供していきたい。
 大西氏 物流革命が起きるかもしれない。
 三木谷社長 今までは店舗という形で売っていたものが変わる。そこに新しいテクノロジーをどんどん導入していく。世界的に見ても、このマッチングは類を見ないのではないか。
 増田社長 日本郵便で取り扱っている荷物は10億9000万個。この5年間で13億6000万個まで増やし、一つも間違いなくきちんとお届けする。そのクオリティーをさらに上げていきたい。
 大西氏 そのレベルで物流ができる国はない。このコンビネーションが世界の最先端を行けば、日本の風景がかなり変わっていくと期待が持てる。